営業職はお客様と直接接点を持つ仕事です。もちろん、電気に関係する企業でも営業職はあります。ただ、「電気」とひとくくりにいっても、その範囲は広いです。「電気機器を売るのか」「電気工事を売るのか」「電気エネルギーを売るのか」など、売るモノはいくつかの種類に分けられます。

売るモノの種類ごとに、対象となるお客様や働き方の特徴が異なります。あなたが転職を検討しているのは、現状を変えたいからだと思います。それがどのように変わるかを十分に情報収集しておくことが、転職を成功させるには絶対不可欠です。

そこで、ここでは電気関係の営業職に関わる、次の事柄を詳しく説明します。はじめに「電気関係の営業職の分類」と「それぞれの詳細」を解説します。そのあと、「年収について」「応募するときの志望動機の書き方」を解説します。

電気関係の営業職を分類する

電気に関係する営業職は、売るモノによっていくつかに分類されます。売るモノは、「電気製品」「電気エネルギー」、または「電気工事」など、さまざまです。そして、客層や必要となる考え方・スキルがそれぞれ違います

個人のお客様を相手にしたいのに、大手電機メーカーの営業職に転職したとしても希望は叶えられる可能性は低いです。

転職を成功させるには、それぞれの特性について十分に知っておく必要があります。そこで、まず電気の営業職が売るモノを整理し、分類します。

電気の営業職が売るモノは、大きく下の5種類に分類されます

  • 電気機器(産業用・業務用)
  • 電材
  • 電気工事
  • 電気エネルギー
  • コンサルタント(ESCOなど)

そして、顧客の種類(法人営業か、個人営業か)、売るモノの種類(物か、サービスか)を縦軸と横軸にとって整理すると、下図のようになります。

この図で分類される、営業職が売るモノと特徴を理解しましょう。ここから、それぞれの分類について詳細に解説します。

なお、個人の顧客に有形の物を売る職種も存在します。家電量販店の店員などです。しかし、この職種は営業職ではなく、販売職として、ここでは除外しています。

電気系メーカーの営業職は法人相手が多い

最初にメーカーの営業職を紹介します。メーカーの営業職の特徴は、下表のとおりです。

売るもの 自社製造の電気機器、電材など
顧客 主に法人

メーカー営業は、自社で製造した製品を売ります。自社製品は、すでに製品として完成したものだけではなく、客先の要求仕様に合わせて新しく製造する受注生産品もあります。

メーカーの求人例を下に示します。この求人は、重電5社のうちの1社である、株式会社明電舎の求人です。単に製品を売るだけでなく、客先の問題を解決する提案営業に携わる人材を募集しています。

明電舎の生産拠点は、静岡、群馬、愛知、山梨にあり、どちらかというと東日本エリアで力の強い会社です。しかし、営業拠点は北海道から沖縄県まで全国にあります。

重電機器という数万Vを扱う機器が主な製品であるため、私は長らく仕事以外で明電舎の製品を見ることがありませんでした。ただ、最近ではパワー半導体に力を入れてきており、電気自動車や下の写真のような住宅のそばにあるような小規模の太陽光発電所でも見かけるようになってきました。

このようなメーカーだと、営業先は法人(企業)がほとんどです。官公庁・電力会社・鉄道会社といったユーザー企業や、電気工事会社に機器を販売します。

法人営業は、個人向けの営業より楽だと言われます。ただし、注意すべき点があります。それは、顧客である企業の担当者もそれなりの技術者が多いということです。

現在メーカーの営業職として働いている人と話す機会があったときのことを書きます。その人は、かつて法人向けリースの営業職として働いていました。そのあと転職して電機メーカーの営業職として働いています。

彼によると、彼の会社が扱っている製品に付随する技術的な話を、お客様からよくされるそうです。

彼は技術的なバックグラウンドが全く無いので、転職してきた当初は持ち帰って確認して回答することがほとんどだったということです。3年程度経験を積んで慣れてきた現在でも、「技術的な話はまだ難しい」といっていました。

