かつては男性ばかりだった電気工事業界にも、女性が活躍している姿が見られるようになってきました。電気工事の需要は増え続けているにもかかわらず、電気工事士の数は減ってきており、これからは男性だけでなく女性の活躍がますます期待されています。

しかし、まだまだ女性の電気工事士は少数派です。経済産業省・厚生労働省の調査から推計すると全電工の1.47%である約5000人が女性電気工事士です。

電気工事士の求人票を見ても、明らかに男性電気工事士が就職することを前提にしたような求人票が多いです。女性が電気工事士として転職成功するためには、このような求人を避け、女性を求めている企業を探さなければなりません

ここでは、「女性を求めている企業の求人票の探し方」「転職エージェントの活用法」「ミスマッチを減らす確認事項」「電気工事士の年収」などについて、くわしく解説します。

もくじ

求人票だけでは女性を敬遠しているか判断できない

転職を考えて求人を探すときに、多くの人は転職サイトで求人を探します。女性が電気工事士として転職する場合でも、転職サイトを使って求人を探すのは良い方法です。

しかし、企業が求人票を登録するときに、性別で区切ることができないという制約があるため、漫然と探していたのでは転職成功することは難しくなります。

これはどういうことか例を示しながら説明します。

電気に関する仕事は、歴史的に男性が多い職業です。その中でも特に、電気工事はいわゆる3K(きつい・汚い・危険)で休みの少ない職業であり、かつては女性の就業が制限されていました。今では法律の改正で、男女関係なく電気工事に就業することが可能になりました。

しかし、法改正と同時に男女同数になるわけではなく、女性と一緒に仕事をしたことがなかったために女性が新しく会社に入ってくることを嫌がる男性もいます。これは、「接し方がわからない」「セクハラと言われるのが怖い」などの理由によります。

このような会社は、新たに電気工事士を採用するときに、男性を採用します。そして、このような会社に応募したとしても、書類選考でやんわりと断られるのが目に見えています。

ただ、企業が欲しい人材が男性の電気工事士だったとしても、「男性電気工事士募集!」と求人票に書くことはできません。また、「身長180cm以上で握力〇〇kg以上」というような、事実上男性しか対象にならない条件も書けません。したがって、求人票の記載で性別や体力などに触れることはありません。

女性が電気工事士として転職成功するには、女性の電気工事士を求めている会社に転職しなければなりません。また、積極的に女性社員を求めていなくても、女性を敬遠していない求人を探す必要があります

これは、求人票の記載を読み込むことで絞り込むことができます。例えば、下図の有限会社ママダ電設の求人では、「男女は一切問いません」の記述があります。このママダ電設社は栃木県に根ざした会社です。

男性にしか応募してほしくなければ、このような記述は載せません。つまり、女性であっても問題なく採用される求人です。

なお追加で、電気工事士資格やCAD経験について言及しています。あなたが電気工事士資格以外にもCAD経験などがあれば、より採用される可能性が高まります。

そのほか、愛知・静岡で電気工事業を営んでいる株式会社ユニオンネットの求人を下図に示します。この求人には、力仕事が無いので力の弱い女性でも問題ないことが記載されています。

求人を探すときは、このような記述がある類似した求人を見つけて応募すると良いです。

女性歓迎の求人を見つける工夫

そのほか、女性でも問題なく電気工事士として働ける求人を見つける方法としては、転職エージェントの力を借りることが挙げられます。転職エージェントを使うメリットは以下の3つがあります。

  • 非公開求人の紹介を受けられ、手に入る求人が増える
  • 多数の企業に応募するときの書類送付を任せられる
  • 女性の就業環境が整っているか、採用はあるかなどの打診を依頼できる

以下、順に詳細を説明します。

1つ目の、非公開求人とは、転職エージェントを介してのみ手に入れられる求人のことです。何の登録もせずに、転職サイトで検索して見られる求人は公開求人と呼ばれ、全体の2割ほどです。下図のように、転職サイトでは全求人の8割が非公開求人とされています。

