第2種電気主任技術者資格は、特別高圧(特高)のうち50~170kVを扱うのに必要な資格です。この規模の電気設備があるのは、各種発電所のほか、大規模な工場、鉄道、大型ビルなどです。電験二種資格を活かせる求人は、このような設備を持つ会社が対象になります。

では、実際の求人はどのように募集されているのでしょうか? たくさんの求人があり、選び放題なのでしょうか? また、年収などの待遇はどれくらいが期待できるのでしょうか?

実は、求人の探し方を間違えると転職に苦労することになります。また、異業種への転職も可能な資格ですが、転職先の業種をよく調べずに転職すると後悔することに繋がります。

ここでは、私が実際に電験2種資格を活かして転職活動した経験を踏まえて、転職活動の実際について解説します。具体的には、「電験2種資格が評価される業種と探し方」「再生可能エネルギー業界の求人」「年収について」「待遇の確認方法」について説明します。

もくじ

第二種電気主任技術者資格が評価される求人を選ぶこと!

第二種電気主任技術者資格を活かせる求人を探すときは、転職サイトで検索すると容易に求人が見つかります。例えば、大手転職サイトのdodaで「第二種電気主任技術者」をキーワードにして検索すると、下図のように53件の求人が見つかります。

また、キーワードを「電験二種」「第2種電気主任技術者」というように変えると、違う検索結果になります。下表は、検索キーワードとヒットした求人の数です。

検索キーワード ヒット数[件]
第二種電気主任技術者 56
第2種電気主任技術者 36
電験二種 2
電験2種 3

このようにキーワードにより、検索結果が大きく変わります。この検索結果は、全国で100件という数なので決して多い求人数とは言えません。求人を探す際は、この実態を踏まえた上で、工夫しながら探す必要があります。

そして求人が見つかったからと言って、電験2種が活かせるかどうかはわかりません。求人票の記載を十分に確認する必要があります。

キーワード検索でヒットした求人の中には、「第二電気主任技術者資格の有資格者を欲している求人」ばかりではなく、「第三種電気主任技術者資格があれば十分だけれども、第二種電気主任技術者資格を保有している人材が応募してもいい求人」があります

例えば、下図のサンアグロ株式会社の求人が該当します。サンアグロ社は、東京に本社がある総合農薬関連会社です。この求人では、大阪工場の電気設備技術者を募集しています。

サンアグロ社大阪工場は関西電力から6.6kVで受電しているので、電験3種資格があれば十分です。しかし、電験資格は上位資格を持っていると下位資格の取扱範囲も扱えるので、電験2種以上の資格保有を歓迎条件にしていると考えられます。

したがって、電験2種資格を持って入社したとしてもオーバースペックです。仕事で50kV以上を扱うことがないので、物足りないと思うかもしれません。

一方、サンアグロ社と同じ製造業で、工場の電気設備を保全する職種では、下図のような住友重機械工業株式会社の求人があります。住友重機械工業社は、住友グループの総合機械メーカーです。この求人では、愛知県にある名古屋製造所で働く人材を募集しています。

名古屋製造所は、中部電力から77kVで受電しています。したがって、求人票に「第三種(以上)電気主任技術者」を必須条件として記載されているのは、「最低でも電験3種を持っていて、将来電験2種以上を取得できる人材がほしい」という意味です。

もちろん、電験2種資格の保有者が採用できれば、それに越したことはありません。しかし電験2種資格の保有者数は、電験3種資格保有者の10分の1以下です。つまり、電験2種資格保有者に絞って採用活動をした場合、採用が成功する確率が極端に小さくなります。

そこで、社内での教育・支援・実務経験を前提として、電験三種保有を最低条件としているのです。したがって、このような会社で電験2種資格持って採用試験を受ければ歓迎されます。

また、この求人では応募条件の学歴が大卒以上とされています。しかしながら、電験2種は大卒でも容易に取得できる資格ではありません。仮に高卒で電験2種を持っているとしたら、学歴が条件に満たなくても採用される場合があります

