電気工事の施工を少しでもしたことがあるなら、工事設計という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。電気工事設計は、電気工事の施工経験を活かすのにおすすめできる仕事です。

また、指示通りに施工するのではなく、ユーザーの要求をまとめながら、一つずつ仕様を作り上げていく仕事です。さらに、様々な電気の知識が活かせる大変やりがいのある仕事です

あなたの電気工事の経験と、電気の深い知識が役立てる電気工事設計の仕事は、まさに電気工事の花形です。私が以前勤めていた鉄道会社では、工事設計部門にいる人は社内でも一目置かれていました。

では実際に、電気工事設計とはどのようなもので、どのような求人があるのでしょうか。

今回は、電気工事設計について「仕事内容」を詳述し、「必要な資格や知識について」説明します。そのあと、「実際の求人例」と「年収の考え方」について解説します。

電気工事設計とは、どんな仕事内容なのか

電気工事設計とは、一体どのような仕事をするのでしょうか。電気工事設計の主な仕事は、「現地調査」「図面製作」「旗揚げ」「積算」です

実際に形あるモノを作るとき、設計図が必要なのはイメージしやすいと思います。実は、この設計図は形あるモノを作るときだけでなく、身体を動かして何か仕事をする(労務といいます)場合も作られることがあります。

例えば、部屋に新しく照明を取り付けるときを考えてみます。「電球」「灯具」「ケーブル」「スイッチ」などの材料があったら、勝手に出来上がるわけはないですよね。誰かが据え付けて、機能確認をしなくてはいけません。

この誰かは電気工事士の資格を持った人(電工といいます)です。電工の労務も含めて、設計図を描くのが電気工事設計です。

では、それぞれの仕事をくわしく見ていきましょう。ここでは具体的に、照明がない部屋に照明を新設する場合について考えます。なお、工事そのものの内容は簡略化してあります。

・現地調査

実際に図面を描く前に、現地に行って関係者と仕様等を詰めます。現地調査の前に、机上である程度の仕様は打ち合わせてあることもありますが、最終的に現地調査をして仕様を決定します。

下の図のような部屋に、照明を新設する場合を考えます。図の左上既設ブレーカーから、壁裏にケーブルを通してドア横にスイッチを新設します。スイッチから再び壁裏を通って天井裏に抜け、部屋中央に灯具と照明を新設する工事です。

現地調査で把握しておかなければならないことは、ケーブル敷設ルートの確認、壁材・天井材の確認、ブレーカー端子の空き、施工条件(昼夜、脚立使用可否)など様々です。

机上でいくら詳細を打ち合わせていても、実際に現地に行ってみて細部が考えていたことと違うというのはいくらでもあります。さらに、設計者は同様の工事設計経験があったとしても、客先は経験が無いことはよくあることです。

工事が終わってから「印象が違う」と、客先都合でやり直させられることもあります。このとき、費用負担が客先であっても、一度作ったものを撤去して再度作り直すのは、工事屋として嫌なものです。

私の工事設計経験でも、さんざん後出しでやり直しした嫌な思い出があります。検討が足りないのをあとから指摘されたならまだしも、十分に検討して相互納得したものをひっくり返されると、仕事のモチベーションが全くなくなります。

こういった事態を防ぐために、現地調査では小さなことでも相互に確認し、議事録を残しておくことが大切です

・図面製作

現地調査の結果をもとに、図面を製作します。

先ほどの現地調査の結果を図面に描くと、下の図のようになります。

通常、新設の場合は赤色で描きます。また、撤去は黄色というように図面の描き方が指定されていることは多いです。

私の学生時代(2000年頃)は、ドラフター(製図機)を使って図面を描く実習をしました。しかし、社会人になってからは、すべてパソコンで描いています。

注意しておきたいのは、歴史的に建築・土木系の人は図面をjw-CADで描きます。一方、電気系の人は、Auto-CADで描きます。

そのほか、CADソフトは高いので客先などから、俗にEXCEL-CADと呼ばれるMS-Excelで描かれた図面や、3D-CADの図面を使う現場もあります。しかし、電気工事で触れることがあるのは、まだjw-CADとAuto-CADが多いです。

重要なのは、電気工事は建築工事が終わったあとに着手することが多いということです。つまり、建築工事のjw-CAD図面を受け取り、そこに電気設備を載せていくという手順を踏みます。

