転職活動を進めていく上で、面接は避けて通れません。正社員・契約社員の別を問わず、必ず面接を受けて採用されることになります。
しかしながら、面接は新卒で就職活動以来、何年も経験していないということがほとんどではないでしょうか。
すると、様々な疑問が湧いてきます。「どんな質問をされるのだろうか?」「服装は?」「いつ電話をかけたら良いのだろうか?」「面接会場へはどう行くべきか?」 、あなたも、たくさんの疑問があると思います。
私は、初めて転職活動をしたとき、それまで工場へ赴いたことがなく、勝手が違い困った記憶があります。
これらの疑問・不安に予め準備をすることで、失敗の可能性を大きく減らすことができます。その際、技術職に求められるものは何かを意識しながら準備をすることが大切です。
今回は、私の経験を踏まえて、志望動機を含む想定問答の用意の仕方、電話のマナー、面接時の服装、面接会場への行き方について、詳述します。
もくじ
志望動機、転職理由など想定問答を作る
面接を受ける前に一番にやっておくべきは、面接で聞かれるであろう質問に対して想定問答集を作っておくことです。よく訊かれる質問とは、下記のようなものがあります。
- 簡単に自己紹介をして下さい
- 転職理由は何でしょうか
- 弊社に応募した理由は?
- あなたの強みは?どんなことで弊社に貢献できますか?
- 転勤・入社日・年収について
これらの質問に対しては、予め回答を書き出しておくと良いです。書くといっても、紙に鉛筆で記述するだけでなく、パソコンを使って記述してもいいです。私は、以下の写真のようにMicrosoft EXCELを使って記述、整理しました。
書き出してみることによって、頭の中で漠然としていたものがまとまり、訊かれたときに堂々と答えやすくなります。また複数社受ける場合にも、前に受けた会社の問答集をブラッシュアップして使えます。
とにかく、自分の言葉で一度文章にしてみることが大切です。
以下、私が今勤める電力プラントの面接を受けたときの問答集から、それぞれの質問について解説します。
自己紹介で面接の成否が決まる
最初の自己紹介で、その面接が成功するかどうか決まるといっても過言ではありません。下記の順に1~2分程度で話せるようにまとめとると良いです。1~2分は字数でいうと、200~400字程度です。
- フルネームを名乗る。
- 学校卒業後に就職した会社名・事業内容を説明する。
- 現職(前職)での所属部署・担当業務(興味を持たれそうなもの)を説明する。
- 仕事における成果、自信のあるスキルなどを説明する。
以下私の例では、364字です。
〇〇と申します。本日はお時間をいただきありがとうございます。
12年前に、自分ができる電気の知識や技術で公共性のある仕事に就きたいと思ったことと、単に鉄道が好きだったこともあって、〇〇鉄道株式会社に入社しました。 電気系の総合職として、電気設備を保全、新設する業務に当たっていました。12年勤めた中で、最初の4年は福岡で6600V以上225000V未満の電気設備を主に保全していました。このときに、日常の点検のほかに、簡単な修繕工事から、メガVAオーダーのトランスの取り替え工事の積算や、施工監督を経験しております。 その後は変電所の中央制御装置の保全や、新設設計、施工管理に携わっております。平成○年開業の〇〇線では、動力の要である電力系統のシステムを無事故で重大なバグやエラーなく開業させたことが12年間の一番の成果だと考えています。 本日はよろしくお願いいたします。 |
大切なのは、相手に興味を持たれそうな内容を、堂々と話すことです。私の場合、相手が発電所で大電圧を扱うユーザー企業だったので、実際に扱った電圧の大きさと発注側の業務経験を述べています。
実は、陸運業から電気・ガス・水道業への転職で、全くの異業界に飛び込むことから、自分のエンジニアとしての技術力について通用するか心配がありました。
しかし、あとで面接を担当した上長に聞いた話だと、技術力を評価して採用したということでした。
したがって、業界をまたいだとしても、上の方法で問題ありません。
転職理由は前向きに書く
この項目は、企業側が特に気にする項目です。せっかく採用したとしても、すぐに辞められるのは企業としては避けたいので、同じように退職を繰り返しそうな理由だと採用されない可能性が高いです。
