モノを移動することは、仕事の中でも基本的な作業の一つです。モノの移動に必要な資格の一つが、玉掛け技能資格です。

特に重量のある物を、クレーンを使って移動・作業するときには、玉掛け技能の有資格者が活躍する場面がたくさんあります。工場などモノづくりの現場で欠かせない資格が、玉掛け技能資格です。

しかし、闇雲に求人を探しても優れた求人を見つけることは難しく、きついです。玉掛け技能資格が企業からどのように評価され、どのような工場で必要とされているのかを十分に把握した上で転職活動することが成功の鍵になります

ここでは、工場で玉掛け技能資格を活かした転職を実現するために、玉掛け技能資格者に求められるもの、転職成功するための求人の探し方、資格手当・年収について詳述します。

玉掛け技能資格者に求められるものを理解する

はじめに、玉掛け技能資格を条件として挙げている求人はどれだけあるのか確認しておきましょう。大手転職サイトのdodaで、「玉掛け」をキーワードにして検索すると、154件の求人がヒットしました。

厚生労働省によると玉掛け技能講習は、年間20万人前後が修了(取得)する資格です。全国で154件の求人しかないということは、工場での勤務が想定されるメーカー、プラントエンジニアリングの企業に絞っているとはいえ、大変少ない件数です。

では、なぜ玉掛け技能資格を条件に挙げる求人が少ないのでしょうか。これは、玉掛け技能資格がどのような資格なのかを理解するとわかります。

玉掛け技能資格は、クレーンを使うとき荷にワイヤーを掛けることができる資格です。これは業務独占資格で、資格を持っていない人は従事してはいけません。

荷をクレーンで吊る作業は、産業の様々な場面であります。したがって、玉掛け技能の有資格者が活躍する場面はたくさんあるといえます。

一方、玉掛け技能資格を取得するための玉掛け技能講習の難易度は低いです。3日間で19時間の講習(座学・実技)を受けたあと、修了試験を受けると取得することができます。この合格率は95%以上です。特に実務を経験していない素人でも、3日講習を受ければ資格取得できます。

これが企業にとって何を意味するかというと、「多くの企業にとってわざわざ玉掛け技能の有資格者を条件に挙げて採用するほどでもない」ということです。

多くの企業にとって、玉掛け技能資格が必要な重量物の運搬作業は補助的な業務です。さらに、社員を採用してから3日間講習に行かせれば資格を取得してきます。玉掛け技能の無資格者を採用したとしても短期間で養成できるため、企業としては積極的に有資格者を募集する理由がありません。

私は新卒で入社した鉄道会社勤務時代に、会社費用で玉掛け技能資格を取得しました。しかし、玉掛けが必要な作業は年に数回でした。その鉄道会社から私が所属していた電気技術職種の求人が出たこともありますが、玉掛け技能資格の記載はありませんでした。

もちろん重量物の運搬が業務の中心の職場で、玉掛け技能有資格者の応募が喜ばれることには間違いありません。求人の中には、玉掛け技能資格優遇とされている求人もあります。ただし、求人全体のごく僅かであることを知っておく必要があります。

転職サイト・転職エージェントを有効活用する

このように、求人票の中に玉掛け技能について記載のあるものは少ないです。したがって、転職サイトでキーワード検索だけに頼っていたら優れた求人を見つける可能性は低くなります

そこで、以下のような工夫をすると良いです。

  • 非公開求人の中に、玉掛け技能資格が活かせる求人がないか探す
  • 転職エージェントに、玉掛けが活かせる求人がないか探す

1つ目は、玉掛け技能資格の記載がある求人にふれる数を増やす方法です。非公開求人とは、転職エージェントを介してのみ紹介される求人のことです。大手転職サイトのマイナビエージェントによると、非公開求人はすべての求人のうち80%程度であるとされています。

つまり、転職サイトでキーワード検索してヒットした求人数の5倍が、実際には求人に出されていると考えられます。

また、転職サイトにより、登録されている非公開求人は違います。そのため、複数の転職サイトを利用することで、より効率的に多くの求人に出会うことができます。

私が転職したときには、3つの転職サイトを使い非公開求人を出していた会社に転職しました。また、転職成功した友人・知人の多くは転職サイトを複数利用して、たくさんの求人に触れた上で転職を決めています。