また、その人は「あなたのような電気技術者が営業になれば、仕事に早く慣れるだろう」と私に話してくれました。

このように、営業職と言っても、技術的な話と無関係ではいられないということに注意が必要です。

電気系商社の営業職の求人例

次に、商社の営業職の説明をします。商社は、自社で製品を作って売るのではなく、メーカーが作った製品を仕入れて販売する業態を言います。

そして、顧客は法人が中心です。まとめると、下表のとおりです。

売るもの 他社製造の電気機器、電材など
顧客 主に法人

以前転職フェアで、電気系商社の採用担当の人と話すことがありました。その商社は工場を持つ企業と取引のある会社で、メーカーの営業とは違う点について、下記のように話していたのが印象的でした。

メーカーの営業職は、客先に行ったとしても「自社の製品を置いてもらえるかどうか」にしか興味がない。それは仕方のないことだけれども、そのメーカーの製品がお客様の本当に求めているかどうかはわからない。

一方、商社系の営業職の場合は、もう少し視野が広くなる。つまり、お客様の不満や不便を聞き取ってから、自社の扱っている商材を使って解決策を提案できないか考える。

そして、扱っているメーカーが多いので、それぞれの強み・弱みを知っており、よりお客様の希望に沿える解決策を提案することができる。それが商社の営業の醍醐味だ。

お客様の希望に添った解決策を提案するのは、先に紹介した明電舎の求人も同じです。しかし、メーカーが自社製品を中心に使うのに比べて、商社の場合はメーカーを問わず、より要望にあった商品・サービスを提案できます

商社の営業職の求人例を下に示します。トシン・グループ株式会社は、関東1都6県(東京・神奈川・千葉・埼玉・茨城・栃木・群馬)で電設資材・住宅設備機器を卸している商社です。

求人票の中に、「法人向け営業で、客先との信頼関係を長期的に築く」と書いてあります。お客様との信頼関係をベースにして、問題解決策を提案していくというスタイルの仕事です。お客様と濃厚な関係で仕事をしたい人に、向いている仕事です。

電気工事の営業職の求人例

3種類目、電気工事の営業は、電気工事を請け負うために必要な営業職です。公共施設であれば官公庁に入札に行くのが主な仕事になります。

民間企業であれば、工場・集合住宅などで電気工事をするため見積もりを要求されたら、現地調査をして工事金額を見積もる仕事があります。もちろん、定期的に客先を伺って、修繕工事などを取ってくることもあります。

前述のメーカーは、自社製品を作ることはできても、製品の設置据え付けを電気工事会社に発注することがあります。この場合は、メーカーが電気工事会社の営業先になります。

なんにしろ、個人が電気工事を発注することはほとんどないため、主に法人に営業をかける仕事です。

売るもの 電気工事(機器の据え付け・配線など)
顧客 主に法人

では、電気工事の営業の求人例を下に示します。この求人は、東京および北海道(札幌)近郊でプラント・公共施設の電気工事を行っている北工電気株式会社の求人です。

このような大型施設の電気工事会社の営業の難しいところは、客先の担当者も電気工事の知識・技能を持っていることが多いということです。役所の営繕部門や工場の工務・生産技術部門が担当先になりやすいです。

そうなると、営業職といえども技術的に無知だと仕事が進みにくくなります。北工電気社では、「電気工事士資格」を持っている人を歓迎、「電気工事施工管理技士資格」を持っている人を優遇としています。

資格支援制度もあるので、電気について学ぶ姿勢があると評価されやすいです。反対に、「今は電気工事の施工側で働いていて、営業職に変わる」という選択をしやすい求人です。

電気(電力)の営業職は個人営業がある

4種類目は、電気エネルギーを売る営業職を説明します。電気または電力と聞いて一番に思い浮かぶのは、「東京電力」「関西電力」といった電力会社だと思います。

しかし、電力会社の営業職の中途採用はほとんどありません。これは、電力会社の3年後離職率が5%程度とかなり低く、さらに就職の人気企業であり新卒で十分に補充できるからです。

転職サイトなどで求人を見ることのできる電気の営業職のほとんどは、「新電力」と呼ばれる電力小売事業者の営業職です。電力小売の仕組みは下図のとおりです。

電力小売事象者のほとんどが、自社の発電所を持たない企業です。JPEX(日本卸電力取引所)から電力を購入し、顧客に販売しています。2016年から低圧が電力小売自由化になり、顧客は個人が多いです。まとめると、下表のとおりです。

