エネルギー管理士(エネ管)資格は、難易度の高い資格の一つです。あなたも仕事が忙しい中、大変な努力をして取得したのではないでしょうか? 省エネ・環境について意識が高まる中、活躍が期待される資格でもあります。

ただ、エネルギー管理士資格取得後にエネルギー管理士として働いていないと、転職でどのように評価されるか心配になります。実際にはどのように求人が出されているのでしょうか? 実務未経験でも問題なく応募でき採用されるのでしょうか?

ここでは、そのような疑問に答えるために、「エネルギー管理士を求める求人の実際」「実務未経験者がどのように扱われるか」「エネルギー管理士の年収」について詳しく説明します。

エネルギー管理士を求める多くの製造業で未経験問題なし

エネルギー管理士資格を活かして転職するときは、どのような業種・職種を探すと良いでしょうか? 実はエネルギー管理士を求めているのは、技術職で製造業が多いです。

したがって、エネ管資格を持って転職するときは、製造業の技術職が第一選択肢になります。

製造業は、省エネ法で資格試験を突破したエネルギー管理士をエネルギー管理者として複数名選任することが定められています。エネルギー管理士試験は比較的難易度の高い資格試験です。さらに工場で複数名を選任しなければならないので、その分有資格者に対する需要が高いです。

製造業の求人は、例えば下図の旭化成株式会社が該当します。旭化成社は宮崎、鹿児島に起源を持つ、総合化学メーカーです。この求人では、設備管理職としてエネ管資格の保有が歓迎条件に挙げられています。

エネ管資格を活かそうとする場合、旭化成社のように工場の設備保全・設備管理の職種として募集されることが多いです。

また、設備管理の職種だと、事業会社を別に立ち上げて設備管理だけを行わせる形態を取る場合があります。例えば、下図の東京エレクトロンBP株式会社が該当します。この求人では、岩手県の事業所で働く人材を求めています。

東京エレクトロンBP社は、半導体製造機械を製造している東京エレクトロン株式会社のグループ会社です。岩手県のほか、山梨県、熊本県などにあるグループ会社生産拠点のファシリティーマネジメント(設備管理)を担当しています。

このような設備管理部門を別会社にする形態はよくあります。〇〇株式会社の設備管理部門を独立させて、「〇〇ファシリティーズ株式会社」「〇〇サービス株式会社」などという名称にすることが多いです。ちなみに「〇〇」には、親会社と同じ名前が入ります。

どちらの求人も、エネルギー管理士選任経験を求めていません。資格を持っているだけでも、問題なく応募できる求人です。製造業では、このような求人を探していきます。

製造業以外でエネ管資格が有利になる求人例

製造業以外では、電力会社もエネルギー管理士が特に必要な業種です。職種は、製造業と同様に設備管理職であることが多いです。

電力会社の求人だと、下図のような北陸電力株式会社の求人があります。北陸電力は、富山・石川・福井の電力供給を担う電力会社です。

この求人でも、特にエネルギー管理の実務経験を求めていません。そもそもが未経験者歓迎の求人で、ほかに技術的な経験を求められているわけではありません。したがって、エネルギー管理士資格を保有しているならアピールして有利に導くポイントになります。

しかしながら、いわゆる10電力と呼ばれる電力会社は、求人が出ていることは少ないです。そこで、電力事業に携わりたいなら新電力と呼ばれる10電力以外の電力会社を探すとよいです。

実は、私は転職で新電力の業界に入りました。鉄道から業種を変えて転職活動をしたとき、10電力は求人を見つけることができませんでした。しかし、新電力の求人ならいくつか見つけることができました。

下記は、新電力の一つの株式会社ガスアンドパワーの求人です。ガスアンドパワー社は、大阪ガスの100%出資会社です。近畿・中京地方のほか、岡山県・佐賀県・千葉県などでも事業を展開しています。

この求人で採用されると、愛知県名古屋市にあるバイオマス発電所で技術職として勤めることになります。

これらの電力会社や製造業のほかにも、エネルギー管理士を求めている会社はあります。例えば、下図の株式会社インターネットイニシアティブの求人です。

インターネットイニシアティブ社は情報通信業を営んでいる会社です。この求人では、島根県のデータセンターでファシリティマネジメント(設備管理)の業務を行う人材を求めています。

