電気系で転職を考えているとき、TOEICや英検などで評価される英語力が生かせると、転職活動を有利に運べると考えたことはないでしょうか。確かに、英語力はあった方が評価されます。

しかし、単にTOEICのスコアが高いからといって安易に、英語力を求める求人に飛びつくとミスマッチを引き起こします。

電気系の求人で、英語力を日常的に求める仕事の主なものは、海外で事業をする仕事、研究職、海外向けの担当部署での仕事です。さらに電気の専門用語を、英語で使える必要があります。

ここに留意しておかないと、望まない転職結果になりかねません。

今回は、英語力を電気系への転職に生かしたいとき、どう求人を探すべきか、またどのような英語力を求められるのかを解説します。

もくじ

電気系の仕事で英語力が求められるのはどのような場面か

電気系の仕事をしていて、英語を生きる場面というのはどんなものがあるのでしょうか。国外で仕事をしていて、英語力が必要になるのは理解しやすいと思います。一方で日本国内での仕事だと、どのような場面で必要になるのかわかりにくいです。

まずは、国内で仕事をしていて英語力が必要になる場面を考えていきます。

海外から問い合わせが来たとき、海外に問い合わせるとき

最も一般的なのは、顧客が海外の人である場合です。もちろん英語のみに限りませんが、英語でやりとりすることが多いです。

実際、私は大手電機メーカーで発電所の機器を設計していた人に話を聞いたことがあります。

この会社は、海外(特にアジア圏)に納品することが多く、納品する途中や、納品した後に問い合わせがたくさんあります。また、アメリカの会社と技術提携をしていて、その分野に関してやりとりはすべて英語です。読む、書く、聞く、話すの4分野について、存分に使っていたといいます。

ただし、海外担当というのが専門にあって、それ以外の部署ではほとんど英語を使うことはないということでした。

次に、私の場合を述べます。私は以前、鉄道会社に勤めていました。鉄道会社の電気の仕事は、国内の会社が相手です。通常の仕事で英語を使うことは、ほぼありません。

しかし、東日本大震災のときに国内の調達先から消耗部品を供給できないことがあり、代わりの調達を海外に求めて英語メールを数多く送りました。そのおかげで消耗部品の調達が間に合い、大規模な運休を出さずにすみました。

この成功例から、今では若手を中心に英語力強化を図っています。ただし、緊急時だけなので日常的に英語を仕事で使っているわけではありません。

また、私の妻は、以前リバースエンジニアリングの会社に勤めていました。普段は国内の企業ばかりを顧客としています。しかし、たまに海外から問合せメールが来るそうです。その問合せメールに、英語で答えることがありました。

このように、グローバル化が進んでおり、仕事のどこかで英語で問い合わせたり、問い合わせが来たりすることはあります。しかし、日常的に英語力を求められる仕事はまだ少ないです。

学会で発表するとき

メールでのやりとりのように、英語で書くことが求められる場合もあります。学会に論文を発表するときです。

電気系の仕事で、関連のある学会は「電気学会」「情報処理学会」「電磁情報通信学会」「原子力学会」などです。

学会で発表する論文は、英語で書かなくてはならないものもあります。

ただし、企業がその学会に所属している必要があります。また、社内に論文の書き手が何人かはいるでしょう。さらに自分が書き手に指名されたとしても、何度も指名されることはまれです。

企業内で研究職についていないときは、論文を書く機会は少ないです。電気系の転職で、工事、建設、設計、製造、保守の分野なら論文発表はきわめてまれです。

研究や開発に携わるとき

反対に、頻繁に論文発表が求められ、または自ら積極的に発表するのは電気の研究職です。

日本が世界のトップを走っている分野であっても、その研究成果を世界に知らしめようとしたら英語が必須です。ましてや、ほかの国の研究が進んでいる分野では、英語で論文を読み、研究し、さらに英語で論文を書くことになります。

また、開発職でも同様です。論文だけでなく、英語の技術ドキュメントを多数読むことになります。技術ドキュメントとは、仕様書、作業手順書、取扱説明書、マニュアルなどです。

電気系の中でも情報(IT)分野では、この傾向が強いです。優れた技術図書はほぼすべて翻訳ものですし、それよりも優れた情報はWEB上に英語で書かれていることが多いです。