これは、「jw-CAD⇔Auto-CAD」のやり取りが頻繁に出てくるということです。2010年代になって、違うCAD間の互換性も出てきたようですが、まだ100%互換というところまでは至っていません。

データのやり取りがあるときは、相手の環境を意識してやり取りすることを忘れないでください。

このCADを覚えるには、私の経験上「習うより慣れろ」です。

2005年頃に、勤めていた鉄道会社でCAD講習を受けさせてくれたことがありました。その後何年か経って、本格的にCADを使うようになったとき、使い方を全く覚えていませんでした。

結局、工事設計をするようになって、描きたい図面や描かなければならない図面を、参考書やWEBを見ながら試行錯誤してCADを覚えました。「描きたい!」という欲求があると、上達も早いです。

工事設計をしている会社なら、CADの熟練者も近くにいるはずです。その人達に教わりながら、実践を積むことがCAD上達の一番の早道です。

・旗揚げ

描き終わった図面に、仕様・数量や労務を追記していく手順が、旗揚げです。この後の工程である、工事積算では旗揚げの情報が重要ですので、正確に記入していくことが大切です

上で描いた図面に旗揚げをすると、次図のようになります。

図中、VVFは電源ケーブルの種類です。正式には「600Vビニル絶縁ビニルシースケーブル(平形)」といいます。しかし、長いので「VVF」と書くことが多いです。「1.6」は芯線の太さが1.6mmであること、「2C」は2芯であることを示しています。

平面図にすると、よく垂直方向の距離を勘定し忘れます。CADは、パソコン画面上で距離測定することができ、水平方向の長さはこれで簡単に長さが出せます。そのときに、垂直方向の距離を忘れてしまうのです。注意してください。

このような図面になると、電気工事を施工したことのある方は見覚えがあるのではないでしょうか。施工するときも、この図面に沿って施工します。

図面にすべてを書くと煩雑になるときは、欄外に詳細仕様を書くこともあります。旗揚げは、特に共通する描き方というのがありません。会社や業界独自のルールに従うことになります。

・工事積算

旗揚げで明らかになった詳細仕様・数量、労務をもとに、工事積算を行います。工事積算の結果で工事費が決まります。

特に官公庁やそれに準ずる機関が発注する工事は、この工事積算を厳密に行う必要があります。それは、なぜでしょうか?

ここまで説明してきた照明新設工事を、電気工事屋さんに頼んで施工してもらって、「5千円でいいですよ」といわれたら、どう感じますか? 高いですか? 安いですか?

では、2万円ならどうでしょう? さらに8万円ならどう感じますか?

私なら、2万円までなら適正価格と判断します。8万円はぼったくりです。

しかし、8万円でも安いと判断する人はいるかもしれません。反対に、5千円でも高すぎると判断する人もいるでしょう。

この照明新設工事を、官公庁が発注したときを考えてみます。

官公庁が発注する工事は、税金を使います。税金を使う工事は、その使いみちが適正かどうかを厳しく問われます。あなたも税金を納める立場で、使いみちが適正かは気になるのではないでしょうか。

官公庁は照明新設工事を、2万円で発注したとします。このとき、先ほどの5千円でも高いと感じる人達は、「税金の無駄遣いだ」と言うでしょう。

官公庁は「税金の無駄遣い」でないことを、客観的に示さないといけないのです。その根拠となるのが、工事積算です。

例えば、国土交通省は積算の基準となるものとして「公共建築工事標準単価積算基準」と文書を毎年度作成しています。私の勤めていた鉄道会社にも、同様の積算基準があり、それに従って積算をしていました。

これは歴史的に妥当とされてきた工事費の算定方法で、これに従っていれば「税金の無駄遣いは無い」適正な価格だといえます。

ここまで例としてきた照明設工事は、下表のように積算します。

それぞれの旗揚げの項目ごとに、材料費と労務費がかかります。直接工事費に、現場管理費(使用する事務所や道具の費用など)やその企業の間接部門(営業、経理、総務など)の経費である一般管理費や消費税などを足して、最終的に工事費になります。

工事積算を含まず電気工事設計とすることもある

ここまで解説してきた工事設計の流れの中で、最後の工事積算は電気工事設計の中に含まれないこともあります。

後述する求人例の仕事内容を見ても、電気設備の設計(現地調査~旗揚げ)をもって工事設計としている求人があります。この場合、工事積算は別の部門が行うなど、プロセスを分けています。