このように、まずはあなたが触れることのできる求人を増やすために、非公開求人を探しましょう

2つ目は、求人票に「玉掛け技能」の記載がない求人を探す方法です。

転職エージェントは、さまざまな求人を見てきています。また、直接企業の担当者と話すこともあり、業務内容の詳細や社内事情など求人票に書かれていないことを知っている可能性が高いです。

そこで、あなたは転職エージェントに「玉掛け技能資格を工場勤務で活かしたい」ことを十分伝えておくと良いです。すると、企業としては求人票に「玉掛け」と書いていなくても、玉掛け作業がある求人を紹介してくれる可能性が高まります

玉掛け資格を活かした転職では、このように触れることのできる求人を増やす工夫をすることが転職成功の鍵になります

玉掛け技能資格が条件にある工場の求人例

ここからは、実際に玉掛け技能資格を条件に挙げている求人の例を確認していきます。紹介した求人と類似の業種・職種の求人を探すことで、優れた求人を見つけやすくなります。

玉掛け技能資格が優遇される、重量物を運搬する作業が業務の中心になるのは、主に製造業がです。特に、重厚長大なものを扱うメーカーが狙い目になります。

工場でのオペレーター

最初に紹介するのは、兵庫県で神戸製鋼所の工場内で鉄鋼の運搬作業を行うオペレーター(作業員または運転員)の求人です。この求人では、神戸製鉄所または加古川製鉄所で働くことになります。

鉄鋼産業は、重厚長大産業の代表例です。人力で動かせるものはないので、クレーンと玉掛け技能が必要な業種・職種です。

屋内であれば、下の写真のような天井クレーンを使って作業することが多いです。

また屋外であれば、下の写真のような門型クレーンを使うことが多いです。

どちらの場合でも、玉掛け作業自体は変わりません。玉掛け技能資格を取得してれば、どちらのクレーンを使った業務でも行うことができます。

そのほか、写真のような大型のクレーンでは免許が必要な場合があります。クレーンの分類と必要な免許・講習については下表に整理しました。

三輪運輸工業の求人場合、クレーン・玉掛けの有資格者を優遇するとあります。必須ではないので、クレーンの資格を持っていないからと言って先に取得しようとするのはよくありません。

そもそも業務でどのようなクレーンを使うのかわからないので、あなたの貴重な時間とお金が無駄になる可能性があります。

一方、表のどれかの資格を持っている場合は、大いにアピールすると良いです。上位のクレーン資格を取得するための学科・実技試験の一部が免除になることがあるからです。必要なクレーン資格がなくても資格取得しやすいことがアピールポイントになります。

工場内の作業員の求人例をもう一つ紹介します。下図は、大阪に地盤ある上野製薬株式会社の求人です。この求人では、24時間稼働の三重県四日市市の化学工場で製造オペレーターとして働く人材を募集しています。

この求人では、主に工場に設置されている生産機械の点検・操作などを日常業務として行うことになります。大型の生産機械だと、使われる部品や潤滑油などの資材も大型・大量で、クレーン・玉掛け技能を使う機会は頻繁にあります

また、工場排水の処理に使われる化学薬品の受け入れや汚泥処理など、クレーン・玉掛け技能の出番はたくさんあります。

工場の作業員として働く求人は、類似の求人を探していくことになります。

フィールドエンジニアとして工場と客先を行き来する

玉掛け技能資格が活きるのは、工場内で働く作業員のほかに、工場で製作した重量のある機械を客先で取り付ける技術者も該当します

例えば、下の写真は送風機と駆動するための電動機(モーター)です。高さが5mほどあり、かなり大きく重量があります。

これは重工メーカーが製作して納めたものですが、納品据付の際には当然のことながらクレーンで行います。したがって、玉掛け作業もあります。

このような重量物のメーカーでは、玉掛け技能資格を持っていることが歓迎条件になっていることがあります。

以下は、プライフーズ株式会社の求人です。プライフーズ社は青森に本社を置き、東北地盤の会社です。この求人では、岩手県の事業所で働く技術者を募集しており、玉掛け技能資格が歓迎条件になっています。