手順は、下記のとおりです。
- 現状の不満を洗い出す。
- その不満は今の会社では、なぜ解消できないのか整理する。
- 1.の不満を前向きな表現に変える。
また以下に、私の転職理由を示します。
技術的な向上を望めると考えたからです。
よりよい仕事がしたいと考えて、自己研鑽により電気主任技術者や通信主任技術者など資格で技術力の裏付けをしてきましたが、何もなく運用できていることが当然であって、新設や技術検討など生かす場面がなかなかありませんでした。 また、施工業者やメーカーの技術者など外の知識に触れるにつれ、新しい分野で仕事をしたいと考えて転職を決意しました。 |
これを反対にいうと、「担当している仕事が、毎日同じことの繰り返しで面白くないから」というようになります。上記の手順で、この不満を分析して前向きな表現に変えています。
これにより、この転職が単なる現実逃避ではなく、考えを持った転職である(つまりすぐに辞めない)ことを印象付けられます。
応募理由(志望動機)は必然性をアピールする
応募理由は、その会社にだけ通用する理由でないと意味がありません。上記で述べた転職理由が、その会社に入社することによって満たされるのかどうか、一貫性が必要です。
つまり、私のように技術について不満があるなら、その不満は希望する会社に入ることによって満たされるのかどうか、を記載します。その際、その会社にしか無い技術や製品にふれると、より必然性が増します。
以下は、私の志望動機です。
発電所を運営するということと、電気主任技術者を募集していたからです。
発電に関しては技術的(制御系、ガバナ、需要予測など)な関心を深めていたところです。また、チャレンジャーの立場でフットワーク軽く挑戦をできると考えています。 主任技術者に関しては、資格はあるものの選任経験がなく、選任されることを見据えた仕事ができそうだというのが、貴社を志望した理由です。 |
さらに、工場だと転勤がない採用もあります。この場合、「出身地に近いところで腰を落ち着けて働きたい」という表現を足すと、よりその企業で働く必然性が増します。
そのほか、志望動機の詳細は下記に記載していますので、あわせて確認して下さい。
会社でどのように活躍できるかを測る質問
あなたの強みと、それをどのように活かせるかという質問は、入社後どのように活躍できるか、活躍したいかを測っている質問です。
技術職の場合、活躍が直接利益を生むことは少なく、どちらかというとコストを抑えたり、同じコストで品質を上げたりすることが多いです。答えにくい質問ですが、一年後の自分を想像しながら書き出してみましょう。
強みは、電気だけにとらわれない幅広い視点と行動力です。
幅広い視点は、もちろん一本筋の通った電気の知識・技術は持ちつつも、発想や考え方のベースの部分で他分野のノウハウや知見を生かすという意味です。いつも同じ見方ばかりをしていると考え方が固まってしまうので、わざと多視点を持つようにしています。 行動力は、本や資料だけで得た知識に満足せず、実際に足を運んで手を動かして物事を進めるというところに発露していると思います。 前職では、指令として現場の作業員を電話で指示して動かす仕事をしていました。このとき、後輩と自分の時間で、沿線200kmの変電ポスト30箇所をまわり、作業員がどのような時間感覚で作業にあたっているかを確認したことがあります。 そのあとは、肌感覚で作業員の動きがわかるようになり、指示がより的確になりました。このように、自ら動き仕事を進めるのが、私の強みの一つです。 この二つは、業務における問題解決に必ず役立つと考えています。 |
ポイントは、下記を意識することです。
- 今までの業務において活かせると思った点
- 応募企業製品対する情熱・思い
- 仕事に対する取り組み姿勢でプラスになる点など
転勤・入社日・年収は正直に話して問題ない
最後のこの質問は、入社前提としてよく訊かれる質問です。あなたの考えるところを述べましょう。しかし、そもそも求人票で提示された条件とあまりにも乖離していると、不採用になることもあるので注意は必要です。
転勤できますか?
例1)希望は○○ですが、前向きに検討したいと思います。 |
いつから入社できますか?
1ヶ月後の○月○日以降なら問題ありません。(概ね1~2ヶ月後まで) |
希望年収額は?