私は、電験2種を持って転職活動をしたときに、学歴条件が満たない求人でも内定を得たことがあります。学歴が満たなくても採用されるかどうかは、応募してみないことにはわかりません。学歴は気にせずに応募してみることで、転職成功する可能性を高めることができます

求人票以外で電験2種有資格者が必要かどうかを知る

このように求人票を読むときには、電験2種資格がどのように必要とされているのかを読み解く必要があります。

なお、事業所が受電している電圧を知るには、直接事業所に行ってみて確認すると間違いがありません。下の写真のように、事業所の受電用設備を見れば、何Vで受電しているかわかります。ちなみに、このブリヂストンの工場は66kV受電です。

あなたが応募したい求人の事業所が近くにあればよいですが、遠方にあり難しいことや地中ケーブル受電で外部から確認できないこともあります。そのようなときは、Google MAP(ストリートビュー)や電力会社の送電系統図を確認してもよいです。

送電線の電圧を確認するとき、私は懸垂がいしの数を確認します。送電線の敷設状況によって変わるものの、概ね懸垂がいし1個につき10kVです。

そして、日本で使われる電験2種資格が必要な電圧域の送電電圧は、66、77、110、132、154kVです。つまり、7~16個くらいの懸垂がいしが使われていたら電験2種資格が必要な送電系統と判断できます。

例えば、下の写真なら7個の懸垂がいしが使われており、九州電力管内なので、66kVと判断できます。

以上のような事前確認をしておくことで、あなたが希望する会社で第二種電気主任技術者資格の有資格者がどのように扱われるのかを判断しやすくなります

電気主任技術者選任前提の求人は少ない

第2種電気主任技術者資格が活かせる求人と言っても、電気主任技術者に選任される求人はあるのでしょうか。これは、わずかながらあります。例えば、下図のような求人です。

この求人は会社名が非公開ですが、三菱マテリアルグループの会社で、千葉県成田工場の設備保全を担う人材募集です。

求人票の記載にある通り、第二種電気主任技術者資格の保有者がいないために緊急で募集されています。ほかの事業所からの有資格者を応急的に選任していますが、将来的には自らの事業所で電気主任技術者を選任する必要があるので、そのための求人です。

このように、電気主任技術者選任前提の求人が募集されるのは、以下の3つのケースです。

  1. 電気主任技術者が何らかの原因で不在になった会社
  2. 近い将来、電気主任技術者が不在になる可能性が高い会社
  3. 新規に電気主任技術者が必要な事業を始める会社

1のケースは、ほとんどないケースです。なぜなら、既に事業を行っている場合、電気主任技術者が不在になることは、事業所で電力を使えないことを意味するからです。つまり、事業停止とほぼ同じことになります。

したがって通常は、事業所で電気主任技術者が途切れなく選任できるように、複数の電気主任技術者の有資格者を育成します。また、一つの会社で複数の事業所を持つ場合は、ほかの事業所から社員を異動して対応することが多いです。これは、事業所を追加で新設した場合も同様です。

2のケースは、1のケースに陥らないように計画的に採用する場合です。現在選任されている電気主任技術者が、定年が近いなどの理由で近い将来に退職が見込まれるとき、あらかじめ電験有資格者を採用しておくことがあります。

私が転職したときの例を示します。私が勤める電力プラントでは、電験2種資格者を選任する必要があり、私が入社したときには65才を超えたシニア層の電験1種資格者が選任されていました。そのときの求人票の一部は下図のとおりです。

将来的に、電験2種以上の資格を持って電気主任技術者として選任される前提です。しかし、第1種、第2種電気主任技術者資格は歓迎条件とされています。

このように、2のケースでも入社後すぐに電気主任技術者に選任される求人ばかりではありません

そして、この1と2のケースの求人が出ることは珍しいです。さらに、事情は様々なので狙って求人を探すことはできません。もし、あなたの希望する条件に近い求人があれば、チャンスを逃さず応募することが大切です

3のケースは、今まで電験2種以上の資格者を選任する必要のなかった会社が、新しく50kV以上の電気工作物を設置する場合です。新電力が発電所を新しく建設する場合に多い求人です。

