電気は目で見えないため、安全に効率的に使おうとすると、必ず計測器を用いて人間の目に見える数字などに置き換えなければなりません。電気測定という作業は、電気を使う上で絶対になくせない作業です。

では、電気測定にかかわる求人が簡単に見つかるかというとそうではありません。優れた求人を見つけ出し、転職成功させるためには、情報の整理と戦略的な求人応募が必須です。

ここでは、「電気測定にかかわる求人の探し方」「電気測定がある職種の紹介」「電気測定に求められるスキルや資格」について詳しく解説します。

もくじ

電気測定で求人検索しても優れた求人は見つからない

求人を探すときの、最もポピュラーな方法は転職サイトなどを使って求人検索する方法です。しかし、単純に電気測定に関係する仕事を探そうと検索しても、優れた求人を見つけることは難しいです。

試しに「電気 測定」をキーワードにして、大手転職サイトのdodaを使って検索してみた結果が下図です。

検索結果によると、800件以上の求人がヒットしています。しかし、募集の内容を一つずつ見ていくと「電気設計」「機械設計」「技術営業」「提案営業」「メンテナンススタッフ」など様々です。

中には、全く仕事内容と関係のない「測定」や「電気」でヒットしている求人も多いです。これらをしらみつぶしに確認していく方法は、得策とは言えません

そこで、電気測定が仕事内容にある業種・職種から逆算して求人を探す方法を紹介します。電気測定が仕事内容にある業種・職種は限られます。これにより、優れた求人を見つけやすくなります。

どの電気要素を測定するかで職種が分かれる

電気測定だけで成り立っている会社は、まずありません。したがって、仕事の一部に「電気測定」がある業種・職種を探していきます

測定とは、「基準として用いる量と比較して数値または記号で表すこと」です。では、何のために基準が定められているかというと、大きく2つに分類できます。それは、「安全」と「品質」です。

安全は、人体に悪影響を及ぼさないように電気的な基準が定められている要素です。例えば、絶縁抵抗値や接地抵抗値、耐電圧値、電磁界強度値などの測定が対象になります。

私はヘルメットや検電器の絶圧試験を行っていました。労働安全のための基準を満たしているかどうかを測定するためです。安全のための測定は、このような測定が該当します。

下の写真は、私が扱っていたヘルメットの内側を写したものです。7000V以下の電路での絶縁性能を有しています。それを担保するために6ヶ月ごとに耐圧試験を行う必要があり、「耐圧試験合格」のシールが貼ってあります。

基準値の根拠は、電気技術基準や電気用品安全法などの法令にあります。最終的な使用者が感電などの重大な事故にあわないように、工事や製品の安全基準を担保する仕事です。電気保安の会社などが主な転職先候補になります。

品質は、設備や製品が機能を十分に果たすために必要な電気的条件を定めている要素です。電圧値、電流値などの測定が対象になります。

私が経験した仕事でいうと、避雷器の漏洩電流測定が該当します。避雷器は、雷サージから構内機器を守るために設置されます。

しかし、経年により劣化するため、その劣化を診断するのに漏洩電流値を測定します。劣化が進むと漏洩電流が増すため、漏洩電流値が基準を超えたところで避雷器の取替を行います。

このような品質の基準値の根拠は、設計仕様書にあります。設計者が意図した通りの電気的な値が発現しているかどうかを調べます。

この仕事は、機器単体や複数の機器で構成されるシステムが機能を維持するために行われます。設備管理(施設管理)やメーカーの品証・品管が行っている場合が多いです。転職先候補としては、これらの業種・職種が対象になります。

安全のための電気要素を測定する求人例

ここからは、実際の求人例を見ながら解説を進めます。まず、安全のために電気測定をする職種を紹介します。

下図に示す一般財団法人中部電気保安協会の求人が、安全に関わる電気測定を業務内容として行っています。中部地方(愛知・三重・岐阜・長野・静岡)で電気保安業務を行っている会社です。