さらに翻訳を待っていたのでは、他社に何倍もの差をつけられるほどの速度で情報が更新されています。情報分野で優秀な開発者であろうとすれば、英語は必須といえます。

社内の昇級試験で英語試験があるとき

国内で英語を利用する場合で、最後の一つは社内の昇級試験などに英語の試験がある場合です。

実際に、昇級試験の一つして英語を試験する企業や、TOEICなどの外部試験の結果を昇級試験の資料とする企業があります。それぞれ私の経験を話します。

まず、昇級試験の一つとして英語を試験する企業の例です。財閥系化学メーカーを転職で受験したときのことです。

必要業務経験は下図のように、「英語」など一言も書かれていません。

必須条件の2つには自信がありましたので、意気揚々と面接に挑んだのです。しかし、面接で突然「昇級試験で英語の試験があるけれども、英語は得意ですか?」と聞かれました。「得意ではないですが、学ぶことに意欲はあります」と答えるのが精一杯でした。

後でこの会社(三菱ケミカルエンジニアリング株式会社)のホームページを見てみると、下図のように海外進出支援を売り出していました。

このように海外事業を進めているような会社では、英語試験を課していることがあります。

次に、外部試験を昇級試験の資料とする企業について書きます。

私が以前勤めていた鉄道会社では、20代総合職を中心にTOEIC受験を求められていました。700点とれるまで、受験し続けなければならないという制度です。

鉄道会社の次に勤めたプラント会社でも、TOEIC受験が求められています。鉄道会社の例と同様に、「あるスコアがとれるまで頑張りましょう」という制度です。

このように実務ではなくて、試験として英語を実施している会社があります。

海外赴任するとき

最後に国外で働く場合を解説します。

これについては、英語力は避けようがありません。ただし、赴任する地域によっては、英語以外の言語を学ぶ必要があります。

例えば、日本の企業の多くが工場を展開する東南アジアでは、国によって中国語やタイ語などを使えた方が役に立ちます。

私が以前勤めていた鉄道会社では、ブラジルに社員を派遣するになりました。このときはまず日本で、ポルトガル語を3ヶ月学ばせてから赴任させています。

海外赴任するときは、英語に限らず、赴任先にあった言語が必要ということになります。

海外展開している大企業やそのグループ企業を狙う

それでは実際に、これらの4つの場面「海外とのやりとり」「学会論文」「研究や開発に携わる」「社内昇級試験に英語がある」「海外赴任」はどの程度あるのでしょうか。

まずは、電気系の求人のどれくらいが英語力を求めているのかを調べてみましょう。下図は転職サイトで「電気」をキーワードにして検索した結果です。

9,500件の求人があることがわかります。次に下の図は「電気」と「英語」をキーワードにして検索した結果です。

今度は2,000件ほどの求人があることがわかります。これらから、電気系で英語力を求めている求人は、電気系全体の求人数のおよそ20%程度ということになります。

ただし、「電気」「英語」で検索した結果には、「英語不問」というような英語力を求めていない求人も若干含まれています。したがって、電気系で英語力を求める求人の割合は20%よりもさらに小さくなります。

では、「電気」「英語」で検索した求人は、どのような会社が出しているものでしょうか。

多くは、海外に事業所がある、または海外に顧客がある大企業です。さらには、そのグループ企業も含まれます。

反対に、大企業のグループ企業でない中小企業は少ないです。

実例を見てみましょう。下図が電気の研究職の求人例です。

この企業は東証一部上場の総合電気メーカーです。【1】~【7】までの1つ以上の分野で、高い専門知識を持っていることが前提で、さらに英語力(TOEIC650点以上)を求めています。

高い英語力を求める求人ばかりではない

一方、英語を求めている20%の求人は、英語必須の条件ばかりではありません。下の図は、「電気」「英語」で検索した企業(機械部品メーカー)の、「対象となる方」欄の記載です。

この求人は技術営業職を求めるものです。技術営業ですので、ユーザーと社内の技術者の間を取り持って、通訳をする仕事です。

機械部品については素人のユーザーが、玄人の社内の技術者と直接話をしてもかみ合いません。そこで技術営業職の出番です。難しい技術の言葉を、易しい言葉にしたり、たとえ話を使ったりして、ユーザーにわかりやすく伝えます。

また、ユーザーが漠然と考えていることを、自社の製品を使ってどう実現するかというのを、技術者の力を使って作り上げ、ユーザーに提案します。

このような職種であるため、必須条件は話が好きであることです。これとは別に、さらに歓迎する条件として英語が好きな方を募集しています。しかも求めているレベルが中学生レベルです。