工事図面だけを成果物として提供し対価をもらっているとき、その図面に対する工事の積算は、成果物を受け取った会社が行います。このように分業していると、「工事積算をしたかったのに、工事積算を仕事でできない」ということも考えられます。

求人票などに「電気工事設計」とだけ書いてあるときは、どこまでの範囲を事業として行っているのか確認しましょう。転職サイトを使うなら、転職エージェントを通して訊くとよいです。

希望しない職種に転職して、その面白さに目覚めることもありますが、多くの場合ミスマッチは不幸になります。ミスマッチを防ぐためにも、転職時の事前確認はしておくべきです

電気工事設計に必須の資格はない

次に、電気工事設計に必須の資格はあるのでしょうか。

実は、電気工事設計をするのに持っていなければならない資格は存在しません。私がWEB検索してみたところ、「電気設計士」というキーワードがヒットしましたが、そのような資格はありません。

どこかの企業が、電気設計や電気工事設計をする人を、社内的に「電気設計士」と呼んでいるだけです。これは注意してください。

では、だれでもすぐに電気工事設計ができるかというと、そうでもありません。第一に電気工事の知識が必要です。どこでどんな作業(労務)が発生するのか理解していないといけません。

設備を選定するときには、電気的な知識も必要です。ケーブルの太さを決めるとき、流れる電流値を推定しなければなりません。電気回路の計算ができることは必須です。

また、法令的に設備が正しく設置されることが求められます。この法令でよく参照するのは、「電気設備に関する技術基準を定める省令(通称:電気技術基準)」とその「解釈」です。

そのほか、会社によってはさまざまな規定・基準があり、それらを正確に読み取り従う必要があります。

私は以前、鉄道会社で工事設計を担当していたことがあります。鉄道の電気設備を設計する場合、上の「電気技術基準」と「解釈」のほかに、「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」というものがあり、これに従う必要があります。

そのほかにも、社内の設計標準や設計指針があり、それぞれがキングファイル複数冊に及ぶもので、読みながら設計するのは大変でした。読み方が足りずに、設計を終えて上司に確認をしてもらうと、「規定読んだのか?」と詰問されることもありました。

さらに、労務についても法令に沿っている必要があります。

例えば、施工に伴い産業廃棄物が出るなら、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」に従い、その処理に関して費用を上積みしないといけません。また、夜間に施工するなら、労働基準法に則って割増賃金分を上乗せする必要があります。

このように、電気工事設計では単一の資格では推し量ることのできない、様々な知識を求められると考えておいてください

求人の実例と年収について

ここからは、実際の求人例3件を見ていきます。

最初は、東京に本社があり、勤務地も東京になる株式会社ノア・テクニカの求人です。下の図のように、この求人は建物の照明器具など、低圧の電気設備の設計をする仕事です。

また、具体的な仕事内容のすぐ下に、次図のように業務の流れとして「積算」を行うことが明記してあります。ただし、この会社は設計をする部門と積算をする部門が違うので、どちらかを専門で行うことになります。

なお下図のように、この求人は学歴不問です。設計未経験でも、電気に関わる経験があれば応募することが可能です。

次は、大阪に本社があり、東京にも事業所がある株式会社フューチャーアットマークテクノの求人です。下図のように、建築物の電気設備設計を行っており、その設計業務をすることになります。

また、下は同会社の対象となる方の欄です。学歴は不問ですが、建築電気設備設計の3年以上の経験が必要とあります。

電気設備設計とは、上で説明したような照明新設程度の簡易な設計だけではなく、さらに電気的な検討の必要な設計も含みます。

例えば、変圧器を新設する場合は、負荷計算や荷重計算など様々な計算が必要です。これには電気の高度な知識が必要になります。

仕事内容の欄にあるように、高圧または特別高圧の受変電設備から、弱電設備まで扱っているので、電気に関する深い知識が必要です。それを担保するための業務経験3年と考えられます。

