モノやエネルギーを生産する工場で、生産に直接関係する設備と同様に重要な設備がユーティリティ設備です。ユーティリティ設備は間接的に生産に寄与する設備とはいっても、停止すれば生産に影響が出ます。

しかしながら、工場の花形設備ではありません。そして、ユーティリティ設備に携わる職種も裏方に回ることが多いです。反面、業種をまたいだどの工場でも類似の設備があり、転職してもすぐに戦力になれる職種でもあります。

では、工場のユーティリティ設備に携わる求人はどのように探せばよいでしょうか? 必要な資格やスキルなど、注意すべき点はあるのでしょうか?

ここでは、「ユーティリティ設備管理・保全の求人例」「必要な資格やスキル」「年収の考え方」について詳細に説明します。

ユーティリティ設備は工場によって違う

工場におけるユーティリティ設備を管理する仕事の求人は、転職サイトを利用して「工場 ユーティリティ」をキーワードで探せば比較的多くの求人が見つかります

例えば、大手転職サイトのdodaを使って検索すると、下図のように121件の求人がヒットしました。

一般にユーティリティとは、当該の工場が生み出す製品やエネルギーの原材料ではないものを扱う設備を指します。具体的には、下記に示すものを指します。

  • 給排水設備
  • 電気設備(受変電、配電)
  • 蒸気設備(蒸気発生、送気)
  • 消防設備
  • 燃料設備(ガス・重油・軽油・石炭など)
  • 通信設備  など

ただ注意しないといけないのは、ユーティリティ設備の範囲が企業によって違うことです。例えば、火力発電プラントでは燃料設備はユーティリティ設備ではありません。また、飲料水工場で給水設備はユーティリティ設備に含まれません。

担当する設備が違うと、あなたがこれまで培ってきた技術や経験・資格を十分に活かせないことがあります。このようなミスマッチを防ぐにためには、ユーティリティ設備が企業によって違うことを承知しておき、応募・採用試験を通して確認することが大事です。

ユーティリティを扱う求人例

ここからは、実際の求人を確認していきます。

まず紹介するのは、医療品製造業のテルモ山口株式会社の求人です。この会社は、医療品製造大手のテルモ株式会社の生産子会社です。山口県にある工場のユーティリティ設備を中心に担当する人材を募集しています。

求人票に記載のある通り、ユーティリティ設備管理が仕事の中心です。また、工場建物管理として「建物、エレベーター、消火設備など」も記載されています。

エレベーターや消火設備は、広い意味でユーティリティ設備に分類されることもあります。テルモ山口社では、これらの設備は生産に関係しないので別の分類にしていると考えられます。

もう一つ、ユーティリティ設備を専属して担当する求人を紹介します。下図は、福岡県にある箱崎ユーティリティ株式会社の求人です。箱崎ユーティリティ社は、箱崎食品工業団地内の食品工場に熱、電気、給排水設備を供給する会社です。

箱崎ユーティリティ社がある箱崎食品工業団地は、食品関係の工場が集中して建設してある工場団地です。下の写真の橙色の網掛け部分が箱崎ユーティリティ社で、橙線で囲った部分が熱・電気などの供給範囲です。

工場ごとにエネルギー設備を持っても良いのですが、工業団地の場合は人材も設備も重複して無駄が多くなります。そこで、箱崎ユーティリティ社のような会社が集中してユーティリティ設備を維持・管理して、各工場に分配するという形式を採用することがしばしばあります

一工場に勤めるわけではないものの、このような会社ならユーティリティ設備に専属して働くことができます。

ユーティリティ設備以外を扱う求人を視野に入れる

テルモ山口社や箱崎ユーティリティ社の求人は、ユーティリティ設備を中心に扱う人材を募集していました。しかし、このようなユーティリティ設備だけを担当する求人募集は少ないです。

そこで、ユーティリティ設備以外の施設管理も職務にある求人を見てみましょう。例えば下図は、全国に餃子の王将を展開している株式会社王将フードサービスの求人です。これは、埼玉県東松山市の同社工場で設備メンテナンス業務を行う求人です。

ユーティリティ管理のほか、設備メンテナンスや機器修繕が業務内容に記載されているのがわかります。ここで機器とは、製造に関する機器のことです。この求人では、工場の幅広い設備を担当することになります。

