転職活動をしているとき、書類選考の次に筆記試験が設けられていることがあります。中途採用の求人情報にも、筆記試験を実施する旨が謳われているのを見かけます。

電気系の転職の場合では、どんな筆記試験があるのでしょうか。また、新卒の筆記試験とは違うのでしょうか。その対策はどうすればよいのでしょうか。ここでは出題傾向と対策方法を解説します。

もくじ

私が実際に経験した筆記試験

私が転職活動において、受けた筆記試験の種類は4種類です。「学力試験」「性格診断試験」「クレペリン検査」「小論文・作文」です。

筆記試験があった会社は、すべて電気の技術職として応募した会社です。しかし、専門的な電気の知識を問う筆記試験はありませんでした。

学力試験

学力試験は、知識を問う試験です。これには2つのパターンがあります。

  1. 中学から高校のレベルの基礎的な問題が、広く浅く出題される
  2. 特定の分野の特殊な問題が、狭く深く出題される

広く浅く出題される場合は、難しい問題でふるい落とすことが目的ではなく、基礎的な学力を試すことが目的の試験のように感じました。つまり、「できて当たり前、できないと仕事をする上で困る」というような、基本的な問題が出題されます。これは私が受けた試験では実施されませんでした。

一方で特定の分野の特殊な問題が出題される場合は、その仕事に就くのに必要である高度な知識、考え方を試験します。例えば、製品の開発に高度な数学の知識が必要な場合は、高等数学の試験が実施されます。

私が受けた自衛隊の技術職(電気系)もその一つです。自衛隊内にある電気設備・情報処理装置・電子計算機を保守・整備する仕事として、電気の技術職の中途採用があります。これに挑戦したことがあります。

私が受けたときは、電気とは全く関係ない自衛隊を定義する法体系、同盟国の法、国際情勢、戦史などが出題されました。

性格診断試験

性格診断検査とは、受験者がどのような傾向の性格をしているかを測る試験です。

例えば、間違いが許されない慎重な作業を求められる仕事には、おおざっぱな性格の人は向きません。慎重かおおざっぱか、大体の傾向をつかむ試験で、おおざっぱな人をあらかじめ見極めようとするものです。

性格診断試験は、適性検査ともいいます。

私が実際に受けたときは、「1~4の中で仲間外れを選択してください」という設問のもと、下図のような図形の問題が出ました。

また、言葉で説明した例文が並べてあって、その中から仲間外れを探すという問題もありました。具体的には下のようなものです。

以下の中から仲間外れの番号を答えなさい。

  1. 白いうさぎが寝ている。
  2. 黒い亀が歩いている。
  3. 緑の木が揺れている。
  4. 汚い犬が走っている。

実際に受けたときは、学力テストなのか性格検査なのか説明なく始まりました。私は、試験が終わるまで知能テストだと思っていました。

それが知能テストではなく、性格検査だろうと考えた要因は3点あります。

  1. 制限時間1時間で解くには、不可能であるほどに問題数が多かったこと。
  2. 後日、私の解答が「矛盾した結果を含んでいる」からという理由で、再試験したこと。
  3. 「時間が足りないとは思うが、一生懸命できるだけたくさん解答するように」と指示されたこと。

この試験を受けたとき、試験時間が足りなくて、8割程度しかできませんでした。学力を測る試験なら、2割も白紙解答だと、まず不合格でしょう。それに再試験することも考えられません。

「矛盾した結果を含んでいる」のは、「解答の初めはAという性格を示してしたのが、解答の途中からBという性格を示すようになった」からだと考えられます。

これには思い当たるところがあって、問題の初めの方は出題の意図がよくわからなくて適当に答えていました。ただ、2割くらい進んだところで「規則性を探す」というような意図がわかって答えた経緯があります。これによって、解答の途中から傾向が変わったものと思われます。

試験時間が足りない状況でたくさんの問題を解かせるというのは、適性検査ではよくあることです。

適性検査では、解答の傾向から性格を判断するので、はっきりと1つの答えがあるのではなく、何に注目するかで答えが変わるようにできています。例えば私が受けた上の写真の図形問題(上の問題)では、「○に注目するのか」「線に注目するのか」で答えが変わります。