これは、どの転職サイトでもほぼ同じ数字を公開しています。したがって、非公開求人を紹介してもらえると、優れた求人に出会える確率が5倍になります。

次に、応募書類を代行して送付してもらえることについて説明します。

転職活動において、少なくて数社、多くて数十社に応募することはよくあります。私が転職したときは、20社近く書類応募しました。半分くらいが書類選考で落ちました。これだけの会社に連絡して、必要書類を送るのは大変です。

転職エージェントサービスを使えば、一度履歴書や職務経歴書などの選考書類を作成しておけば、あなたが希望する企業への送付は代行して行ってくれます。これにより、手の空いた時間を企業研究に充てることができます。

最後に、企業側への打診をしてくれることについて説明します。

あなたの目に止まった求人があったとき、前項で紹介した求人票の見方では、女性を受け入れる会社かどうかを見極められなかったらどうすればよいでしょうか。このようなときは、転職エージェントを通して当該企業の女性電気工事士採用の考えについて訊いてもらえば良いです。

また、同時に女性電気工事士を受け入れる設備や風土について訊いておくと、ミスマッチの可能性を減らすことができます。

女性電気工事士がミスマッチを減らす事前確認事項

職場で、女性と男性の考え方・使用方法の差が出やすいのがトイレ、体力の問題です。それぞれについて、転職前に十分確認をしておくと、転職してから後悔することはなくなります。

ここでは、具体的にどのような点について確認すべきかを解説します。

・トイレ

まず、トイレの問題ですが、電気工事士は現場で作業をするため、オフィスのような衛生的で便利なトイレ環境がありません。大きい現場なら、下写真のような仮設トイレがあるものの、点々と現場を移動するスタイルの工事だと、仮設トイレすらありません。

私が以前勤めていた鉄道会社の保全工事を担当する箇所では、点々と電気設備のある拠点を回っていく仕事でした。そのため、女性社員は外に出る仕事の前には水分を控えるなどの対策をしていました。

仮設トイレがある場合でも、余程大きい現場でもない限り男性と兼用になることが多いです。実際に働くときの満足度に大きく関わることなので、確認しておくと良いです。

・体力

次に、体力の問題です。激務で、力仕事の多い職場だと、多くの女性にとってハンディキャップになります

勤務形態については、建設業においても週休2日を取り入れ始めており、あまり心配する必要ありません。むしろ、力仕事の有無のほうが、勤め先を選ぶときに重要です。

鉄道会社勤務時代に現場で作業していた女性社員に聞いたところ、トルク管理が必要な設備など、女性だと力が足りないときは、男性社員に代わってもらっていたということです。

電気工事は、ケーブルの運搬・敷設や重量物の据え付け・移動など、力が必要な場面がかなりあります。もちろん事業形態によっては、力仕事の少ない会社もあります。

さきほど紹介したユニオンネット社の求人では、「力仕事がほとんどない」と謳われていました。このように記載のある求人以外は、どの程度力仕事があるのかを確認しておくとよいです。

・できれば職場見学をする

このような確認事項は、口頭やメールで確認するだけでなく、積極的に職場見学を申し込むとよいです。実際に働く場面を見学し、事前の説明と差がないことを確認でき、不安な点を解消できれば、ミスマッチを極限まで減らすことができます。

職場見学は、選考試験に予め組み込んである会社もあります。ない場合は、企業側に申し込んでみてください。

また、その反応を見ることで、企業が本気であなたを受け入れようとしているかどうか測ることもできます。

工事施工にこだわらないなら施工管理なども選択肢になる

前章までは、電気工事士として電気工事施工に携わる仕事について解説してきました。このような工事施工が仕事に占める割合は減るものの、施工管理の職種を視野に入れると選択肢が増えます

施工管理職は、複数の電工を統率して、工事が円滑に進むように仕事をします。下の写真は、遊園地の遊具の電気的な設備修繕をしているところです。脚立に昇らずに、地上で作業を見ている作業者がいます。

下で見ている作業員は、ただ作業を眺めているのではなく、実作業をしている作業員の仕事が安全に、そして仕事がはかどるように待機しているのです。具体的には、下記に挙げることなどをします。