情報通信会社のデータセンターでも、設備管理の考え方は工場と同じです。対象の設備に電子機器が大幅に増えるだけです。また、情報機器であっても電気で動作するので、受電配電の設備は工場と大きく違いません

そして、省エネ法でエネルギー管理について定められているのは情報通信業でも変わりません。省エネについて、実効性のある取り組みを推進する必要があります。

インターネットイニシアティブ社の求人でも、エネルギー管理に関する経験を求めていません。したがってエネルギー管理士資格を持っていれば、製造業や電力会社と同様にアピールするポイントになります。

以上のように、エネルギー管理の実務未経験でもエネ管資格を持っていれば歓迎される求人はたくさんあります。

未経験のエネルギー管理士でも問題ない理由

ここまでエネ管資格が求められる分野について説明してきました。どの分野でも、エネルギー管理士の実務経験が求められていない求人が多いことがわかります。なぜエネルギー管理士の実務経験を求める求人は少ないのでしょうか?

これは、エネルギー管理士の職務内容と選任の仕組みを考えればわかります。

まず、エネルギー管理士の職務内容は、法令で定める「エネルギー管理企画推進者」「エネルギー管理者」「エネルギー管理員」選任されたあと、以下の業務を行うことです。

  • エネルギー管理標準の作成および管理標準に沿った設備管理
  • エネルギー原単位の管理
  • 定期報告書の作成および経済産業局への提出
  • 中長期計画書の作成および経済産業局への提出

そして、これらの業務を通して、事業所として省エネを推進・実践していくことが選任の意義です。

ただ、省エネの効果は1年や2年で簡単に現れるものではありません。技術の進歩に伴う設備改善をして、運用方法を改めて、何年もかかって実現していくものです。

したがって、1年単位の実務は、実はルーチンワークです。特に、新規事業所立ち上げではなく既設の事業所の場合、すでにエネルギー管理の仕組みが出来上がっています。

私は発電所立ち上げ時に、エネルギー管理標準や現場の実務レベルに落とし込んだマニュアルの作成に携わったことがあります。たしかに新規作成は骨の折れる辛い仕事でした。

しかし運用段階になると現実との差異を埋める修正作業が主で、すでに行ったことの繰り返しです。

さらに、エネルギー管理者などに選任された人だけが頑張っても無意味で、事業所全体で取り組んでいくことで省エネの成果を上げられるものです。つまり、実際に選任されて実務経験がなくてもあまり影響がないのです

2つ目の理由として、エネルギー管理をする体制は複数人で構成されているということが挙げられます。

事業所単位でエネ管資格を持った人材が必要な工場の場合、エネルギー管理者またはエネルギー管理員は複数名選任されます。つまり、転職して入社してくるあなたに実務経験がなくても、すでに誰かがエネルギー管理の実務をこなしています。

下図が、省エネ法で求めるエネルギー管理の体制図です。会社としても、事業所単位としても複数人でエネルギー管理の実務を行うことがわかります。

このように、事業所としてエネルギー管理について未経験の人が一人入社したとしても全く問題ないのです。

以上の理由から、エネルギー管理の実務経験がなくてもよい求人が多数出ているのです。もちろん入社してから多数覚えることはありますが、エネ管資格を取得できたのであれば、十分こなすことのできる職務です。未経験でも自信を持って転職活動を進めてください。

エネルギーソリューション企業の求人は注意

エネ管資格を活かした転職活動を行うときは、設備管理職を探すと求人がたくさんあることを、ここまで説明してきました。一方、設備管理ではない職種も少ないながら求人があります。

例えば、下図の広島県に本社を置くシステム計装株式会社の求人が該当します。この求人では営業職を募集していて、営業未経験でもエネ管資格を保有していれば応募できる求人です。

この求人では、営業経験がない人はエネルギー管理士の資格を取得していることが必須とされています。エネルギー管理の実務経験について特に記載がないので、未経験でも問題ない求人です。