もう一つ、ここまで紹介した求人とは色合いの違う求人を紹介します。下図は、富山県南砺市に本社を持つ黒田化学株式会社の求人です。黒田化学社は、プラスチック成形技術に強みを持つ、自動車や情報機器のサプライヤーです。

この求人では、技術職ではなく総務職として静岡工場に勤める人材を募集しています。したがって、ユーティリティ設備の管理以外の仕事は、総務や人事関連の仕事が記載されています。

実は、ユーティリティ設備管理を総務が行っている例はしばしばあります。ユーティリティ設備の故障対応や工事などは外部業者に発注する場合、設備管理の仕事は事務仕事が中心になるからです。

例えば、ユーティリティ設備管理の1つとして、工場で使う電力や熱などのエネルギー管理業務で、エネルギー管理標準を策定し、エネルギー原単位を管理することがあります。これはデータを集めて計算する仕事なので、机上の仕事です。

また、年に1回、産業保安監督部に中長期計画や定期報告書を提出する義務があります。これも書類を作成して、役所に届け出る仕事なので、事務的な色合いが強いです。

したがって、事務系職種である総務職が、このようなユーティリティ設備管理を担っていることがあります。

工場のユーティリティ設備管理に転職したい場合は、以上のような技術職・事務職など幅広く求人を探していくと良いです。

ユーティリティ・工場設備管理に必要な資格・スキル

では、ユーティリティ設備管理に必要な資格には、何があるのでしょうか。ユーティリティ設備は分野が多岐にわたるので、必要な資格はたくさんあります。参考に、各分野で必要とされる資格を下記に示します。

  • 電気 → 電気主任技術者、電気工事士、エネルギー管理士
  • 熱 → エネルギー管理士、ボイラー技士、公害防止管理者(大気)
  • 排水 → 公害防止管理者(水質)
  • 消防 → 消防設備士
  • 通信 → 工事担任者、通信主任技術者
  • 燃料 → 危険物取扱者
  • 共通 → 高圧ガス保安責任者、安衛法に定める作業主任者、計装士など

私は、勤めている電力プラントのユーティリティ設備に携わることもあるので、上で紹介した資格のうちいくつかを取得しています。しかし、分野が広すぎるため、全ては持っていません。

そして、実際の求人では、先ほど示した資格を必須条件としていることは少ないです。

例えば、先に紹介した箱崎ユーティリティ社の求人では、下図の通り「電気主任技術者」「ボイラー技士」「エネルギー管理士」「公害防止管理者」の各資格が活かせることが記載されています。

もちろん、すでにこれらの資格を取得していれば採用試験で大いにアピールすることができます。特に難易度の高い資格が求人票に示されている場合は、年収交渉などにも活用できます。

ただ、具体的に資格名を求人票に記載していない求人もあります。例えば、冒頭に紹介したテルモ山口社の求人には、資格に関しては下図のように歓迎条件に「職務関連資格保有」とだけ記載されています。

この場合は、どの資格を必要としているかは応募のときなどに確認すると良いです。歓迎条件なので、資格を持っていないことはマイナスにはなりませんが、入社後に取得を強く促されることになります。

このように、ユーティリティ設備に関する資格は、転職時に全てを持っておく必要はありません。一方、求人に示されている資格をすでに取得しているときは、大いにアピールすることができます

しかし、入社してからあなたの得意分野以外の設備に関する資格取得も促される可能性が高いことを覚悟しておきましょう。

工場設備管理に必要なスキルや活かせる経験

一方、ユーティリティ設備管理に必要なスキルは、どのようなものがあるのでしょうか。これは、設備管理・保全一般に通じる考え方で、「検査→分析・評価→対策検討→対策実施」のサイクルを十分理解していることが前提です

通常、設備はこのサイクルで維持・改良されています。ここに、行政などへの認可申請や工事発注のための契約事務などが付帯作業として発生します。

また、ユーティリティ設備を持っている会社の社員なら、規模の大きな「対策実施」はメーカーや外部業者に任せるのが一般的です。そうすると、設備設計・施工管理や業者との折衝などの力を求められることになります。