プライフーズ社自体は、食肉事業を手掛ける食品メーカーです。その一方、食鳥加工機を輸入販売している産業機械部門を独立採算部門として事業運営しています。

この求人では食鳥処理機械を客先に新規据え付けしたり、定期的に保全などを行ったりするフィールドエンジニアを募集しています。

フィールドエンジニアは、工場での出荷前作業が終わったら客先に出向き作業を行います。工場と客先を行き来する仕事です。

このような産業機械を扱うフィールドエンジニアも玉掛け技能資格が活かせる求人の一つです。

玉掛け技能の有資格者の資格手当と年収

最後に、玉掛け技能有資格者の給料について解説します。

一般に資格を取得すると、毎月手当として資格手当が支給されることがあります。資格を持っていることで、毎月給料にいくらか上乗せされるので、やる気につながる制度です。では、玉掛け技能資格には資格手当は支給されるのでしょうか?

実は玉掛け技能資格の資格手当支給は、企業によってまちまちです。ちなみに私が勤めたことのある鉄道会社と電力プラントでは、玉掛け技能資格に関して資格手当は支給されません。

下図の株式会社蓮尾産業の求人では「リフト・玉掛け・クレーン」資格に対して「0~6,000円」の資格手当を支給するとあります。

※「リフト」とは、フォークリフトのこと

蓮尾産業社は、福岡県大牟田市で半導体原料の製造を行っている会社です。製造工程の中に、作業員による運搬作業があるため玉掛け技能やクレーン資格が必要になります。

1章で述べたように、玉掛け技能資格は比較的容易に取得できる資格であるため、資格手当を支給してまで取得を促す資格ではありません。したがって、資格手当は支給されても数千円で、支給されない場合も多いです。

年収は業種に左右されやすい

次に、ここまで紹介してきた求人の年収について確認します。最初に紹介した三輪運輸工業社の年収は、求人票に下図のように示されています。

そのほかの会社も同様に年収について求人票を確認すると、下表のようになります。

会社名 提示年収[万円] 業種
三輪運輸工業(株) 300~ 製造(鉄鋼)
上野製薬(株) 350~550 製造(化学)
プライフーズ(株) 350~520 製造(生産用機械器具)
(株)蓮尾産業 301~ 製造(半導体)

この表によると、玉掛け技能資格を条件としている求人の年収は、350~500万円がボリュームゾーンといえます。

しかしながら、年収は会社が属する業種に強く影響することを知っておく必要があります。玉掛け技能資格が活きる職種の多い製造業だと、下表のように平均年収の高い業種と低い業種で2倍以上の差があります。下表は、厚生労働省が発表している賃金構造基本統計調査をグラフ化したものです。

引用:平成30年賃金構造基本統計調査より作成

このグラフによると平均年収の高い業種は、製造業のうち石油石炭製品・化学などです。グラフの左側に示されている業種の求人を積極的に探して採用試験を受けることで、高い年収を得やすくなります

まとめ

ここまで、玉掛け技能資格を活かした転職について解説してきました。

玉掛け技能の有資格者を求める求人は、有資格者数に比べて大変少ないことが特徴です。そこで、転職サイト・転職エージェントを有効活用することが優れた求人に出会う秘訣です。

具体的には、「複数サイトを使って、非公開求人を探す」「転職エージェントに、玉掛け技能資格が活かせる求人を紹介してもらう」などの方法を実践すると良いです。

玉掛け技能資格が活かせる工場の求人は、重厚長大の製品を扱う製造業を探すことが基本です。最もわかりやすいのは、工場の作業員(オペーレーター)の求人です。そのほか、フィールドエンジニアとして働くことも選択肢になります。

また、玉掛け技能資格に資格手当はあまり期待できません。あっても数千円の手当がある程度です。

製造業の平均年収は業種により大きく違うので、資格手当による収入増よりも、平均年収の高い業種へ転職したほうが高年収を得やすくなります

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。