また、下の図は別の企業(自動車部品メーカー)の「対象となる方」欄の記載事項です。

この求人では、海外で工場ラインの設計を任せたいと募集要項にあるので、英語力がある人を優遇しています。

英語力に加えて、重要な電気の能力

このように、電気系の転職において英語力は、評価の補助的な意味が強いです。電気の技術者として採用されるので、最も重要な能力は技術力なのです。

英語力はコミュニケーションの一つです。したがって、コミュニケーションをとる対象があって必要になる能力です。

事業の根幹をなすのが電気で、英語はひとつのツールです。つまり、優先度は英語よりも電気の技術力の方が高くなります

研究職や開発職に応募する方は、英語力も電気の技術力も自信があるでしょうから特に問題ありません。

注意したいのは、「電気はあまり得意ではないが、英語なら得意」というケースです。仕事では電気の技術を英語で説明することが求められるので、電気の技術分野でかなりの努力が必要になることを覚悟しましょう。

そこで、技術的な英語力の不足を補う、技術力を紹介します。ここでは最低限のものを3つ書きます。それは「図面が読め、描ける」「数学力がある」「制御器具番号を覚えていて使いこなせる」です。

この3つの能力が十分に備わっていれば、英語が得意で電気の技術力に自信のない場合でも、大きくつまづくことはありません。

図面が読め、描けるべき

1つ目は、図面が読め、描けることです。電気の図面は、機械図面と違って回路図、ブロック図、ロジック図などの、目で見えないものをわかりやすく図面上に表現したものが多いです。

回路図は、電気回路を図示したものです。電気回路は、電線やスイッチで構成されるので、目で見えるようにも思えます。しかし、建築系の電気回路は、工事でほぼすべて壁の裏や天井の上に隠れて見えなくなります。

また電化製品でも、筐体の中に小さく納められて外から見ることはできません。下の写真は、電子回路の基板です。

例えばパソコンを開けるとマザーボードがあり、上の写真のようなものが入っていることを確認できます。基板だけを見ても、どの部分がどのような機能を持っているかはわかりません。

これをわかりやすく描いたものがブロック図です。図中の四角(ブロック)が機能を表しており、それぞれの機能がどのように関わっているかを描いています。下の図に、パソコンのマザーボードのブロック図(例)を示します。

このような図面を示し、顧客や社内の技術者など関係者と、技術的な話ができることが重要です。

数学力がある

2つ目は、数学力です。電気は目に見えませんので、その挙動を数式で表します。

電流がどれくらい流れるのか。電圧はどれくらいかかるのか。機械ものは実際に作ってみないとわからないところがありますが、電気はあらかじめ計算することができます。

そして数式は世界共通です。図面で使う図記号は国によって違いがあるものも多いです。しかし数式は共通なため、曖昧な図面であっても、数式と片言英語によりデバイスの名称を英語で表現できれば通じます。下手な英語で延々と話すよりも、図を描き、数式を示したほうがより伝わるのです。

これは日本語でも同じです。口で長々と説明されるよりも、先ほどのようなポンチ絵を描いて数式を示してくれたらすぐに理解できることはよくあります。

このように、電気系の技術者では特に、数式で表現できることが重要な能力です。

制御器具番号を覚えていて使いこなせる

3つ目は、制御器具番号を使いこなせることです。制御器具番号とは1~99までの数字に遮断器や断路器などの機器を割り振ったものです。日本電気工業会がJEM 1090に定めています。別名、「デバイスナンバー」「シーケンス番号」「機器番号」などということもあります。

全部覚える必要はありません。携わる設備によって、使われるものは変わります。私が以前勤めていた鉄道会社では、全部で30~40個を使っていました。そのうち頻出するのは10個未満です。

よく出てくるものは最優先で覚えて、後は必要の都度覚えていきます。あまり使わないものは、その都度資料を確認して使っても問題ありません。

下の写真は、私の手帳です。

手帳に、制御器具番号と対になる機器、機能をまとめたものです。私はこれを自分で作って、必要の都度見返しています。

この制御器具番号は世界共通です。つまり、交流遮断器を英語で言えなくても、「52」と英語で言えるか、書ければ、電気の技術者には通じるのです。

以上の3つの力があれば、技術的な英語力の不足を補うには十分です。

まとめ

ここまで見てきたように、電気系の仕事で英語力を求められる場面は確かにあります。しかし、その数は多くありません。英語力必須のものは、研究職や開発職を中心としたごく少数です。

また、英語力を求めている企業も、救済措置があったり、求めるレベルが低かったりします。電気系の転職で重要なのは英語力よりも、電気の技術力です。

この点に注意して、自分の電気の技術力はどのくらいなのかを十分に認識したうえで、転職先の企業を選ぶとよいです。


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