売るもの 電気エネルギー
顧客 個人が多い。法人もある

この新電力の求人例を下に示します。この求人は、大阪で電力などの小売をしている株式会社アースインフィニティの求人です。「法人営業」と書いていますが、主な顧客は「飲食店や美容院など、中小企業や個人事業主」と明記してあります。一般消費者ではなく個人の事業者ととらえておくと良いです。

新電力の会社の「市場で仕入れて売る」という方式は、スーパーマーケットなどの小売業と変わりません。ややこしいのは、送配電線は10電力会社がすでに敷設した物を使い、契約だけが変わることです。新電力に切り替えるのに、新しく送配電線を敷設し直すことはありません。

このあたりがお客様にもなかなか理解されず、苦労することが多いといいます。実際に新電力のハルエネでんきの代理店として営業をしている人と知り合ったので、そのときの話を紹介します。

個人のお客様には「新電力」という言葉自体に馴染みがない。したがって、警戒モードから始まる。「停電になりやすい」「機械が誤動作する」などの誤った情報を持っているお客様も多く、誤解を解くのが大変だ。

また、セールスポイントは「価格の安さ」しかない。「品質が同じで、工事がなく、価格だけ安い」ということで警戒されることもある。

新電力の会社が一般の個人を相手にする難しさは、このような知名度の低さや理解の低さにあります。私も新電力の発電所に勤めていますが、この業界に入ってから仕組みがよくわかるようになりました。そのような状況なので、一般個人が仕組みを理解しているとは期待しにくいです。

新電力の営業職は、商品の良さを広く社会に浸透させていくスタートラインに立ったばかりの仕事です。開拓精神を持って、新規顧客を得ていく楽しみがある仕事といえます。

コンサルタントの営業職は法人営業中心

最後に説明するのは、コンサルタントの営業職です。何をコンサルタントするかというと、電気の場合は「省エネ=コスト削減」であることが多いです。

省エネのためのCPUブレーカーを売る営業もありますが、これは先に説明したメーカーまたは商社の営業職に近いです。コンサルタントらしい事業形態の代表は、ESCO事業を行っている会社です。

ESCOとはEnergy Service COmpanyの略で、お客様に省エネ提案し、現在の省エネ実施工事費と省エネ実施後の経費削減費の中から一定期間サービス料を得る事業モデルです。下図に、ESCO事業の概念を示します。

このような事業モデルの性質上、コスト削減効果が大きい工場や大規模施設を運営している会社が営業する対象です。つまり、法人営業が中心の仕事です。以上をまとめると下表のとおりです。

売るもの 省エネ(コスト削減)などの解決策
顧客 主に法人

ESCO事業の営業職を募集している企業として、日本ファシリティ・ソリューション株式会社を下に示します。日本ファシリティ・ソリューション社は東京に本社がある、ESCO事業の代表的な会社です。

営業職として注意しないといけないのは、ここで紹介したほかの営業職に比べて、技術的に求められる水準が高いということです。例えば、下図のようにエネルギー管理士資格を保有していることが歓迎条件に挙げられています。

エネルギー管理士資格は、省エネ法に根拠がある、難易度の高い省エネ関係の国家資格です。なぜこのような資格が必要かというと、提案内容に説得力を持たせるためです。同社のホームページでも、エネルギー管理士の有資格者がいることをアピールしています。

歓迎条件なので、エネルギー管理士資格を持っていなくても応募することはできます。しかし、無資格で入社したとしても入社後に資格取得を求められる可能性が高いです。ESCO事業などのコンサルタントの営業職を目指す場合は、求められる技術水準も見極める必要があります。

電気の営業職の年収を知る

では、電気の営業職の年収はどのくらいを期待できるのでしょうか。冒頭で紹介した株式会社明電舎の年収は、下図のように450~760万円と示されています。

同様にここで紹介した求人の提示年収を、下表にまとめました。

会社名 提示年収
(株)明電舎 450~760
トシン・グループ(株) 350~400
ただしインセンティブ含まず
北工電気(株) 500~(経験者)
400~(未経験者)
(株)アースインフィニティ 350~1000
ただしインセンティブ含む
日本ファシリティ・ソリューション(株) 400~550