このケースの求人は、情勢により数年~十数年のトレンドがあるため、その間は新規で電気主任技術者に選任される求人が出やすいです。次項以下に述べる再生可能エネルギー関連が該当します。

以上のように、電験2種を活かして転職するときは、転職後すぐに電気主任技術者に選任される求人は少ないです。多くの求人が、設備保全・管理などの職種で募集され、将来的に電気主任技術者に選任されることもある求人ということを知っておきましょう。

太陽光発電所の電気主任技術者の求人は減る

太陽光発電所は、電験2種資格者を電気主任技術者として選任すべき代表的な施設の一つです。下の写真のように、メガソーラーと呼ばれる太陽光発電所では、第2種電気主任技術者が必要なことが多いです。

メガソーラー発電所では、下の写真のように66kVや77kV送電系統に接続され、規模が非常に大きなものになります。

このような太陽光発電所が計画途中のものも含めて爆発的に増えたため、電験2種資格者への需要も高まりました。

ただし、これらの需要増はFIT制度(電力固定買取制度)によるところが大きいです。FIT制度は2010年代後半に改正され、太陽光発電所は、新規建設が事実上規制されることになりました。

したがって、新設が一通り終わったあとは、前項の2のケースである電気主任技術者の入れ替え需要が主になります

太陽光以外の再生可能エネルギー業界では需要増

太陽光発電所以外の再生可能エネルギー業界(バイオマス・風力)は、これからも需要が伸びる将来性のある業界と言われています。経済産業省は2045年に向けて再生可能エネルギーで電験2種資格者が必要な施設増と、第二種電気主任技術者不足を予想しています。

したがって求人も探しやすく、例えばバイオマス発電所の電気主任技術者選任の求人だと、下図の株式会社V・Tエナジーマネジメントの求人があります。この求人では、岩手県のバイオマス発電所に勤務する人材を募集しています。

風力発電所だと、下図の株式会社ユーラステクニカルサービスの求人が該当します。ユーラスエナジーHDグループとして北海道・青森・秋田・岩手を中心に風力発電所を運営しており、この求人はその風力発電所の電気主任技術者選任の求人です。

再生可能エネルギー関連の求人は、これらに類似した求人のほか、設備管理・保全の職種に応募することができます。電験2種を取得していて、設備保全の実務経験があればなおよいです。

私は、発電関係が未経験でも発電所に転職できました。あとから採用に関わった上長に話を聞くと、電験2種を持っていたことが有利に働いたということです。業種や職種の実務経験なしでも、積極的に応募してみるとよいです。

年収は業種によるところが大きい

では、電験2種が条件にある求人の年収はどれくらいなのでしょうか。1章で紹介した住友重機械工業社の年収は、下図のように500~900万円と提示してあります。

同様に、ここで紹介した求人の提示年収をまとめたものが下表です。

会社名 提示年収[万円] 条件 業種
住友重機械工業(株) 500~900 電験3種以上必須
電験2種必要な事業所
製造業(汎用機械器具)
サンアグロ(株) 300~500 電験2種歓迎
電験3種必要な事業所
製造業(化学)
非公開求人 417~717 電験2種必須 製造業(生産用機械器具)
(株)V・Tエナジーマネジメント 500~900 電験2種必須 その他事業サービス
(株)ユーラステクニカルサービス 400~700 電験2種必須 その他事業サービス

これによると、概ね400~700万円がボリュームゾーンと言えます。また、電験2種資格者が必要になる主な業種は、製造業、電気供給業、ガス供給業、電気保安業、鉄道業、事業サービス(O&M、ビルメン)などです。

実は、年収は業種に左右されやすいため、平均年収の高い業種に転職したほうが年収アップしやすくなります。業種ごとの平均年収は、厚生労働省が公開している賃金構造基本統計調査を参考にすると良いです。 

引用 : 令和元年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)をグラフ化

このグラフによると、40代以上になると年収は2倍以上差が開きます。業種の選択を誤ると、生涯賃金が下がることを知っておきましょう。

また、V・Tエナジーマネジメント社とユーラステクニカルサービス社は、事業サービス業に属するのに求人票の提示年収が高いです。これは、この2社が提供している事業サービスが電気供給業に属しており、電気供給業に長けた人材を集めているためです。

