個人の通信環境やコンピューターの性能が充実してきて、テレワーク(在宅勤務)が一般的になってきました。あなた自身か、あなたの身の回りの誰かが「リモートワークを経験した」というのは珍しくないでしょう。介護や育児などの家庭環境の都合により、転職で在宅勤務を希望する人も多いです。

では、電気系技術者が在宅勤務で働くには、どのように転職活動を進めたら良いでしょうか。これは、職種を絞って探すのがセオリーです。あなたが、リモートワークができる職種にマッチするかどうかが転職成功のキーになります。

ここでは、電気系技術者がリモートワーク・テレワークを実現する職種の考え方に注目して、詳しく解説していきます。

もくじ

在宅勤務(テレワーク)ができる電気系職種の条件を知る

在宅ワークができる求人を探すときに、「在宅」「テレワーク」「リモート」などをキーワードに求人を探すのも一つの手段です。しかし、あまり効率が良い方法とは言えません。

電気技術者で在宅勤務ができるのは、職種が限られています。したがって、どのような職種で在宅勤務が可能なのかを先に押さえておくと、優れた求人に出会いやすくなります。

在宅ワークが可能な職種は、「成果物を通信手段によって納めることができる職種」です。具体的に言うと、設計書、図面、積算、プログラムなどを納める職種が該当します。

注意しなければいけないのは、テレワーク可能の判断は、「職種」ごとに行われるということです。「職種」とはあなたが実際に働く役目のことです。会社の業種ではありません。

会社の中でも、複数の職種があります。同じ会社の中で、テレワークできる職種とできない職種があります。下図は、製造業の会社を例に、職種別でテレワークのしやすさを表したものです。緑の枠で示した職種が、電気系技術者が就くことが多い職種です。

以前私が勤めていた鉄道会社は、一部社員に在宅勤務を導入しています。電気系職種で言うと、工事設計職や非現業部門職が対象です。電気設備保全をしている現業部門の職種は対象外です。設備は自宅にはないので、在宅勤務しようにもできないからです。

以上を踏まえた上で、ここからは具体的な求人例を示しながら解説していきます。

電気製品設計(ソフトウエア含む)は在宅勤務しやすい

まず、仕事の成果物が、設計書や図面、ソフトウエアなどである職種は在宅勤務しやすいです。電気製品の設計は、在宅勤務しやすい職種の一つです。

具体的な例を出すと、下に示す株式会社小松製作所の求人が該当します。小松製作所は、石川県小松市に本社を置く建設機械のトップメーカーです。この求人では、建機の電装設計や車両回路設計職の人材を募集しています。

この求人の勤務地の欄を見ると、リモートワークを導入していると記載されています。

成果物がWEBネットワークや郵送で、社内社外を問わずに提出できる職種は、在宅勤務しやすいです。仕事の指示も対面で行う必要がなければ、なお在宅勤務しやすいといえます。

電気製品設計職は、もっとも在宅勤務しやすい職種の一つです。

電気工事設計は工事会社か建設コンサルなどの求人を探す

次に紹介するのは、工事設計職です。工事設計職は、単一の製品ではなく、プラントやビルディングなどの電気設備を設計する職種です。この職種の募集は、工事会社(サブコン、ゼネコンなど)や建設コンサルタントから募集されることが多いです。

例えば、下に示す求人は、神奈川県横浜市の会社である株式会社空観エンジニアリングの求人です。工事設計職として、在宅勤務メインであることが記載されています。

工事設計職で在宅勤務を希望する場合、注意点があります。それは、完全在宅勤務(フルリモート)が難しいということです。空観エンジニアリング社の場合も、「基本的に」在宅勤務スタイルと記載されています。例外がありうるということです。

また、この求人で募集されているのは設計だけでなく監理を行う職種なので、工事監理を行うときはクライアント先に出張すると記載されています。

建物新設の場合でも、電気工事は建物の躯体工事が完成してから始まります。当初設計では、電気工事を施工する対象は図面の中にしかありません。設計者はイメージの中で電気工事設計を、「一旦」完成させます。

次に実際に電気工事が開始したら、施工現場を確認する必要があります。なぜなら、建築工事完成前のイメージと完成後の実物が一致していないことがたくさんあるからです。

下の写真は、駅の改良工事で、内装工事や照明工事が終わったあと、これからデジタルサイネージを取り付ける電気工事施工の直前の様子を写したものです。この場合だと、「サイネージの位置が低すぎてゴミ箱で隠れる」「サイネージが照明を反射してよく見えない」「サイネージ裏側配線が躯体と干渉する」などの課題が出てきがちです。

私の実経験でいうと、「ケーブルを通すルートがなくコンクリートの壁をコア抜きする必要があった」「盤を置く床面の耐荷重が足りず、架台底面積を増やした」など、次から次に施工上の課題が出てきました。これらは、現地確認しながら設計変更しました。