例1)貴社、規定に従います。 |
想定問答は、以上のような質問を想定し、事前に回答を整理しておくとよいです。これにより、面接時に話がまとまらず失敗した、というようなことを防ぐことができます。
電話をかけるタイミング
転職活動中、企業に電話をかける場面はあります。特に面接前後では、電話をかけて確認することもよくあります。
技術職なので、電話のマナーが良くなかった程度で落とされるとは考えにくいです。しかし、そのあとの面接などで、「マナーのない人」という色眼鏡で見られる可能性があります。
では、電話をかけてもいい時間はいつでしょうか。企業の勤務時間内であることが前提です。
企業の採用担当者は、仕事としてあなたを審査します。仕事の話を勤務時間外にするのは、あまり気持ちの良いものではありません。
また、会社により電話対応の時間を、超過勤務として申請する必要があります。これは担当者の手を煩わせる上に、会社に余計な経費を使わせることです。
勤務時間は会社によってまちまちですが、朝9時~夕方18時を基本に多少前後する程度です。勤務時間は、求人票に記載してあることが多いので、確認しておくと良いです。下記は、大手転職サイトのdodaで見つけた、三菱電機株式会社三田製作所の求人例です。
勤務時間が「8:30~17:00」と記載されています。求人票には、まず間違いなく 同様の記載があるので確認しておきましょう。
さらに、勤務時間中であっても避けるべき時間帯はあります。それは、「勤務開始時刻から1時間くらい」「昼休み直前」「昼休み直後」「勤務終了時刻1時間前くらい~勤務終了」です。
私の勤めるプラントでは、この時間帯に部署の社員が集まることが多く、打合せをしていることが多いです。これを電話で割り込みされると、そのあとの仕事に障るので、避けてほしいと考えます。
同じ職場の、ほかの工場から中途採用された人に聞いても同じようなことをいっていますので、避けておいたほうが無難です。
これらを図示したものが下図です。
勤務開始時刻、勤務終了時刻はあなたが受ける会社のものにあわせて考えてください。
また、どうしても昼休み(12時~13時)に電話をかけないといけない場面があります。それは、現職で働きながら転職活動をしている場合などです。
この場合は、昼休み開始直後に電話をかけるのは避けましょう。食事を邪魔することになります。あなたも、お昼休憩でカップラーメンに湯を注いだあとに仕事の電話がかかってきたら、怒りを覚えるのではないでしょうか。
昼休みに電話をかけるときは、12時30分くらいにかけると良いです。
なお、勤務時間や休憩時間が明示されていなくて、ここに記載の内容と違う勤務時間形態で働いている工場はあります。その場合は、あまり気にすることはないです。
担当者は、自分たちが一般的な勤務時間とは違うことを承知しています。一般的な配慮ができていれば、問題ありません。
複数回電話をかけることがあれば、1回目に都合の良い時間帯を聞いておいて、2回目からは配慮の上、電話すると良いです。
緊急の場合は躊躇なく電話すること
ここまでは、通常時の電話連絡についての注意事項です。しかし、緊急時は例外です。例えば、以下のような場合です。
- 面接に向かっている途中で、列車が遅れ、予定時刻に間に合いそうにない。
- 事故に巻き込まれ、面接に伺えない
- 身内の不幸など、面接に伺えなくなった
このような場面になったときは、深夜早朝は避けてなるべく早く先方に伝える必要があります。これらをせずに、「面接に遅れる」「面接に行かない」ことは、電話のマナー違反より、圧倒的に心証が悪いです。
私は、今勤める会社の1次面接試験で、開始時刻5分前に会場がわからず担当者(現在の上長)に電話しました。同じような名前のビルがたくさんあり、紛らわしかったのは先方も承知しており、特にとがめられず、採用されました。
わからないことを聞くことは、マイナスにはなりません。このような特殊な場合は例外ですので、気にせずに電話すると好結果に結びつきやすいです。
緊急時の場合は、電話することがあるとだけ覚えておくと良いです。
ちなみに私は、緊急時に電話をかけることを想定して、転職エージェントからの面接案内メールをプリントして持っていっていました。これは、スマートフォンの電源が切れるなどのトラブルも想定してのことです。
人生の一大イベントですので、これくらいの用心深さは必要です。
面接時の服装はスーツ(背広)が基本
工場などで働く場合には、作業服として制服が貸与される場合が多いです。通勤時には、制服としての作業着を着たまま通勤する人もいれば、カジュアルな服装(Gパン、Tシャツなど)で通勤する人もいます。