  • 作業員の不安全行動の監視と抑止
  • 作業の進み具合に沿った作業指示
  • 作業品質の確認

現場で行うのはこれくらいですが、事務所に戻ったあとは客先との打ち合わせ、工事計画書・竣工図書など工事書類の作成、工事積算などの事務仕事があります。

実際に手を動かして作業することは若干あるものの、主たる作業員として工事施工することはありません。施工管理に向いてる人は、工事全体の調和をとりながら粘り強く仕事に取り組める人です。

この施工管理の仕事は、実際に電気工事施工の経験があると作業員が行う仕事がよくわかるので、施工管理の品質が上がります。電気工事士資格があれば、補助的な電気工事も行うことができます。

また、施工管理であれば大手電気工事会社(サブコン)が転職の選択肢になります。例えば、下図の株式会社HEXEL Works(旧六興電気株式会社)は東京・大阪のほか全国に拠点を持つ独立系サブコン大手で、1割ほどの女性社員が在籍していることが謳われています。

すでに女性社員が相当数在籍しているので、社内の制度や設備が整っています。全く女性社員がいない企業を選ぶより、入社しやすく、入社後の満足感も得られやすくなります。

年収は電気工事士全体が低めであることを承知しておくこと

最後に、電気工事士の年収について説明します。まず、冒頭で紹介したママダ電設社は、下図のように月収が20万円以上と提示されています。賞与を4ヶ月分、残業などの手当が年間2ヶ月分あるとして計算すると、年収は360万円ほどになります。

そのほかの求人の提示年収をまとめたものが下表です。

会社名 提示年収[万円] 職種
(有)ママダ電設 360(月収から計算) 電気工事士
(株)ユニオンネット 301~504 電気工事士
(株)HEXEL Works 400~700 施工管理

これによると、電気工事士として働く場合は300万円台くらいです。施工管理だと、電気工事士より高い年収が得やすくなります。

なお、電気工事士の平均年収は、厚生労働省が賃金構造基本統計調査として公表しています。これによると、上記2社の平均年収は平均的かそれより高い提示年収であることがわかります。

引用 : 令和元年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)をグラフ化

賃金構造基本統計調査で、男性の方が400万円以上の年収を得ているのは、年齢層が高いからと考えられます。女性が電気工事士として働くことが増えてから年数が浅いため、高い給料をもらう男性と同年齢の女性がいないからです。

それを踏まえても、全サラリーマンの平均年収は約500万円ほどであり、電気工事士の年収は低いです。長く勤めたらといって高年収が望める職種でもありません。

そこで、少しでも良い条件を希望するなら、転職エージェントを利用するとよいです。転職エージェントは企業との年収交渉を行ってくれます。

このように、情報収集だけでなく企業との交渉でも転職エージェントをうまく使いこなすことが転職成功への近道です。

まとめ

ここまで、女性が電気工事士として転職成功する方法について解説してきました。

電気工事業界は、歴史的に見て女性が少ない業界です。そして、女性社員を受け入れる体制が整っていない企業があります。求人票は、表向き男女の別なく採用すると書いてあるので、「女性社員を求めている記述」を見つけて、そのような企業を受けることが成功への秘訣です

そして、求人票からの情報だけでなく、転職エージェントを活用することでさらに転職成功しやすくなります。非公開求人の紹介を受けられることのほか、企業の女性電気工事士採用についての考え方を打診することもできます。

また、電気工事施工が少なくなっても良いなら、施工管理職も選択肢に入れると求人の幅が広がります。客先との調整や書類作成等の事務仕事が増えるので、それらが得意だと重宝されます。

電気工事士の年収は、全サラリーマンと比較して低いです。将来的に高年収が望める職種ではないので、そのことは覚悟しておく必要があります。転職時の年収については、転職エージェントに交渉してもらうことで、自分だけで転職活動するより良い条件を得やすくなります。

これらの情報を活用し実践することで、女性電気工事士として転職しやすくなります。


技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。

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