電気工事は、電気が使われる限り絶対に無くならない仕事です。したがって、不況でも仕事が絶えることのない職種の一つです。その電気工事の求人は相当数があります。

その中には、未経験・無資格OKの求人も、たくさんあります。ただ、何も準備なしに転職活動をして簡単に採用されるものではありません。仕事内容や企業が求めるものを理解して転職活動を行う必要があります。

ここでは、未経験者が電気工事に転職するときの「求人例・仕事内容」「電気工事士資格取得サポートについて」「志望動機のまとめ方」「年収の実際」について、詳しく説明します。

もくじ

未経験OKの電気工事の求人例と仕事内容

電気工事にかかわる求人は、未経験でもOKの求人が多くあります。特に、「電工」と呼ばれる、実際に手を動かして工事を施工する職種は、未経験から見習いとしてスタートすることが多いです。

例えば、転職する人の多くが使っている転職サイトで未経験OKの求人を探すと、下図のように600件以上の求人が見つかります。

実際に検索してヒットした求人には、下図のように未経験で電気工事スタッフとして働くことが示されています。

下図に示すのは、五島電気建設株式会社の求人です。五島電気建設社は、京都を中心に、大阪・滋賀で事業展開している電気工事会社です。道路の電気設備(信号・照明など)の施工に強みを持つ会社です。

転職サイトで探した、未経験OKの電気工事の求人をもう一件紹介します。下図は、愛知県名古屋市にあるフジサービス株式会社の求人です。フジサービス社は、空調・太陽電池・エコキュートなどの施工に強みを持つ会社です。

このように、募集条件に未経験OKで、さらに電気工事士資格の取得サポートが受けられることが明記されています。

未経験OKの電気工事の求人を探すには、これに類似した求人を探していくことになります。

ただ、「見習い」というキーワードが、求人票内に使われていることは少ないです。「未経験」などのキーワードを一緒に使って求人を探すと良いです。

補助作業中心に電気工事の全体像をつかむこと

では、未経験で電気工事会社に就職したとして、どのような仕事をするのでしょうか。これは、基本的に先輩社員が作業する補助を行います

下の写真は、街頭でのある電気工事の作業現場の様子です。橙色の丸で示したところで、若い作業員がケーブルを引き回しています。

このようなバケット車やはしごを使った高所の作業では、工事に十分慣れた作業員が仕事をする事が多いです。下回りの作業は、「ケーブルの引き回し」「次の作業の段取り」「材料工具の準備」などがあります。

もちろん、電気工事は高所の作業ばかりではありません。住宅やオフィスの配線などの工事もあります。このような場合でも、未経験で入社したら、まず電気工事士見習いとして補助作業から始めます

例えば、下の株式会八洲電業社の求人を見ると、「現場の補助作業をしながら基本を学ぶ」とあります。ちなみに、八洲電業社は東京都・埼玉県を中心に電気設備工事を幅広く行っている会社です。

電気工事の補助作業は、材料・工具の名前を覚えるところから始まります。特に材料は、使われる場所によって細かく規格が変わります。何もわからないまま現場作業に行くのではなく、関連資料に目を通して作業に臨めば、早く自分の力になります。

私が新卒で入社した鉄道会社では、配属されてまず現場の電気工事の作業を一通り覚えます。そのときに先輩から指導されたのは、「作業に行く前に、その日の作業手順を自分なりにまとめておけ」ということです。

電気工事の施工現場では、工事を安全に完了させることが第一優先です。そのため、新人の教育まで手が回らないこともあります。

そのようなときに、作業内容をある程度知った上で作業をしていれば、自分の疑問点が明確になりやすいです。未経験者にありがちなのが、「どこがわからないのか、わからない」ということです。自分の疑問点がわかっていれば、あとから先輩に質問して解決することもできます。

未経験で電気工事に転職する場合には、このような努力も必要になることを覚えておきましょう。

電気工事見習いはきついか?

未経験で電気工事に転職した場合、やはり見習い期間はきついのでしょうか? もちろん、一人前になるまで努力は必要です。しかし、それ以上に下働きとして、厳しい働き方を求められるのでしょうか?