新設工事の場合だけでなく、既設設備の改良・更新工事でも同様です。すでに現物があるので、まず現物を現地で確認してから設計が始まります。また、施工中に課題が出てきたときの現地調査は、新設のときと同じです。

このような現地調査は、設計者も同行することが多いです。現地調査は在宅ではできません。現地調査の頻度は、工事により様々です。まったく現地調査が発生しないこともあれば、頻繁に現地調査の必要なときもあります。

したがって、あなたが「どこまで在宅勤務でなければならないと考えているか」が転職の選択基準になります。フルリモートワークでないとだめなら、この職種は選択の余地はありません。一方、「週のうち何日かが在宅勤務できれば良い」ということであれば、十分に選択できる職種です。

CADオペレーター・電気工事積算も在宅勤務できる

同じく、設計に関係する職種で、CADオペレーターや電気工事積算職も在宅勤務が可能な職種です。CADオペレーターは電気製品設計でも電気工事設計でも求人があります。

実際の求人でいうと、下の株式会社ラックランドの求人が該当します。ラックランド社は在宅勤務が可能な求人として、CADオペレーターの人材を募集しています。

勤務地の欄にも、下図のようにフルリモート・在宅勤務が相談可であることが明記されています。

CADオペレーターは、電気製品や電気工事の図面を、CADソフトを使って作成する職種です。電機メーカーや電機メーカーに人材派遣している会社、電気工事会社から募集されやすいです。

また、電気工事積算職は、電気工事の工事金額を算出する職種です。電気工事会社や建設コンサル会社のほか、自社で工事発注業務を行う会社で募集されやすい職種です。下図は、高圧一括受電支援サービスの先駆け企業であるアイピー・パワーシステムズ株式会社の求人です。積算業務を含む管理業務が多い職種です。

アイピー・パワーシステムズ社のリモートワーク可否について記載を確認すると、下図のように相談可と記載されています。

これらの職種で在宅勤務の求人が出やすい理由は、仕事の成果物が設計書や図面、ソフトウエアなどであるという点です。これは、最初に紹介した電気製品設計職と同じです。

在宅勤務(テレワーク)求人の落とし穴

このように、在宅勤務の求人を探すなら、まずあなたが希望する職種が在宅勤務可能かを知る必要があります。これはトレード・オフの関係にあるので、在宅勤務不可能の職種で在宅勤務の求人を探しても絶対に見つかりません

在宅勤務可能かどうかを見極めるには、「仕事の指示と仕事の成果物の提出が通信手段を用いてできるか」が重要な要素だと解説しました。もうひとつ在宅勤務が可能であるかどうかの重要な点があります。

それは、「あなたが在宅勤務に価値を見出しているか」ではなく「経営者が在宅勤務に価値を感じているか」です。

在宅勤務で、従業員が得られるメリットはいくつかあります。一方、デメリットらしいデメリットはありません。では、会社側にとってのメリット、デメリットは何があるでしょうか?

会社側のメリットとしては、「支給している交通費分の経費圧縮」「社員満足度の向上」「優秀な人材の確保」などです。デメリットとしては、「コミュニケーションコストの増大」「情報セキュリティリスクの増大」「実績が少なく仕事の品質確保できるか不透明」などです。

メリット デメリット
従業員 ・通勤時間がなくなる

(自由な時間が増える)

特になし
会社 ・経費圧縮

・優秀な人材を確保できる

・社員満足度が上がる

・コミュニケーションコストが増える

・情報セキュリティリスクが増える

・仕事の品質が下がるかも

在宅勤務に消極的な会社では、特にコミュニケーションコストの増大が社内の抵抗になっていることが多いです。具体的に言うと、対面であれば手書きの資料を渡して口頭で説明すれば仕事の指示が済んだものが、リモートワークになるとメールやチャットツールを介して指示することが必須であることが挙げられます。

仕事の指示を出す中間管理層が、キーボード操作中心でパソコンに習熟していないと中間管理層に仕事の負荷が集中します。私も、一時期リモートワークの経験があります。しかし、上長からの指示が遅くて全く仕事が進みませんでした。

このような場合、いくらあなたがリモートワークに十分な能力を持っていて、会社もリモートワークにより生産性向上が見込めるとしても、会社はリモートワークに消極的になります。過去にリモートワークを実施した会社でも、続々とリモートワークを取りやめたのはこのような理由があるからです。

したがって、求人票に「在宅」の記載があったとしても、会社側の本音を見極める必要があります

「在宅勤務」のキーワード検索でヒットしても求人内容をよく確認すること

実際に「在宅勤務」をキーワードにして、求人検索してみるとどのような結果が得られるでしょうか。例えば、下図のように求人欄には、「テレワークの導入」「在宅勤務」と記載されている求人が多いです。この求人は、会社名は伏せますが再生可能エネルギー関連の電気会社の求人です。