また、歓迎資格の欄を見ても技術士や電気主任技術者の記載があり、社員に求める電気の技術力が高いことがわかります。ステップアップで転職するのに向いた案件といえます。

最後は、東京に本社のある京三電設工業株式会社の求人です。この案件は、広島地区での採用するものです。

この会社では、鉄道関係の信号設備工事の設計・施工などを行います。鉄道の信号設備とは、一般の方でも目にしやすい信号機のほか、分岐器(ポイント)や閉塞設備(列車の衝突を防ぐ設備)などをいいます。

鉄道の安全に対する意識の高まりや、自動運転・自動制御へのシフトなどが影響して、鉄道の電気分野の中でも今後特に需要が高まる分野です。

この求人案件は、電気工事士として実際に施工する人を募集していますが、設計も合わせてすることが明記してあります。積算については、求人に記載がなかったので、応募するときは確認する必要があります。

下図は、同じ求人の対象となる方の欄です。学歴不問、未経験歓迎となっています。

鉄道の信号技術者は専門性が高く、転職市場に出回ることが少ないです。よって、このように教育前提の募集をかけていると考えられます。

誰でも応募できますが、私の経験からの注意点があります。鉄道の信号設備は、論理回路(AND、OR、NOT)の知識が必須です。論理回路で列車を制御しているからです。

したがって、論理回路が嫌いな人、理解する気がない人は向きません。この点には、注意してください。

そして、このような求人を探すときは、キーワードで探すよりも職種で絞り込むと良いです。

私は上の求人を探すのに、最初は「工事設計」「電気 設計」などでキーワード検索をかけました。しかし、製品の設計や回路設計が多く、なかなか工事設計にたどり着きませんでした。

転職サイトなら、以下のような職種を絞る機能があるので使ってみると良いです。下の図は「doda」のものです。

また、次図は「マイナビ」のものです。

絞り込むとき、明らかに電気でないもの(構造解析、土木設計など)を除いて、一緒に検索すると良いです。これは、建築設計の中にも建築物付帯の電気設備を設計するものなどが含まれるからです。

こうすることによって、電気工事設計の求人を効率的に探すことができます。

年収は、密接に関係のある建設業の平均年収より上であることが多い

最後に、電気工事設計業界の年収について説明します。

求人実例で示した3社の給与欄を見ると、以下のようになっています。上から、「株式会社ノア・テクニカ」「株式会社フューチャーアットマークテクノ」「京三電設工業株式会社」の求人の給与欄です。

これから年収を概算で推定(賞与は2ヶ月、提示月給以外の手当なしで計算)すると、上から「368~800万円」「560~980万円」「350~400万円(記載通り)」となります。一般に大都市圏(特に東京圏)の年収は高いので、この3社間での高い低いは参考にならないことを注意しておいてください。

ちなみに、私が鉄道会社で電気工事設計をしていたとき、30歳位で年収は550万円ほどでした。また、転職するときにある電気工事設計会社から提示された年収は32歳当時で500万円でした。

また電気工事設計の仕事は、建設業に該当します。国税庁が実施している「民間給与実態統計調査」で建設業の給与所得者の数は以下のグラフのようになっています。

引用:平成29年度民間給与実態調査(国税庁) 第8表をグラフ化

さらに同調査第9表によると、建築業の給与所得者の平均年齢は47歳で、平均年収は約500万円です。これと比べても、電気工事設計の仕事は平均的か、もしくは高いくらいの給与であることが多いです。これは単なる施工と比べて、高度な知識や技能が必要だからです。

まとめ

このように、電気工事設計は「現地調査」に始まり「工事積算」まで、電気工事の経験と知識をフルに活かせる仕事です。ただし、求人によっては「工事積算」が工事設計とは別に扱われることもあります。

この電気工事設計の仕事をするのに必須の資格はありません。求人例を見ても、資格必須としているものはごく僅かです。資格よりも、資格では測れない深い知識や、経験が生きてくる仕事といえます。

したがって、全く異なる分野から飛び込んでくるというよりは、電気工事の経験があって、さらなるやりがいと収入を求めて応募する求人といえます。

電気工事設計の求人は、多くはないですが、探し方を工夫することで見つけやすくなります。転職サイトなどを使って探すときは、キーワード検索するよりも、職種を「設計・積算」などとして絞り込むほうが探しやすいです。

また、年収は建設業の平均的な年収と同じくらいの水準から上の水準提示されることが多いです。

これらの情報を活用して転職活動することによって、満足いく転職につなげることができます。

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。