しかし、業務内容を見ると「客先で省エネを提案し、ESCO事業契約を結んでくる」仕事です。ESCO事業とは、Energy Service COmpanyのことで、客先に省エネによるコスト削減を提供し、設備工事と運用管理で稼ぐモデルです。

つまり、顧客にコスト削減という実利を提供できなければ事業として成立しません。そして営業職といいながら、技術営業職に近い仕事内容です。エネルギー管理士の資格だけ持っていて、実務の省エネ管理について全くの無知だと仕事にならない可能性が高いです。

このようなときは、どれくらいの技術レベルや経験を求めているのかを求人票だけでなく企業側から聞き出す工夫が必要です。転職フェアなどに、あなたが希望する企業が出展していて話を聞くことができれば最善です。

しかし直接話を聞くことができなくても、転職エージェントを通して状況をうかがうこともできます。

このように事前に企業側の求人の意図を知る工夫をすると、事前対策を考えることで転職を成功させやすくなります

エネルギー管理士の平均年収を知る

最後に、エネルギー管理士の年収について解説します。

冒頭に紹介した旭化成社の年収は、下図のように求人票に示されており、年齢ごとの標準年収が決められていて404~960万円と提示されています。

そのほかここで紹介した求人の提示年収は下表のとおりです。

会社名 提示年収[万円] 業種 職種
旭化成(株) 404~960 化学 設備管理
東京エレクトロンBP(株) 400~800
(モデル年収:未経験400~600、経験者700~800)
その他技術サービス
(半導体)
設備管理
北陸電力(株) 400~700 電気 設備管理
(株)ガスアンドパワー 490~840 電気 設備管理
システム計装(株) 270~
(モデル年収:30歳 500、46歳700)
技術サービス 営業

表から、設備管理職として400~700万円がボリュームゾーンといえます。なお、エネルギー管理士資格で資格手当があるかどうかというのは、会社によります。ただし、あっても数千~数万円程度と考えておきましょう。

下図、パナソニックファシリティーズ社だと、設備管理職でエネルギー管理士資格を取得すると5,000円の手当がつきます。

ちなみに私の経験した鉄道業だと一時金、手当そのほか一切なしでした。今勤める会社は電気業で、一時金は下写真の通り研修費として5万円もらいましたが、それ以降手当は一切なしです。

そのほか、提示された年収額が妥当かどうかは、業種全体の平均年収と比べると良いです。業種ごとの平均年収は厚生労働省が賃金基本構造統計調査で公開しています。下グラフは、賃金基本構造統計調査をグラフ化したものです。

引用:令和元年賃金基本構造実態調査(厚生労働省)をグラフ化

統計調査結果では、旭化成社が該当する化学製造業だと620万円ほど、インターネットイニシアティブ社が該当する通信業だと650万円ほどが平均年収です。提示年収が低くても、年次が上がるごとに年収が伸びることもあります。

提示年収と業種平均年収に大幅な差異がある場合は、転職エージェントなどを通して詳細を確かめると良いです。この手順を踏むことで、年収面での転職失敗を防ぐことができます。

まとめ

ここでは、エネルギー管理士資格だけ持っていて実務経験がないときの転職について解説してきました。

エネルギー管理士を求める求人は、設備管理職でたくさん募集されています。その多くは製造業です。また、電気業でも設備管理職として募集されていることがあります。

どの場合も、エネルギー管理士の資格保有が条件で、エネルギー管理士の実務経験については謳われていません。これは、エネルギー管理士の実務の難易度が低いからです。したがって、実務経験がなくても恐れることはありません。

ただし設備管理職以外の職種では、実務経験がないと仕事に支障がでそうな求人もあります。このような場合は、事前に業務内容を確かめることで転職成功しやすくなります。

エネルギー管理士の年収は、設備管理職の年収を参考にすると良いです。資格手当などは会社によりますが、数千~数万円が相場です。あまり期待しすぎないようにしましょう。

また、提示年収と業種平均年収に差異が大きいときは、転職エージェンなどを通して確認すると良いです。そうすることによって、転職失敗を防ぎやすくなります。

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。