これについて、福岡で一緒に働いたことのある電気工事会社の社長に話を聞くことができました。その社長は、下のように話してくれました。

電気工事の業界は、昔は職人気質の人が多くて、見習いに厳しく接する人も多かった。

しかし、今では若い人に優しく教える人が多い。これは、建設業界が人手不足で、20~30代だけでなく40代も若手と呼ばれるほど、若い人がなかなか入ってこないからだ。

技術的な指導も、隠すことなく、積極的に後継者に伝えている人が多い。

この社長の話を裏付けるような現場を、私は何度も目撃したことがあります。その現場とは、定年も近いと思われるベテランが、学校を卒業したばかりの社員を引き連れて、現場で作業指導している場面です。

その指導方法は、「見て盗め」というような指導方法ではありません。新人に実際に作業をさせながら、ベテランが作業方法を横で説明するような指導方法です

したがって、「早く一人前の電気工事士になって仕事をしたい」という気持ちがあれば、先輩や会社のサポートも受けやすい環境にあるといえます。このように電気工事の見習いは、かつての理不尽にきつい職場環境ではなくなってきています。

働きながら電気工事士資格を取得する

未経験者が電気工事の見習いを卒業するのは、電気工事士資格を取得するのが一つの条件です。電気工事をするには、電気工事士資格が必須だからです。

下の写真のような、壁埋めコンセントの簡単な配線接続でも、電気工事士資格を保有していないと施工することができません。

また、電気工事会社によって必要な電気工事士資格は、第1種電気工事士資格と第2種電気工事士資格があります。

しかし、第1種電気工事士資格を取得するにも、まず第2種電気工事士資格を取得しなければなりません

未経験OKとしている電気工事会社の求人の場合、資格取得にかかる費用を負担していることや、資格取得後に資格手当を支給していることが多いです。先ほど紹介した八洲電業社は、求人票に「資格手当支給」を明記しています。

また、下に示す神奈川県横浜市の協栄電機株式会社は、電気工事士資格取得に関して「受験費用の補助」「資格受験のための研修費用・交通費の会社負担」「勉強会などの開催」など手厚いサポートがあります。さらに、電気工事士資格を取得すれば、月の給料に上乗せして数千円の手当が支払われます。

実は、私は会社の受験料負担有りでいくつかの資格を取得したことがあります。しかし、資格手当や交通費の支給や、研修などはありませんでした。資格取得に関しては、「全て自力でなんとかしなさい」という考えの会社だったからです。

その点、協栄電機社のように手厚いサポートがあれば、資格取得にやる気が湧きます。会社が真剣に社員の教育を考えているという証拠でもあります。

また、電気工事士資格は有効期限のない国家資格です。一度取得してしまえば、一生消えることはありません。万が一、将来さらに会社をかわることになったとしても、条件を有利にする資格です。

電気工事士資格取得は、未経験で電気工事会社に転職したときの、直近の大きな目標です。このサポートの有無が、優れた求人を見分ける一つのポイントになります。

未経験で転職成功するには説得できる志望動機が必要

未経験で転職する場合には、電気工事会社に限らず、志望動機に注目されます。「なぜ転職してまで、未経験の分野に飛び込みたいのか」というのは、面接担当者でなくても聞きたくなります。あなたの周りに転職してきた人がいるなら、転職理由を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?

このように志望動機は、転職における大きな関心事項のひとつです。面接試験では必ず訊かれる質問であり、あなたの印象を決める重要な質問でもあります。

重要なのは、「未経験で電気工事会社に転職する必然性」「そのほかの考えとの一貫性」です。以下に、一つずつ解説します。

志望動機で必然性のアピールは絶対に必要

まず、電気工事に転職する必然性について考えます。未経験で転職するということは、それなりに育成期間が必要です。苦労もあります。前職の経験を活かすこともできない場合が多いです。

面接などでは、そのような苦労をしてまで「電気工事をやりたい理由」を述べなければなりません。したがって、「提示された給料が高い」「休みが多い」などは志望動機として不適格だということがわかります。なぜなら、電気工事でなくても「高給」「多休」は実現できるからです。

良い例は、自分の経験とあわせて、電気工事をしたいということをアピールします。例えば、以下の例文のように整理します。

前職で電気工事を発注したことあります。そのとき、発注者の私の意図を適切に汲み取って、仕様に落として施工してくれました。もともと、ものを作ることが好きなこともあって、そのような電気工事をしたいと思い志望しました。
腰を据えて働きながら、手に職をつけたいと思い、志望しました。電気は、趣味レベルで電子工作などが好きなので、自ら取り組みやすい分野だと考えています。