図の中で仲間外れと考えられるものを探すので、何らかの規則性があって規則性から外れたものを仲間外れと考えます。

このとき○に注目すると、1、3、4は四角の中の下部に○があるのに、2は四角の中の上部に○があります。したがって、仲間外れは2になります。

次に線に注目すると、1、2、3は資格を縦方向に横切っているのに、4は四角を横方向に横切っています。したがって、仲間外れは4になります。

出題の意図は、「解答者がどの答えを選ぶかを知りたい」なので、どれを選んでも正解です。初めに○に注目した人は、○に注目しやすい気質があります。線に注目した人は、線に注目しやすい気質があります。出題者はそれを知りたいのです。

このように出題の意図を探って考え込むと、期待した結果を得られないことがあります。また、1つだけ正解があると思い込んでいると、正解と思える選択肢が複数あって迷います。

それを防ぐために、考え込む余裕を与えないほどの、たくさんの問題を出題します。

クレペリン検査

クレペリン検査は、適性検査の一種です。下図のような紙で行う試験です。

一般にクレペリン検査と呼ばれているものは、「内田クレペリン検査」のことです。心理的な適性を測るもので、練習して受けることや、合格する傾向を把握し、答えをその傾向に合わせて解答するのを嫌います。そのため診断方法、検査用紙は一般に公開されていません。

写真は、検査をイメージしやすくするために私が作成したものです。

検査用紙には、1~9までの数字が少し間をあけて相当数並べてあります。受験者は、その数字を足して、一桁の場合はそのまま、二桁になるときは下一桁を鉛筆で記入します。間違えたときは、消しゴムを使わずに、間違えた答えを斜線で消して正しい答えを右上に記入します。

シャープペンシルやボールペンは禁止です。必ず鉛筆で行います。消しゴムも使えません。消して書き直すよりも、斜線で消して新しく書き足した方が早く、検査に影響が小さいからです。

受験者は、スタートしてから合図があるまで、同じ行でこの足し算を繰り返して右に進みます。合図があったら次の行に移り、左端から同じように足し算を続けます。

本番の試験の前に練習があります。練習で試験のやり方は十分わかります。受験前に特に準備は必要ないでしょう。

小論文・作文

文字数を設定して、制限時間内に、与えられたテーマについて書かせる試験です。文章の構成力・論理構成力などを判断するものです。

私がこの試験を受けたのは、自衛隊の技術職を受けたときです。小論文で、テーマは「志望動機について」です。文字数は2000字程度で、制限時間は1時間ぐらいでした。

転職サイトの求人で公開されている筆記試験の情報

私が受けたことのある筆記試験「学力試験」「性格診断試験」「クレペリン検査」「小論文」のほかに、転職での筆記試験には「WEB試験」「スキルチェック」「数学」があります。下図は、転職サイトで実際に「筆記試験」が表示されている例です。

WEB試験とは、会社指定のサイトにWEBからアクセスして、問題を解くものです。適性検査や簡単な学力試験であることが多いです。

筆記試験はどれくらいの数の会社で実施されているか

できることなら、筆記試験は受けたくありません。それでは、電気系の会社のうち、どれくらいの数の会社が筆記試験を実施しているのでしょうか。

そこで、転職サイトの「マイナビ」を使って検索をしてみました。「電気」で検索すると1600件ほどです。このうち、「電気 筆記試験」で検索すると90件ほどです。つまり転職活動において、およそ5%くらいの会社が筆記試験を実施していると考えられます。

私の場合、これまでの転職活動で8社受けて、3社で筆記試験がありました。割合では38%になります。

転職サイトの検索の結果と大きく違うのは、筆記試験を実施している会社の形態に偏りがあるからです。

筆記試験を実施しているのは、公務員、東証に上場しているような大企業や、その子会社であることが多いです。そのほかの中小企業の場合は、あまり実施していない傾向が強いです。私の場合は、受験した会社のうち大企業の割合が多いため、4割近い割合になっていました。

転職の筆記試験と新卒の筆記試験の違い

なお、転職をするときに受ける筆記試験と、新卒で就職するときの筆記試験は何が違うのでしょうか。

転職で筆記試験を実施しているのは5%程度で、実施する方が少ないです。しかし新卒で筆記試験では、必ずと言っていいほど実施されます。

この実施数の差は、受験者数の差に原因があります。

転職の場合、一度に試験を受けるのはたいてい1人です。そして受験者の基礎的な学力、仕事の能力は、職務経歴や資格からある程度推定できます。学力は筆記試験で測らなくてもよいのです。したがって筆記試験といっても、適性を測るものが多くなります

