電気に携わる人が取得する資格のうち、電気工事士資格と電気主任技術者資格は知名度が高く、様々な場所で評価される資格です。特に電気主任技術者資格は難関資格であり、あなたも苦労して取得したのではないでしょうか。

転職活動において、資格はあなたの実力を示す重要な要素の一つです。資格をたくさん持っていることで、有利に転職活動を進めたいと思うのは自然な考えです。

では、電気工事士・電気主任技術者の両方の資格を持っているとどのように採用試験で評価され、どのような働き方をすることになるのでしょうか。これらのことを十分把握しておくことで、転職が成功する確率を上げることができます。

ここでは、電気工事士・電気主任技術者資格の求人での評価、それぞれの資格の意味と求められる企業、求人例、年収および資格手当について解説します。

求人はあるが両方の資格の意味を知る必要がある

はじめに、電気工事士と電気主任技術者の両方の資格を求人票の条件として挙げている企業はどのくらいあるのでしょうか。大手転職サイトのdodaで「電気工事士 電気主任技術者」をキーワードに検索すると451件の求人がヒットします。

このヒット件数だけを見れば、2つの資格が転職に有利なように思えます。では、検索してヒットした求人の一つを下図に示します。この求人は、東京西部に事業基盤を持つ株式会社日本電力サービスの求人です。

日本電力サービス社の求人の求める方の欄には、「電気工事士資格を持っている方」「電験1〜3種お持ちの方歓迎」とあります。

確かに採用試験で有利になりやすい記述です。しかし、仕事内容は「電気工事スタッフ」であり、実際に入社して仕事を始めたあとは、電気主任技術者資格がないとできない仕事に携わることはごく僅かであると考えられます。

もし、あなたが電気主任技術者として責任ある立場として仕事をしたいと考えているなら、この求人で採用されても満足できる結果にはなりません。私が転職活動をしたときには、電気主任技術者の資格の意味を勘違いしており、随分と苦労しました。

私は、転職活動を始める前に「電験は高く評価される」と聞いていたので、直接電験が活きることのない業界(建設、設計)も数多く受けました。しかし、提示年収でなかなか折り合いが付きませんでした。

このように資格の意味と、求人の特徴を十分に捉えて転職活動を行わないと、不幸な転職になりかねません。そうならないためにも、まず企業で電気工事士資格と電気主任技術者資格がどのように評価されるか知っておきましょう。

電気工事士資格と電気主任技術者資格の違い

2つの資格の難易度を比べると、電気工事士資格のほうが取得しやすいです。一方、電気主任技術者資格は難関資格とも言われ、電気工事士資格を取得した人がステップアップで取得することも多い資格です。

電気主任技術者の免状を持っていると電気工事士試験の筆記試験免除になることから、電気工事士試験の上位資格が電気主任技術者試験(電験)と思われているかもしれません。

しかし、この2つの資格は全く別の場面で使われる資格です。簡単に2つの資格の違いをまとめたのが下表です。

資格 必要な場面 根拠法令
電気工事士資格 低圧・高圧の電気工事を行うのに所持していると施工することができる 電気工事士法
電気主任技術者資格 高圧以上の電気設備を維持管理運用する責任者として、電気主任技術者に選任することができる 電気事業法

電気工事士資格は、電気工事に携わる人が必ず所持していなければならない資格です。簡単だからといって、下の写真のようなコンセントを無資格で設置したり改造したりしてはいけません。

無資格で電気工事を行うと、懲役または罰金の刑罰を受けることになります。

このような理由から、電気工事士の有資格者を求めるのは建設業や電気設備の配線・接続・修理などを行う業種が中心になります。

一方、電気主任技術者資格を取得しているだけで、できる仕事は一切ありません。電気主任技術者資格は、高圧以上の電気設備を持つ事業者が法令に定められる電気主任技術者に選任する要件となっているだけです。

工場や大規模住宅・商業用施設などは、下の写真のように高圧以上で受電する場合、電気主任技術者を選任して自主的に保安を行う義務があります。選任は、経済産業省の各地方産業保安監督部に届出する必要があります。