場合によっては、検査・分析・評価も外部業者に委託し、自分たちは管理的な付帯作業のみ行うこともあります。このサイクルのどこまでが業務に含まれているのかは、企業によるので事前に十分に確認しておかないとミスマッチに繋がります

なお、あなたのこれまでの職歴で設備管理に関する業務があるなら、ユーティリティ設備を担当したことがなくてもアピールポイントになります。基本的に、この設備管理のサイクルは変わらないので、これまでどのプロセスを担当してきたかを明確に述べると良いです。

参考に、設備管理サイクルの「検査」「分析・評価」「対策検討」を中心に行っている会社に転職する場合に、どのようにアピールするかを記載します。

工事会社に勤務してきた場合(対策実施プロセスを中心に経験あり)のアピール例

→電気工事に関する経験があり、実際の施工に関してよく理解している。入社後は、簡単な施工は自分自身でできる。外部発注するときは、工事会社の内情をよくわかっているので、的確な指示、円滑な契約事務の遂行ができると考えている。

付帯作業を中心に勤務してきた場合のアピール例

→行政への許認可申請や契約事務を中心に担当してきたので、折衝や書類仕事には長けている。実務として、検査や分析・評価をすることはこれから覚えていくことになるが、基本的な知識はあるのですぐに戦力になれると考えている。

このように、応募する会社が設備管理サイクルのどの部分を担っているのかを把握して、あなたのこれまでの経験をうまくアピールすると良いです。

年収は業種によりさまざま

最後に、ユーティリティ設備管理に転職したときの年収について説明します。冒頭で紹介したテルモ山口社の年収は、下図のように350~700万円が提示されています。

同様に、ここで紹介した求人について、提示年収をまとめたものが下表です。

会社名 提示年収[万円] 業種
テルモ山口(株) 350~700 製造業(化学)
箱崎ユーティリティ(株) 273~(最低保証額)
(求人票の月給表示×15ヶ月で計算)
電気業
(株)王将フードサービス 300~500 製造業(食品)
黒田化学(株) 450~600 製造業(プラスチック)

ここで紹介した求人に関しては、提示年収が300~500がボリュームゾーンと言えます。しかし、求人ごとのばらつきが大きいです。では、求人を探すときに年収を検討するにはどのように考えればよいでしょうか。

実は、年収は業種により大きく左右されます。業種ごとの平均年収は、厚生労働省が賃金構造基本統計調査として毎年調査しています。下図は、ユーティリティ設備がある工場を持つ業種の平均年収をグラフ化したものです。なお、グラフの青色は製造業、橙色は非製造業を表しています。

引用:令和元年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)より作成

グラフの左側が平均年収の高い業種で、グラフの右側が平均年収の低い業種です。平均年収が、最も高い業種と最も低い業種で2倍程度の差があるのがわかります。

求人票の提示年収が低くても、平均年収が高い業種の企業だと数年後に年収が大きく伸びることがあります。反対に、求人票の提示年収は高くても、そのあとほとんど年収が伸びない企業もあります。

入社後の給与の伸びは、採用選考を通して確認しましょう。直接訊きにくいときは、転職エージェントを通して訊くのも良い方法です

以上のような手順を踏むことで、年収面での転職失敗を防ぐことができます。

まとめ

ここまで、工場のユーティリティ設備に携わる求人を探す方法について解説してきました。このような求人は、「工場」「ユーティリティ」をキーワードに探せば比較的容易に見つけることができます

ただ注意しないといけないのは、ユーティリティ設備と一言で言っても設備が多岐にわたることです。工場によって、同じ設備でもユーティリティである場合と、ユーティリティでない場合があります。

あなたの得意分野・資格を活かすためには、その分野のユーティリティ設備があることが前提です。したがって、応募前にその工場で何がユーティリティ設備とされているのかを把握しておくと良いです。

ユーティリティ設備を管理するのに必要な資格はたくさんあります。しかし、採用試験の段階では歓迎条件とされていることが多いです。つまり、応募時点で資格を持っていなくても問題ありません。ただし、採用されてから必要な資格を取得することになります。

工場のユーティリティ設備に携わるときの年収は、業種により様々です。政府統計などを利用して、平均年収の高い業種に積極的に応募することで、年収面で転職成功しやすくなります。

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。