しかし、入社試験はスーツ(背広)が基本と考えてください。フォーマルな場面ですので、それに見合った格好をすべきです。今までの仕事の都合で、スーツ(背広)を持っていなかったとしても、1着新調しましょう。安いもので構いません。
ただし技術職は、これまでの実績と技術力で評価されるものです。服装に、あまり神経質になる必要はありません。参考までに、私が転職活動中に着ていたスーツを下に示します。
私が気をつけていたのは、以下の二点です
- 清潔感があること(くたびれていない、シワがない)
- 時期と年齢にあった色使いであること(春らしいネクタイの色)
これらは、女性であっても同様です。また、派手な化粧も控えて下さい。あくまで技術力で勝負します。
あとは、髪にクシを通して、男性なら髭を剃って面接に挑めば問題ありません。
面接開始時刻には余裕を持って工場に到着する
面接会場へ行くには、公共交通機関を使うのが基本です。さらに時間に余裕を持つことが重要です。
したがって、面接の予定を入れるのは、1日1件、多くて2件くらいに留めるのが無難です。
公共交通機関を使うのは、事故など不測の事態が発生する確率が低いからです。
あなたも、車で外出して、交通事故による渋滞に巻き込まれた経験があると思います。反対に、公共交通機関を利用すると、まず間違いなく、予定通りに目的に着くことができます。
たとえ不可抗力であれ、面接の開始時刻に遅れて良い印象は与えません。自家用車は使わず、面倒でも公共交通機関を使うことで、不測の事態に陥るリスクを減らせます。
技術職の転職では、街中のオフィスではなく、郊外の工場に直接赴くことも多々あります。工場によっては、自家用車の持ち込みができない箇所もあります。「駐車場が無い」「駐車場はあるが、駅より遠くにある」ということも考えられます。
そのようなつまらないことで、遅刻しては大損です。時間の読める公共交通機関を使いましょう。
さらに、大きな工場だと、工場入口から面接会場までかなり歩くことがあります。私が転職活動中に経験したのは、1件が入り口から歩いて15分程度、もう1件が入り口まで車で迎えに来てもらい、車で5分程度でした。
また、工場入口ではセキュリティのために、守衛で用件を伝え入門手続きをする必要があります。ほかの入門者がいると、数分はすぐに経ってしまいます。
工場入口に予定30分前までに到着するつもりでいると、間違いないです。早すぎた場合は待てば良いです。
これらを怠り、遅刻すると、技術者に必要なスケジュール管理(=工程管理)能力の未熟さや、リスクに対する読み、対処の甘さを印象づけることになります。
あなたの今後の人生を左右する、大切な面接です。十分に余裕を持って、万が一の列車遅延などに巻き込まれたとしても、リカバリーできるくらいの予定を立てましょう。
まとめ
技術職の面接の前に、準備することとして想定問答を作ることがあります。よく訊かれる質問は、「自己紹介」「転職理由」「志望動機」「強みと、どう貢献できるか」「転勤・入社日・年収について」です。
これらの質問には、自分のこれまでの仕事を振り返って、予め回答を書き出して置くとよいです。これにより、面接時に何も答えられなくなることを防ぐことができます。
電話をかけるタイミングは、担当者の勤務時間について配慮が必要です。しかし、面接当日の不測の事態には、躊躇することなく電話することが大切です。
面接時の服装は、スーツ(背広)が基本です。平服で通勤している社員を目撃していたとしても、スーツを用意して下さい。
スーツで、変にお洒落をする必要はありません。技術職の面接は、技術力で判断される割合が高いです。あなたがアピールすべきは、技術力です。服装は無難な格好にすると良いです。
面接当日は、公共の交通機関を使って、余裕を持って会場に向かいましょう。技術者に求められる、リスク管理という面からも、公共の交通機関を使うとよいです。
これらに注意することで、工場での面接で失敗することを防ぐことができます。
技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。
企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。
しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。
以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。