技術士資格は、とても難易度の高い資格で、技術系最高峰ともいわれる資格です。あなたも苦労して相当の努力の結果、取得したのではないでしょうか。

また、この難関資格を活かして、少しでも良い条件で就職したいのではないでしょうか。

実は、技術士の資格を活かすことができる求人は、数が少ないです。したがって、求人を探すには少し工夫が必要です。

さらに、よく「技術士は給料が低い」「技術士は食えない」ともいわれます。これは本当でしょうか?

ここでは、技術士の求人の実態、転職サイトで求人を探すときの注意点、年収の実態などを解説します。

もくじ

建設コンサルタントの求人がほとんどである

技術士必須の求人は、建設コンサルタントで機械関係の仕事をするものがほとんどです。

これは、技術士法第2条に「計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務」を行うものが技術士であるとされているからです。つまり、このような仕事とは、コンサルタント業のことです。

下に、実際の求人で機械部門の技術士を募集している求人票を示します。


この会社は、主に公共構造物の建設コンサルタントをしています。仕事内容は「トンネルの照明や排水設備など、公共構造物の機械設備設計」を担当するとあります。

私が勤める電力プラントにいる他企業からの転職者や、出身校の後輩にも、機械部門の技術士資格者がいるか、いるとしたらどのような仕事をしているか聞いてみました。

聞いてみたのは、それぞれ、製紙会社で保全部門にいた人、工作機械メーカーで設計をやっている人です。回答は、以下の通りでした。

製紙会社で保全部門にいた人

資格の存在は知っている。取得していたとしても、持っているだけでは評価されない。工場の機械に関する知識・技能が伴っていて、初めて評価される。

工作機械メーカーで設計を担当している後輩

社内に技術士がいると聞いたことがない。いるとしたら研究開発部門で、ここなら修士や博士も在籍しており、技術士がいてもおかしくない。ただし、社内で取得を奨励されている資格ではない。

このほかにも、私が以前鉄道会社に勤めていたときは、技術士および、その前段に取るべき技術士補の資格取得を奨励されていました。しかし、社内で技術士として活躍しているという話を聞いたことがありませんでした。

また私は、鉄道会社で勤めているときに、新規路線の建設を担当していたこともあります。しかし建設部門の仕事は、上で紹介したように建設コンサルタント業に近い職種にもかかわらず、社内に技術士は見かけませんでした。

ちなみに、私がこれまでに出会ったことがある技術士は、社外の設計事務所や、一部門で建設工事設計を行っている会社の人に限られます。

このように、技術士として仕事をするには、分野が極めて絞られるということを認識しておかなければなりません

機械部門の技術士資格者を欲しがる求人は少ない

さらに、技術士(機械部門)の資格者を求める求人は少ないということを知っておく必要があります

これは、技術士資格所持者ができる仕事を考えるとわかります。実は、技術士資格者だけに許された仕事は存在しません

例えば、機械系の資格で「玉掛作業者」という資格があります。これは、クレーンなどで荷を動かすときに、玉掛けワイヤーをかけるのに必須の資格です。無資格で玉掛業務を行った場合、懲役または罰金に処せられます。

このような資格を、業務独占資格といいます。

一方、技術士の場合は、このような業務というものがありません。技術士法第57条に、「技術士でないものは、技術士と名乗ってはいけない」と定められているだけです。

もう少し噛み砕くと、「技術士の資格を持っていない者が、技術士を名乗ってコンサルタントを行った」ら法的に罰せられます。しかし、「同じコンサルタントの仕事を、技術士を名乗らずに行った」ときは、何の問題もありません。

このような資格を、名称独占資格といいます。

企業にとって、名称独占資格の所持者を積極的に採用するメリットはあまりありません。さらに技術士資格は、難関である上に所持者も少ないため、技術士資格必須として募集すると、応募者が来ない可能性が高まります。