保安協会は、企業から依頼を受けて高圧受電設備の保安を行うことが事業の中心です。電気設備保安を行う中で、設備の電気測定が発生します。具体的には、下表の測定作業などがあります。

測定試験名称 概要
接地抵抗測定 接地極(アース)の電気抵抗が十分に低いことを確認する。
絶縁抵抗測定 ケーブルなどが、対大地、対他極で十分な絶縁抵抗値が維持されていることを確認する。
変圧器2次側接地線の漏れ電流測定 当該変圧器の負荷の絶縁状態を確認する。
蓄電池の各種測定

(比重、液温、電圧、内部抵抗など)

非常用の蓄電池の健全性を確認する

電気保安協会は、中部以外にも全国にあります。また、電気保安法人と呼ばれ、各地の電気保安協会のほかにもあります

例えば、下図に示す株式会社九州電気保安センターも電気保安法人です。九州電気保安センター社は、福岡の会社です。そして、九州電気保安センター社の求人票に、「測定」とは記載されていません。

しかし、仕事の内容は電気保安協会と同じなので、電気測定が仕事の中にあります。したがって、「電気保安法人」もあわせて探すと良いです。

電気保安法人のほか、電気設備管理をしている会社も選択肢になります。例として、山陽電気保全株式会社の求人を下図に示します。山陽電気保全社は、岡山の会社です。

山陽電気保全社は、電気保安法人ではありません。同社が行っているのは、電気保安にかかわる試験・測定役務を提供することです。同じ求人票に、下図のように求人票に各種測定業務があることを記載しています。

安全のための電気測定が業務にある会社は、以上のような会社を探していきます。

品質のための電気要素を測定する求人例

次に紹介するのは、品質のための電気測定をしている会社です。

実は、先ほど紹介した山陽電気保全社は、品質のための電気測定も行っています。求人票の事業内容に記載されている「特殊点検・試験・測定」の内容は、安全のためというより、設備品質維持・改善のための内容です。

例えば活線温度測定は、負荷電流が流れている状態での異常発熱を検知し、電線・ケーブルの劣化を診断する予防保全の一種です。ケーブル事故点検出測定は、ケーブルの地絡・短絡事故点を見つける測定試験です。事故前に、ケーブルの不良点を探すのにも使えます。

これらは、法令に決められている測定試験ではありません。あくまで設備の管理者が、電気設備の健全性を担保・故障の速やかな回復を意図して行う測定です。設備保全、施設管理といった職種では、このような電気測定が業務内容にあります

一方、製品を作るメーカーにも電気測定業務があります。例として下に示すのは、電気興業株式会社の求人です。本社を東京に置き、関東圏に工場が多くあります。この求人では、神奈川県横浜市の研究拠点で働く人材を求めています。

求人票にあるように、無線機器の設計、測定、検証が主な業務内容になります。検証は、測定したデータをもとに行うため、測定と検証は表裏一体です。どちらが欠けても、価値ある製品を作ることはできません

このように、製造業における設計・品質管理・品質保証では、検証・検査のための電気測定が業務内容にあります。

続いて、求人票に「測定」と記載されていなくても、測定業務がある例を下図に示します。下図は、インターテックジャパン株式会社の求人です。本社がイギリスにある外資系企業で、この求人では大阪事務所で働く人材を求めています。

 

この求人では、「電気測定器の検査・校正」の業務を行う人材を募集しています。ものづくりには、測定器が欠かせません。その測定器が正しい値を示していることを保証する検査・校正を行います。

このような検査・校正は、すでに正しい値を示す基準測定器(標準器)と検査・構成する対象測定器の測定結果を比べて判断します。つまり、電気測定器の検査・校正には電気測定業務が必ずあります。