その電気主任技術者に選任されるためには、電気主任技術者資格を持っていることが基本的な要件です。

電気主任技術者の仕事は、高圧以上の電気設備が適切に工事・維持・運用されるように監督・指導することです。これは、建物内の電気設備に関する責任者であると言いかえることもできます。

しかし電気主任技術者だからといって、電気工事ができるわけではないのです。電気主任技術者であっても、電気工事をするには電気工事士の資格が必要です。

このような特徴があり、電気主任技術者の有資格者を求めるのは、電気事業者、ある程度大きな電気設備を持つ事業者(製造業・運輸業)、電気保安業を営んでいる企業です。

ただし一点注意しないといけないのが、電験に電気技術の実力認定試験の意味合いがあるということです。

電験は、本来強電分野で必要な資格であるのに、通信や制御と言った弱電分野の電気技術者でも多数の人が受験し取得を目指します。それは、電気技術について網羅的に取り上げているからです。

企業でも、自己研鑽として電験取得を推奨しているところが多数あります。私が以前勤めていた鉄道会社では、信号・通信担当の電気系技術社員にも電験取得を奨励していました。実際弱電系技術者でも何人も電験を取得しています。

企業としては、技術レベルの高い人材が入社することは良いことでもあるし、仕事を受注する際に発注者に対して箔が付きます。このような理由から、冒頭の日本電力サービス社のように建設業などでも電験有資格者を歓迎していることがあるのです。

両方の資格が条件にある求人例

以上を整理すると、電気工事士と電気主任技術者の両方の資格を求めている会社には、以下の3つのパターンがあります。

  1. 電気工事が主体で、技術者としての実力の高い人材がほしい企業→建設業など
  2. 電気保安のある設備管理が主体で、簡易な電気工事は自前でやる企業→電気事業者、製造業など
  3. 設備管理を請け負っていて、電気工事が日常的にあり、その中から電気主任技術者も選任する企業→ビルメンテナンス業など

あなたがどのような仕事を中心にしたいかによって、このパターンの中から適切な求人を選択する必要があります。

続いて、それぞれのパターンについて具体的にどのような企業が求人を出しているのかについて解説していきます。

・電気工事が主体の企業

建設業の例としては、冒頭に示した日本電力サービス社がわかりやすい例です。建設業なので、電気工事士資格は必須です。

では、なぜ電気主任技術者の資格者を求めているのでしょうか。求人票の業務内容の欄で、同社は官公庁との取引もあることが示されています。

官公庁から直接仕事を請け負うためには、高い技術力のある人材がいることが一つの要件です。

それを客観的に示すために経営事項審査という審査があります。この中に、電気工事士のほか電気主任技術者資格が対象として挙げられています。したがって、電験資格の取得を社員に促します。

これは、かつて付き合いのあった電気工事会社の主任技術者と話していたときにも教えてもらったことです。その主任技術者は、社内で資格取得を推奨している立場上、部下に先んじて自ら資格取得している人でした。

このような理由から、建設会社の中途採用で電験資格を持っていることは、歓迎条件として有利に働きます。

建設業のほか、電機メーカーや電機メーカーから発注を受けて電気設備を設置する企業も同様の電気工事主体の仕事があります。例えば、以下の日新電機株式会社の求人が該当します。この求人では、京都の工場と客先出張を行き来して仕事をする技術者を求めています。

日新電機は、インフラ系電気設備に強みを持つ企業です。電力会社のほか、鉄道会社にも納入実績があります。

私は鉄道会社勤務時代に、変電所に計器用変流器(CT)を購入設置したことがあります。日新電機社は、CT以外にもGISやトランスなども製作している電機メーカーです。

私が対応したときは、機器納品だけ日新電機社が担当し、設置配線は鉄道会社のグループ会社を使いました。しかし日新電機社は、設置工事やそのあとの保守点検にライフサイクルエンジニアリング事業部を設けて対応しています。