したがって、技術士(機械部門)を必須としている求人は、数がごく少ないことを知っておく必要があります。

技術士の求人は技術士専門の転職サイトを第一に探そう

では、実際に求人を探すときは、どのようにして探せばよいでしょうか。

原則は、転職サイトで探すことです。それも、技術士募集の求人や建設コンサルタントの求人を中心に扱っている転職サイトを第一に探すと良いです。

転職サイトに技術士を求める求人が多いのは、求職者を探す企業側の都合に理由があります。転職サイトに求人を出すと、企業には費用がかかります。求職者が無料で転職サイトを利用できるのは、転職サイト運営会社がその費用を企業側に請求しているからです。

しかし企業には、求める人材を転職サイト側がマッチングしてくれるというメリットがあります。これは、技術士のような資格所持者の絶対数が少ない場合に効果的です。

つまり企業は、求職者(技術士資格を持っている人)が、企業が出している求人を見つけてくれるのを待つのではなく、費用をかけてでも企業の求人を求職者に引き合わせてくれる方法を取ることが多いのです。

さらに、これは非公開求人として募集されることもあります。非公開求人とは、求人情報の一部または全てを非公開で募集される求人です。

非公開求人には、転職サイトで転職エージェントを通して紹介してもらうしか、応募する方法がありません

これらのことから、まず求人を探す方法は転職サイトを使うことをおすすめします。

実際に技術士の求人を専門的に扱うサイトは、下図のようなサイトです。

このサイトでは、技術士資格の部門ごとに求人を分類して紹介してあります。機械部門の技術士資格者を募集している求人案件は、5件ありました。

そこに掲載されてあった、機械部門の求人を紹介します。

下に、八千代エンジニヤリング株式会社の求人情報を示します。八千代エンジニヤリング株式会社は、本店を東京に置き、全国に事業展開する総合建設コンサルタント会社です。

この会社は、社会インフラの建設コンサルタントに強みを持つ会社です。つまり、官公庁・自治体や交通インフラ企業からの受注が多い会社です。

したがって、社会インフラに付随する機械設備の設計が、主な仕事内容です。

また必須条件として、「技術士(機械部門)」とあわせて、建設コンサルタントの実務経験を求められています。

次に紹介するのは、同じサイトの非公開求人です。非公開といっても、完全に非公開ではなく、社名が伏せられているだけで、仕事の内容などは公開されています。それを下図に示します。

この求人は、「大阪に本社を置く総合建設コンサルタント」と掲載されています。会社名はわかりませんが、そのほかの情報は公開されています。

私も、同様に社名が伏せられていて、ほかの情報が公開されている求人に申し込んだことがあります。このような求人は、転職エージェントに申し込むことによって、さらに詳しい情報を得ることができます。

この求人では、必要な資格として、技術士(機械部門)資格が挙げられています。経験は、「歓迎条件」とされているため、建設コンサルタント業が未経験でも問題ありません。

技術士資格必須の求人案件を探すときは、このような業種の求人を探すことになります。

技術士資格必須の求人にこだわらなければ、求人の数は増える

技術士(機械部門)が求められる求人を探すとき、ここまで紹介したようなコンサルタント業が中心になります。

しかし、技術士を名乗って仕事をするコンサルタント業に限定しなければ、探し当てることのできる求人案件は増えます

下は、「建設・設備求人データベース」というサイトで、「技術士 機械部門」をキーワードとして検索したときの結果です。40件の求人がヒットしていることがわかります。

また、下図は大手転職サイトのdodaで、同様に「技術士 機械部門」をキーワードとして検索した結果です。こちらは、29件の求人がヒットしています。

もちろんこれらの検索結果の中には、かならずしも機械部門の技術士について言及しているものではない求人も含まれています。そのことには注意して、求人を探します。

実際に、上記のように検索した結果、技術士(機械部門)資格が条件に入っていた求人を確認してみましょう。

1番目は、建設・設備求人データベースにてヒットした求人案件です。非公開求人で、「大手グループの発電設備メンテナンス企業」と紹介されています。

この求人案件では、技術士資格が「歓迎条件」として挙げられています。

そして、仕事内容を見ると、タービン設備(機械設備)の保全工事で、工事施工管理を現場代理人として行うと紹介されています。

現場代理人は、契約者(多くの場合、社長や支社長・支店長)の代理として、工事現場の全権を持って仕事をします。発注者との契約関係についての折衝、作業員の安全管理など、技術的なこと以外の仕事も多いです。