一方で新卒の場合、一度に多数の受験者が試験を受けます。採用枠は決まっていますので、選抜して何人かを採用することになります。

しかし受験者それぞれに職務経験はなく、仕事に必要な能力を持っているかどうかはよくわかりません。採用する会社側からすると、差をつけにくいのです。そこで学力試験をして、差を作り出して選抜することになります。

このような理由のため、転職では筆記試験を実施する会社は少ないです。また、実施しても面接重視・人柄重視としているところが多いです。

ただし公務員は、採用形態が新卒採用と似ているため、本格的な筆記試験を実施することが多いです。公務員は1年に1度、広く募集をかけて採用試験を行います。公務員へ転職は、随時募集を行っているような会社への転職とは違いますので注意してください。

筆記試験への対策

それでは、どのようにして筆記試験の対策をすればよいでしょうか。

まず知識を問う試験の対策は、あまり効果がないでしょう。なぜなら、筆記試験を実施している会社のほとんどが、その内容を明らかにしていないからです。試験の範囲がわからないのに、対策は打てません。

一方でクレペリン検査の判断基準は、WEB上にいくらか記載があります。しかし、合格の判断基準に合わせて、試験の結果を操作するのはやめましょう。

例えば、試験中盤では解答数が試験序盤よりも減ることがよいとされています。そこで、試験序盤の解答数を超えそうだからといって、試験中盤にわざと解答数を減らすことはやめましょう。

クレペリン検査は作為的な行為(意図的に結果を操作しようとすること)をすると、容易に発覚します。さらに作為を加えた方が、結果が悪くなります。作為を加えようとすると、目の前の課題以外のことを考えながら試験を受けることになり、手の動きが遅くなり、仕事量がこなせなくなります。

私は10回以上受けてすべて合格していますが、作為的なことは一切していません。

また、性格診断試験も同様に、作為的に結果を操作しようとするのはやめましょう。クレペリン検査よりもさらに情報が少なく、どう結果を診断しているか不明です。勝手な判断で結果を操作しようとしても、良い結果は生みません。

私の場合は、結果を操作しようとしたのではなく、問題の途中で「規則性を探す」という点に着目して解答しただけでも見破られています。

そこで、一心不乱に目の前の問題に取り組むと、クレペリン検査などの適性検査でよい結果につながります。つまり、事前対策をしない方がいいです。

小論文・作文の最も効果的な対策は書くこと

それに対して、小論文・作文は対策を打つことで効果を期待できます。小論文や作文をうまく書くには、事前に書いてみることが効果的です。

転職するときの小論文・作文のテーマは「志望動機」「自分はいかに会社に貢献できるか」「未来への展望」といったものであることが多いです。これらのテーマで、制限時間と字数を設定して書いてみましょう。

小論文・作文を書くには、次の手順を踏むといいです。

  1. 会社の情報収集(会社ホームページ、転職サイト、新聞など)
  2. 「自分が会社のどこに魅力を感じたか」「どの能力を生かせると思ったか」「将来その会社でどう活躍したいと思ったか」を書き出す

その後、魅力感じた部分の会社情報を、文章の骨にして話を膨らませましょう。また、能力を生かせると思った部分の会社情報を文章の骨格にして話を構成します。さらに「将来活躍したい」「活躍できる」という思いとリンクする会社情報を中心にして文章を作るといいです。

感じた魅力や生かせると思った能力は、1つでなく複数でも構いません。

時間が許すなら複数のテーマについて、それぞれ2000字ずつ書いてみるとよいです。例えば、以下のようになります。

「志望動機」がテーマの小論文(例:通信設備の製品を作っている会社を受けるとき)

貴社を志望した理由は3つあります。1つ目は、事業分野の中心に通信設備の開発・製造・保守があったことです。特に、一般の人が使う携帯電話の回線網を構成する機器を、開発・製造・保守しているというところに、私の力を発揮できるのではないかと考えています。

2つ目は、貴社が地域に根差した経営・事業運営をされていることです。以前より、生まれ育ったふるさとであるこの地域で働きたいと考えており、腰を落ち着けて仕事ができると考えています。