この事業部では、主に電気工事をすることになるので電気工事士資格が活かせます。

一方、電気主任技術者に選任されることはありません。しかし、客先と電気の技術的な検討・提案をするときの説得力を持たせるためにも電験資格は取得推奨されます。

電気工事が主な業務である会社の求人は、このような求人を探していきます。

・電気保安のある設備管理が主体の企業

高圧以上で受電する工場の求人の例は、下図に挙げるマクセル株式会社の求人があります。この求人では、同社の兵庫工場の施設管理(設備管理)で電気主任技術者に選任されて働く人材を募集しています。

電気主任技術者に選任が前提の求人なので、電験資格を持っていることは必須条件です。この求人では、第三種電気主任技術者資格が必須とされています。

工場の求人の場合は、電気設備保全や工務とも呼ばれます。工場内電気設備の簡易な修繕をすることがあるので、電気工事士が生きることもあります。しかし、「持っていた方がいい」程度のものです。電気工事の実務経験なしでも、工場設備管理の仕事はできます。

設備管理の仕事の本筋は、電気設備が予定外に停止してしまうことを防ぐことです。具体的には、「検査」「分析・評価」「対策検討」「対策実施」のサイクルを回し続けます。

設備管理はこのサイクルを、あらゆる知恵を絞って改善し精度を上げていくことが至上使命です。目の前の故障した電気設備を修繕するのは、このサイクルが回っていれば存在しないはずの仕事です。

したがって、電気工事士資格を持っていることの優先度は低いです。企業は、腕の良い電気工事士よりも電気設備を故障しないように管理できる技術者のほうがほしいのです。

では、なぜ電気主任技術者資格は必要とされるのでしょうか。電気主任技術者の有資格者が歓迎される理由は大きく2つあります。

  1. 法令で定める電気主任技術者に選任するため。または、予備人員として確保するため。
  2. 設備管理のサイクルを回せる電気の技術力を担保するため。

1について、電気主任技術者に選任されるためというのはわかりやすいと思います。しかし、マクセル社のように選任前提で「電気主任技術者資格必須」の求人は少ないです。

なぜなら、すでに事業を行っている場合、つまりほとんど場合、すでに電気主任技術者は選任されているからです。電気主任技術者を選任していないと受電することができないので、これは当たり前です。

マクセル社のように電験資格必須で求人を出しているのは、今在籍している電気主任技術者の退職が迫っているからと考えられます。一方、求人で電気主任技術者を歓迎条件として求めるのは、予備人員として確保する場合が多いです。

予備人員とは、今後事業所を新設したときなどに新しく電気主任技術者として選任できる人員ということです。

また、今選任されている電気主任技術者が退職したとき、代わりに選任されるための人員でもあります。事業を継続するためには、遅滞なく電気主任技術者を選任する必要があるので、社内に予備人員を抱えておくことは重要です。

これは、私が今まで勤めたことのある鉄道会社でも電力プラントでも同じです。鉄道会社では電験1種、電力プラントでは電験2種を、社員に対してしきりに取得を促しています。つまり、代替要員としての電気主任技術者を確保するためです。

もう一つの理由は、電気設備管理に対する一定程度の技術力があると考えられるからです。前述のとおり、電験資格は電気の実力認定試験の意味合いがあります。つまり、電気設備管理を行うのに十分な実力があると認められるのです。

設備管理の求人は、以上のことを十分理解した上で類似の求人を探す必要があります。

・ビルメンテナンスの企業

最後は、ビルメンテナンス業の求人を紹介します。下図に示すのが、山王ファシリティーズ株式会社の求人です。勤務地は、大阪・兵庫・宮城・福岡の都市部にある自社グループ保有ビルです。

ビルメンテナンス業は、他社の電気設備を管理する仕事です。これには、簡易的な工事や電気主任技術者の選任が必要な電気保安業務も含まれます。したがって、両方の資格が歓迎条件としてあげられることが多いです。

ちなみに、必要な基礎資格という意味で「ビルメンテナンス4点セット」と呼ばれる資格に電気工事士資格が入っています。さらに、「ビルメンテナンス三種の神器」と呼ばれる資格に電験三種が入っています。