つまり、電気供給業の水準で給料をもらっていた人材を集めるので、事業サービス業に属しながら業界の水準を大きく超えた提示年収になります。

ビルメンテナンス業の会社の場合は、事業サービス業の平均年収が参考になります。

採用試験時に電気主任技術者の待遇を確認する

なお、会社によっては電気主任技術者の待遇(職位・給料など)が低い場合があります。電気主任技術者に選任されると、事業所の電気工作物に対してすべての責任を追うので、その責任に見合った待遇で転職したいと考えているのではないでしょうか。

私が勤めていた鉄道会社では、電気主任技術者に選任されるのは指定職の課長級(200人くらいの組織の長)以上でした。また、今勤める電力プラントでは、技術部門のNo.2が電気主任技術者です。もちろん給料も良く、年齢が高いこともあり1,000万円前後の年収があります。

電気主任技術者に選任されるなら、これくらいの職位と給料があると仕事に対して情熱も湧くのではないでしょうか。

しかし、求人の中には都合よく電験資格者がほしいと思われる求人もあります。名前は伏せますが、下図の求人表では「電気主任技術者」として募集していながら、業務内容は一般作業員に求められる業務と変わりありません。

電気主任技術者は、電気工作物の工事・維持・運用の管理監督することが主な仕事です。管理監督業務には一定の権限が必要であり、それに伴い責任も増すので給料に反映されるのです。

この求人票の記述では、「電気主任技術者として責任を負わされながら、給料は一般社員並みではないか」と思えます。

電験2種資格を持ってそれなりの待遇を求めるなら、このような求人は避けるのが無難です。しかし、求人票ではうまく装っている場合があります。そのようなときは、採用選考を通して待遇を確認することが大切です。

採用選考では、ほとんどの場合、面接などで企業に対して質問をする機会が設けられます。そこで、以下のような質問をして待遇を確認すると良いです。

  • 現在の電気主任技術者は、どのような立場で、どのような権限を持って業務を行っているか。
  • 電気主任技術者が業務を遂行する上で、組織としてはどのように取り組んでいるか。

1つ目の質問をすることで、電気主任技術者の職位がわかります。職位がわかれば、提示年収と合わせて収入も推定できます

2つ目の質問で、電気主任技術者が実質的に組織の上位職にあるかどうかがわかります。電気主任技術者が、名目上の職位だけで業務は一人で行っているかどうかを推し量ることができます

これらの質問をして、あなたが納得できる回答を得られるかどうかが転職に満足できるかどうかに直結します。もし、質問する場面がない場合は、転職エージェントなどを通して必ず確認しておくことをおすすめします。

採用試験は、企業があなたを選ぶ場所であると同時に、あなたが企業を選ぶ場所でもあります。転職後に後悔しないためにも、質問の機会を通して待遇を確認すると良いです。

まとめ

第二種電気主任技術者資格を活かせる会社に転職成功するには、その会社が電験2種資格の必要な事業所を持っていることを確認しなければなりません。これを怠ると、オーバースペックであなたの能力を十分に活かすことが難しくなります。

事業所で電験2種有資格者が必要かどうかは、事業所の受電設備を確認すればわかります。応募段階で確認しておくとよいです。

再生可能エネルギー業界は、電験2種資格が活かせる業界の一つです。ただし太陽光発電は、2020年以降電気主任技術者の大きな需要増は見込めません。一方、バイオマス発電や風力発電で、将来的に第二種電気主任技術者の需要増が見込まれています。

ただし、電気主任技術者として選任されることが前提の求人は多くありません。設備保全・設備管理職として転職し、将来電気主任技術者として選任される求人が多いことを理解しておきましょう。

電験2種資格が必要・歓迎される求人の年収は、400~700万円程度がボリュームゾーンと言えます。ただし、業界により提示年収に幅があるので、政府統計などを利用して平均年収の高い業種に積極的に応募することで年収アップしやすくなります。

なお、年収や職位などの待遇については、選考過程を通して適切な質問をすることにより必ず確認してください。これにより、転職失敗を防ぐことができます。


技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。

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