この一覧からわかるのは、業態が安定している明電舎、北工電気社、日本ファシリティ・ソリューション社はインセンティブがなく、新規開拓を進めているトシン・グループ社、アースインフィニティ社はインセンティブがあります。

インセンティブは、士気を高めるために成績の良い社員に会社が与える報奨金です。つまり、会社としては報奨金を出してでも事業拡大したいという思惑があります。インセンティブが出る分、忙しくなります。

あなたが希望する働き方は、どのような働き方でしょうか? 営業職の場合はインセンティブの有無で、働き方がある程度想像できます。求人票の年収欄を深堀りして見ると、希望する働き方にあった企業を選ぶことができます。

志望動機をどのようにまとめるか

転職先候補の企業を決めたら、応募書類を作る必要があります。応募書類で多くの人が頭を悩ませるのが、200字程度の志望動機をどう書くかです。志望動機は面接でも訊かれるので、あらかじめ長めにまとめておくと良いです。

ここでは現職が電気の設備管理職の人で営業未経験者が、電気の営業職に応募する想定で例文を考えてみます。

例文を示す前に、営業職の転職事情について整理しておきます。

私が鉄道会社勤務時代のはなしです。日立製作所の営業マンが、富士電機の営業マンに「今いくらもらっているんや~?」と引き抜こうとしていたのを目撃したことがあります。

営業職で引き抜きは頻繁に行われていて、この場合は「即戦力ですぐに成績を挙げられそうだ」と期待して引き抜きます。

一方求人を出す場合は、あまり即戦力としての能力を期待していないということです。したがって、未経験であっても問題ないようにトレーニングの期間を設けています。これは、転職フェアで新電力の営業職を募集している会社の採用担当者から聞きました。

つまり、営業職としての適性を示せば、先方に興味を持ってもらいやすくなります

一般に、営業職に必要な能力は「ヒアリング能力」「コミュニケーション能力」「課題分析能力」などです。そのどれも備えていることに越したことはありませんが、200字でまとめることは難しいです。

そこで、「課題分析能力」に着目して志望動機をまとめてみます。

貴社を志望する理由は、設備管理で担当していた機器の中に貴社製品があり、親近感を持ったことからです。

また、未経験である営業職に挑戦しようと考えたのは、設備管理で鍛えた課題分析能力を活かせると考えたからです。

現職でエンドユーザーの意見を設備に反映する業務があり、エンドユーザーから好評を得てきました。この経験が営業職で存分に活かせると考えています。(172字)

この例文をもとに、自分の言葉・経験に置き換えて志望動機をまとめて下さい

また、面接まで進めば「どのような課題を分析し解決してきたのか」、具体的に質問されると考えられます。志望動機に書いた内容に説得力を持たせるためにも、深堀りして回答をまとめておくと面接で失敗を防ぐことができます。

まとめ

電気関係の営業職は、売るモノによって「メーカー」「商社」「電気工事」「電気エネルギー」「コンサルタント」5種類に分類されます。それぞれ対象顧客や特徴が変わるので、あなたの経験や希望を勘案して十分検討して下さい

また、営業職といえども技術的なことと無縁でいられません。ある程度の電気の勉強や資格取得が必要だと覚悟して転職する必要があります。

電気関係の営業職に提示される年収は、インセンティブがある場合とない場合があります。インセンティブは、会社が社員の士気を上げるために支払うものです。したがって拡大路線の会社によく見られます。

拡大路線の会社では、仕事に対して優先度を高くすることを求められがちです。あなたがどのように働きたいのかを十分考えた上で希望する会社を選んで下さい。あなたが転職成功するかどうかは、年収の高さだけで決まるものではありません。

営業職に転職するときの志望動機の書き方・まとめ方は、営業職への適性をあなたの経験やスキルから例を上げて示すと良いです。そうすることで書類選考において興味を持ってもらいやすくなります。

以上の内容を十分に精査して転職準備をすることで、転職成功しやすくなります。

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。