この場合も、両方の仕事を同時に活かすというよりは、「電気工事士が主に役立つ職場で、場合によっては電気主任技術者に選任される」というものです。

ビルメンテナンスの求人は未経験OKの案件が多いです。山王ファシリティーズ社の求人も未経験歓迎とされています。したがって、電気工事士や電気主任技術者の資格を持っていると有利になることは間違いありません。

ビルメンテナンスの求人は、このような点に注意して検討する必要があります。

求人による年収の違い

ここからは、電気工事士と電気主任技術者の両方の資格が条件に入っている求人の提示年収を確認していきます。冒頭で紹介した日本電力サービス社の求人では、下図のように400~700万円の年収が提示されています。

そのほか、ここで紹介した求人の年収は下表のとおりです。

会社名 提示年収[万円] 業種 主に役立つ資格
日本電力サービス(株) 400~700 建設業 電気工事士
日新電機(株) 400~600 製造業(電機) 電気工事士
マクセル(株) 400~ 製造業 電気主任技術者
山王ファシリティーズ(株) 280~370 ビルメンテナンス 電気工事士

このように、提示年収は業種により様々です。

なお、電気工事士や電気主任技術者資格が求められやすい業種の平均年収を下のグラフに示します。これは、厚生労働省が調査発表している賃金構造基本統計調査のうち関係する業種のデータをグラフ化したものです。グラフ中、青色で示したのが製造業、緑色で示したのが非製造業です。

引用:令和元年賃金基本構造実態調査(厚生労働省)をグラフ化

グラフによると、航空運輸、製造業(石油石炭製品)、電気が高く、ビルメンテナンス、製造業(食料品、繊維)が低いことがわかります。年収アップを目指した転職を考える場合は、このグラフの左側の業種に転職したほうが成功しやすくなります

電気工事士・電験の資格手当は数千~数万円

資格を活かした転職を考えるとき、資格手当がどのくらいもらえるのか気になるところです。実際に手当として支払われる金額は、数千〜数万円が相場です。

下図は、ビルメンテナンス業としては待遇が良い大阪ガスファシリティーズ株式会社の求人です。この求人では、資格ごとの手当を記載してあります。電気工事士は1500円、電気主任技術者は1・2種が15,000円、3種が10,000円であることがわかります。

資格手当が支払われるかどうかは、それぞれの企業の考え方によります。

たとえば、私がかつて勤めていた鉄道会社では、電気工事士資格を取得しても手当は支払われません。また、電気主任技術者資格を取得しても、選任されなれければ手当の支給はありませんでした。

今勤めている電力プラントでも、電気工事士・電気主任技術者のどちらの資格も手当の支給はありません。

そして、資格手当はトータルの年収アップにつなげるには少額です。また、手当は基本給に算入されないことがほとんどです。つまり、残業代やボーナスは基本給を基準に計算されるので、これらには影響がありません。

例えば、2つの資格で11,500円の手当を支給されたとしても、年間で約14万円の年収アップにしかなりません。

一方、先程示したグラフでは、最も高い平均年収の航空運輸業と最も低い平均年収の製造業(繊維)で400万円以上の差があります。

したがって資格手当にこだわって転職を決めるよりか、年収の高い業種を狙って転職したほうが高年収を得やすくなります

まとめ

ここまで、電気工事士と電気主任技術者の両方の資格を活かした転職について説明してきました。

これら2つの資格を条件にあげている求人はたくさんあります。しかし、資格の意味を十分に理解して転職しないと、ミスマッチを引き起こし不幸な転職になってしまいます。

電気工事士と電気主任技術者の2つの資格を条件に挙げていても、実質にはどちらか片方の資格の保有者の仕事が主であることが多いです。つまり、あなたは電気工事士資格・電気主任技術者資格のどちらを主に使った仕事に就きたいのかを十分整理しておく必要があります

これらの資格が活かせる業種はたくさんあります。そのうち平均年収の高い業種は、航空運輸、電気、通信業です。製造業だと、石油石炭製品の製造をしている企業が平均年収の高い業種です。

資格手当の支給額は年収に与える影響は小さいため、このような平均年収の高い業種を狙って転職すると年収アップを実現しやすくなります

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。