3つ目は、新しい事業分野として、通信設備に強いことを生かした遠隔監視・データ解析システムの開発に取り組んでいることです。

1つ目について、携帯電話の回線網は、現代では生活になくてはならないものです。普段の生活ではもちろん携帯電話がないと困りますし、地震や津波などの甚大な災害時であっても、携帯電話がつながることが求められるようになってきました。これは、携帯電話の回線網を構成する機器がダウンしてはならないということでもあります。

私は、通信設備ではないものの、電力関係の設備保全の経験があります。今は電気がないと、工場やオフィスは動きません。電力関係の設備も通信関係の設備と同様に、ユーザーからは常に電力を供給し続けることを求められています。そのため設備をダウンさせないこと、万が一設備がダウンしたときに迅速に復旧することの重要性は身に染みています。

実体験として、最近災害による停電の体験があります。そのときの停電は日が暮れても続き、電灯がつかず、テレビも電源が入らない、真っ暗で心細い中、携帯電話は電池が残っていて使えました。家の外と通信ができ、さまざまな情報が入ってくることが心の救いになりました。

あのとき、携帯電話がつながらなくなっていたら、不安で眠ることもできなかったでしょう。携帯電話で情報を入手することができたので、これ以上の災害の危険性がないことを知り、安心して眠れました。普段当たり前につながっている携帯電話でも、いざというときには人に大きな安心感を与えるものだと実感しました。

私がこれまで培ってきた設備保全の知識・経験は大きく2つあり、「設備をダウンさせないこと」と「ダウンしたときの復旧を迅速に行うこと」です。設備をダウンさせないことは、多くの人々を安心させることができます。設備がダウンしたときの復旧を迅速に行うことは、多くの人が不安を感じる時間を短くすることができます。どちらも、仕事を通じて社会に安心感を与えることができると考えています。

2つ目について、……(中略)。

これまで計算機システムの業務は私にとって仕事の中心ではなく、経験数が少ないです。しかし、今後の業務で計算機システムに触れることになれば、知識が経験に裏付けられ確かに技術力につなげられると考えています。将来的に、貴社の新規事業分野の開拓である、遠隔監視・データ解析システムの開発の中心になれるように力を尽くしたいと思います。

上の例については、全文を「ここ」に記します。

テーマが完全に一致しなくても、一度書いたものの中から、抜き出し、つなぎ合わせても問題ありません。そうすれば、本番のテーマに沿った小論文・作文に作り直すのも容易になります。

落ち着くこと、心を乱さないこと

そのほかに筆記試験の対策はできないのでしょうか。筆記試験で重要なのは、冷静に問題に取り組むことです。

緊張してしまうのが最もよくありません。緊張は視野をせばめ、鉛筆を持つ手の動きが悪くなります。その結果、普段なら解ける問題も解けず悪い結果になります。

落ち着けと言われて、簡単に落ち着けるものでもありません。会場に行くまでは冷静でも、実際に試験を受ける場面になると、緊張して心を乱してしまうこともあります。

緊張を抑えるのに最も効果的なのは、場数を踏むことです。つまり、筆記試験を同じような状況で何度か受けてみればよいのです。特に、試験を受けたのは初めて就職した会社の試験だけで、それ以降資格試験も受けた覚えがないというような人は、いろんな求人に申し込んで場数を踏むと高い効果が見込めます。

第一希望の会社のほかに受験する余裕があるなら、筆記試験を実施している会社を受験すると、本番に近い環境で練習できます。

ただ合格したときは、お断りをしなければなりません。会社から猛烈なアピールがあることもあります。ただ、転職サイトを利用すれば、転職エージェント側で断ってくれるため、転職サイトを利用するのも効果的です。

筆記試験対策のまとめ

転職において筆記試験の、問題を予習することや解き方を予習することはあまり効果がありません。小論文・作文も、一言一句全く同じものを再現しようとする対策は、テーマが違うと全く使い物にならないため無意味です。

転職の場合は、付け焼刃の能力よりも、これまで培ってきた実力を試されます。そこで、実力を十分に発揮できる状態になることに注力しましょう。

いつもと違う環境が、緊張を惹き起こします。緊張しないためにも、できるだけ普段通りの生活の延長で試験を受けられるようにしてください。転職のとき、第一志望の会社の前に他の会社を受けてみるのも効果的です。

こうすることによって、電気系の求人に申し込んだときの筆記試験を突破しやすくなります。


技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。

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