このように、かつての自分の経験や、得意分野から見直すとまとめやすくなります。

そのほかの質問との一貫性がないと信頼を損なう

もう一つ志望動機をまとめるときの注意点は、面接などで想定されるほかの質問と一貫性を保つことです。例えば、面接で訊かれやすい質問は下記のような質問があります。

  1. 転職しようとした理由
  2. 現職(前職)で、一番の実績・成功体験
  3. 長所・短所 など

これらの質問の内容と、先にまとめた志望動機に矛盾があってはいけません。

未経験で電気工事業に転職しようとしているので、志望動機は「新しい物事に取り組むのが好きだ・得意だ」という内容になりやすいです。それなのに、転職理由で「安定して一つのことに取り組みたい」という内容では矛盾しています。

このような矛盾は、志望動機の例文を参考にしすぎた場合に起こりがちです。志望動機は、あなた自身の経験に照らし合わせて、あなた自信の言葉で考える必要があります。

あなたの志望動機や転職理由は、それぞれ単独に存在しているのではなく、ある程度重なる部分があるはずです。この重なる部分に着目して、まとめると矛盾が起きにくいです。

私が今勤める会社の採用試験を受けるときに面接した上長に、面接で何を確認するか聞いたことがあります。すると、「このようなあらかじめ想定される質問は、きちんと回答を準備しているかどうかを確認する」と言っていました。

つまり、志望動機とそのほかの質問との矛盾は、面接では大きなマイナスになります。一通りまとめたあとには、全体に矛盾がないか、一貫性があるか確認することが面接試験通過には必須の作業です。

見習いスタートの給料・年収は?

最後に、電気工事スタッフとして就職したときの、年収・給料がどの程度なのかを説明します。

まず、冒頭で紹介した五島電気建設社の給料は、下の図のように月給25万円以上とされています。

ボーナスが年3回支給されるとあるので、仮に4ヶ月分として年収を計算すると、25万円×(12+4)ヶ月でおよそ年収400万円になります。

そのほか、ここで紹介した求人で提示されている年収をまとめたものが下表です。

会社名 提示年収[万円] モデル年収[万円]
五島電気建設(株) 400
(記載の月給×16で年収換算)
記載なし
フジサービス(株) 420 入社時想定
420
(株)八洲電業 320~480 20歳未経験で
320
協栄電機(株) 400~600 20代未経験入社で
400

ちなみに、電気工事スタッフとして働くときの年収は、厚生労働省が統計調査をして公表しています。

下のグラフが、その賃金構造基本統計調査の結果のうち当該部分をグラフ化したものです。電気工事スタッフは、この賃金構造基本統計調査では電気工と呼ばれる職種で調査が行われています。

引用 : 令和元年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)をグラフ化

この調査によると、電気工がもらっている年収で一番多いのは200〜300万円です。それを踏まえると、ここで紹介した各社の提示年収は、世の中の電気工の年収より高い部類の提示年収になっています。

つまり、この4社の提示年収くらいまでの求人を探していくことになります。ちなみに、転職サイトに掲載される求人は、無料の求人誌やハローワークの求人に比べて提示年収が高い傾向があります。

求人を探すときは、このような年収の実態を理解した上で、提示年収が妥当かどうかを判断するとよいです。

まとめ

電気工事会社の求人で、未経験・無資格OKで見習いからスタートする求人は、転職サイトなどで探せば比較的容易に見つかります

未経験・無資格で電気工事会社に入社した場合は、先輩社員の補助作業をしながら、電気工事士資格取得を目指します。電気工事は、電気工事士資格を保有していないと施工することができないので、どの電気工事会社の求人でも同様の流れになります。

しかし、未経験OKとしている電気工事会社なら、電気工事士資格取得に関してサポートをしていることがほとんどです。資格取得のための費用を負担してくれるほか、技術的な指導や講習を積極的に行っている会社もあります。このような会社なら、無資格であっても安心できます。

未経験で新しい職種に挑戦するときに頭を悩ますのが、面接などの対策としての志望動機のまとめ方です。これは、電気工事でなければならない必然性を、転職理由などとあわせて考えると良いです。そのとき、これまでの経験・体験や得意分野を意識するとまとめやすくなります。

電気工事未経験者が転職して得られる年収として、転職サイトの求人を見ると300~400万円が参考の水準といえます。政府統計やそのほかの求人で提示年収を見ながら、妥当な年収を判断するとよいです。

未経験者が電気工事会社に転職するには、以上のことを把握して転職活動を行うことで、転職成功しやすくなります。


技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。

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