以上のように、製造業では「測定」だけでなく、「検査」「試験」などをキーワードに求人を探して業務内容を読み込むと、電気測定の仕事を見つけやすくなります

電気測定に求められる資格や経験を知る

電気の測定作業自体は、特別難しい作業ではありません。適切に測定器を用いれば、適切な測定値を得ることができます。

測定の仕事で難しいのは、測定値の「良否」を判断することです。「基準」にしたがって判断するわけですが、そもそも「基準値」を知らなければ判断することができません。

よくあるのが、法令や仕様書の根拠値を別のチェックシートに転記して使っていることです。このとき、転記元である法令・仕様書を一度も確認せずに使っていることがあります。

私はこの根拠を一度も確認しない手抜きをして、よく叱られました。転記の際に、ミスがあるかもしれないからです。根拠の基準を知らないばかりに、誤った良否判断をするかもしれなかったのです。

さらにいえば、特殊事情で基準値に「例外」を設定している場合があります。例外を「標準」と思って仕事をしていると、大失敗をやらかす可能性が高くなります。

「安全」要素の測定で大失敗すると、死人やけが人が発生します。「基準」を知らないばかりに、あなたが誰かを傷つけてしまう可能性があります。

「品質」要素の測定で大失敗すると、製品や製品群が正常に動作しないことになります。あとからの手直しで大きなコストが発生します。この責任の重大性が、電気測定の一番の難しさです。

電気測定に必要な資格はないが、アピールできる資格はある

一方、電気測定を実施するために持っておかないといけない資格は存在しません。特に資格を持っていなくても電気測定をすることができます。

ただし、電気の一般知識を保証する資格を持っていると、強くアピールするポイントになります。これは、「基準値」を知り、理解するための基礎値知識を持っていると示すことができるからです。

例えば、下に示す山陽電気保全株式会社の求人では、「第2種電気工事士資格を持っていること」が歓迎条件として記載されています。

山陽電気保全社は、電気工事を行っているわけではないので、電気工事士資格は必要ありません。しかし、業務を行う上で電気の一般知識について知っていなければなりません。そこで、一定程度の電気知識があるとして「第2種電気工事士資格を持っていること」を歓迎条件としていると考えられます。

山陽電気保全社のホームページを見ると、電気工事資格のほか、「電気主任技術者」「電気工事施工管理技士」「エネルギー管理士」の有資格者数が表記されています。

引用 : 山陽電気保全株式会社HP 会社概要

会社が、社外に向けてアピールするような資格は、採用試験時にもアピールできる資格です。このように、求人票だけでなく、希望する会社が発信している情報も参考にして、あなたがアピールできる資格やスキルを探ると良いです。

まとめ

電気測定にかかわる会社の求人を探すとき、「電気 測定」をキーワードに探すと、多数の求人がヒットします。しかし、電気とは全く関係のない求人もまぎれこみやすく、優れた求人を見つけ出すことが難しいです。

そこで、先に電気測定の仕事内容を十分理解した上で、その仕事内容が含まれる職種を探すと良いです。そうすることで、関係のない求人を排除し、優れた求人を見つけやすくなります。

電気測定が業務内容にある職種は、電気保安、電気設備保全・管理、メーカーの品質保証・品質管理などです。これらの職種を中心に探していきます。

「測定」だけでなく、「試験」「検査」のキーワードもあわせて求人検索をするとよいです。電気関係の試験や検査の中には「測定」が含まれていることが多いからです。

電気測定は、電気的な「基準」を知っていることが大変重要です。基準は、法令や仕様であることが多いです。これらの基準を学習することが求められます。反対に、すでに十分な知識があればアピールポイントになります。

その点で、電気測定に必要な資格はありませんが、基準に対する知識を担保する意味でアピールできる資格はあります。求人票に記載がある資格のほか、ホームページがある企業なら、資格者情報が載っていることがあるので参考にできます。

このようなプロセスを踏むことで、より優れた電気測定の求人を見つけやすくなります。


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