この会社からは、別の職種として投資計画を担当する職種の求人も出されていました。この求人票で在宅勤務の記載を確認してみました。結果は、下図の通りで、在宅勤務・リモートワークが相談可になっています。

1つ目の職種の仕事内容には発電所の建設・運営の現場監理が謳われていました。このことから在宅勤務可能と言うのは、在宅勤務可能の条件「仕事の指示と仕事の成果物の提出が通信手段を用いてできるか」ということと照らし合わせると、考えにくいです。

つまりこの会社の在宅勤務の記載は、会社全体の取り組みのことと考えられます。会社全体で「在宅勤務可能な職種もある」ということを示しているだけで、「求人票で募集している職種で在宅勤務が可能である」ことを示しているわけではありません。1つ目の電気系技術職を募集している求人は、在宅勤務に消極的な例といえます。

在宅勤務を積極的に採用しているなら、下に示すテルモ株式会社のように在宅勤務の具体例を記載するはずですテルモ社は、大手医療機器メーカーで、この求人は静岡県の工場の電気設備技術者を募集する求人です。

求人票を探すときは、このような点に注意して、在宅勤務に積極的な会社を探す必要があります

あなたは本当に在宅勤務を望んでいるのか?

最後に、在宅勤務の求人を探すなら、自分に今一度問いかけてほしいことがあります。それは、「あなたが転職先を選ぶいちばん大切な要素は在宅勤務ですか?」ということです。

私は、これまでに友人や後輩から転職の相談を受けたことがあります。その中には「在宅勤務したい」というものもありました。しかし、在宅勤務を希望する本心を聞いてみると「もっと自由な時間がほしい」というものでした。

自由な時間がほしいだけなら、「残業がほぼない会社」「自宅から近い会社」「勤務時間が短い会社」も選択肢に入ります。在宅勤務が可能な求人は多くなく、「在宅勤務」と選択肢を絞ると、無用に転職成功を難しくするだけです。

反対に、どうしても在宅で仕事をしなければならない理由もあります。例えば、育児や介護をしながら収入を確保しないといけない場合などです。育児や介護をサポートするサービスを受けられないなら、なおさらです。

このように在宅勤務の動機が強く、明確な場合は、転職エージェントサービスを使って求人を探すことをおすすめします。転職エージェントサービスを使う利点は2つあります。それは、以下の2点です。

  1. 在宅勤務に消極的な求人を、あらかじめ避けられること。
  2. あなたが知らない企業の求人を紹介してもらえる可能性が高いこと。

転職エージェントは、求職者であるあなただけでなく、企業側の人事担当者と直接話をしています。私の会社にも大手転職サイトの営業の人が訪問してきたのを目撃したことがあります。つまり、転職エージェントは企業側の思惑を知っているので、在宅勤務に積極的かどうかも知っています

また、転職エージェントは求人探しのプロでもあります。あなたが気づいていない優れた求人を紹介してくれる可能性があります

下図が、手に入れられる求人の範囲をベン図で示したものです。あなた一人で探せる求人の範囲が薄い青色、転職エージェントが探せる求人の範囲を薄い緑色で示しています。これらは重複する部分もありますが、転職エージェントが探せる求人数のほうが多いです。

また、探せる求人の中でもあなたにマッチした優れた求人は一部です(ベン図の中で薄い橙色と橙色で示した部分)。転職エージェントは、橙色部分で示したあなたが一人では探し当てることのできない優れた求人を紹介できる可能性があります。

以上、在宅勤務を望む理由を明確にし、適切に他者の力を借りることで、あなたは転職成功しやすくなります。

まとめ

在宅勤務の電気系職種への転職方法を解説してきました。

電気系職種で在宅勤務を実現するには、在宅勤務が可能な職種を探す必要があります。そもそも在宅勤務が不可能な職種を探しても、あなたが望む求人は見つかりません。在宅勤務な職種の条件は、「仕事の指示と仕事の成果物の提出が通信手段を用いてできるか」ということです。

この条件に合う職種は、電気製品(ソフトウエア含む)設計、電気工事設計、CADオペレーター、電気設備積算などの職種です。これらの職種で、在宅勤務ができるかどうかを探すのがセオリーです。

在宅勤務の求人を探す上でもうひとつ重要な点は、「会社が在宅勤務に積極的かどうか」です。従業員がテレワークで被るデメリットはほぼないのに対し、会社側にはテレワークのデメリットが多数あります。会社側には、このデメリットを超えるメリットが感じられないと、在宅勤務を積極的に採用しません。

以上を踏まえた上で、在宅勤務の電気系職種を探すときは、「働き方における在宅勤務の優先度」をしっかり整理してください。在宅勤務が最優先事項ならば、引き続き在宅勤務の求人を探してください。そのとき、転職エージェントサービスを使うと優れた求人を見つける可能性が高くなります。


技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。

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