もちろん、工事現場の技術的な問題点や、発注者からの技術的な問い合わせの窓口にもなります。技術士資格を持っていることにより、技術的に信頼を得ることができます。

私は、発注者側として現場代理人と話をすることが多い立場で、仕事をしていたことがあります。現場代理人が技術的に話のできない人だと、工事全体の信用度が下がります。

信用度が下がると、発注者は様々なことに口を出します。信用度が高いとそのようなことはないので、受注者の仕事の進めやすさの観点で、現場代理人の技術力は重要です。

そのほか、機械設備のメンテナンスの経験が求められています。これは機械メーカーでだけでなく、実際に据え付けられている工場の社員であっても、得られやすい経験です。応募しやすい求人といえます。

2番目に紹介するのは、dodaでヒットした求人案件です。

以下に、東京に本社のある株式会社NJSの求人情報です。この会社は、上下水道の設計や、それらを通じた環境ソリューションに強みのある会社です。まずは、求める方の欄を示します。

この求人でも、技術士(機械部門)の資格は、歓迎要件です。

機械系学科卒で、プラント設計経験が必須要件なので、技術士資格は「もっていればなお良い」といった位置づけです。

実際の仕事内容は、下図に示すとおり、上下水道の設計の上流工程を担当することになります。

図にあるような「計画策定から施設及び設備の計画検討、そして計画検討に沿った設計業務」とは、本来技術士に求められる業務に近いです。

建設コンサルタント以外の求人では、このような案件を探すと良いです。そのとき、転職サイトで扱っている求人が違うので、複数の転職サイトを利用することで、希望の求人情報を見つけやすくなります

技術士補を求める求人の探し方

技術士の見習いの位置づけで、「技術士補」という資格があります。技術士補資格を活用した転職の場合も、技術士資格の場合と同様に探せばよいです。

しかし、技術士補資格の場合は、さらに求人が少ないことを知っておく必要があります。それは、技術士補資格が技術士資格と同様に名称独占資格であり、さらに技術的に見習いという位置づけであるからです。

それでも、いくつかの求人は見つかります。下は、精密機械を製造するキヤノン株式会社の求人の対象となる方の欄です。

この求人は、機械設備管理の経験が必須です。2年程度の実務経験なので、工場やメーカーに勤めていれば、厳しい条件ではありません。

この図の、歓迎条件に「技術士(補)」と記載されており、技術士補資格者も求められていることがわかります。

さらに、同じ求人の仕事内容の欄を下に示します。

キヤノン株式会社の商品は、カメラや複合機、プリンターなどが有名です。しかし、この求人はそれらのプロダクトに関わる仕事ではなく、それらを製造する工場などの機械設備を管理する仕事です。

キヤノンに限らず、自社で製造工場を持っている企業には、必ず機械設備があります。機械設備がある以上、だれかがその管理をする必要があるので、このような求人はなくなることはありません。

このような求人のほか、建設コンサルタントを探すと技術士補を求める求人はありますが、技術士を求める求人に比べてさらに少ないです。したがって、技術士補資格を求める求人を探すときは、根気よく探すことが重要です。

技術士の年収の実際

最後に、技術士の年収の実態について解説します。

ここまでで解説してきた5社の提示年収は、八千代エンジニヤリング株式会社「500~750万円」、大阪に本社を置く総合建設コンサルタント会社「550~800万円」、大手グループの発電設備メンテナンス企業「500~700万円」、株式会社NJS「400~800万円」(下図)、キヤノン株式会社「450~650万円」(下図)です。

個別の求人で提示される年収は、地域や企業規模によってまちまちです。技術士がどれくらいの年収を得ているかは、厚生労働省が行っている賃金構造基本統計調査を参考にすると良いです。

下図は、平成29年賃金構造基本統計調査で公開されている、技術士の給与所得者数をグラフ化したものです。

引用:平成29年賃金構造基本統計調査 職種別第4表をグラフ化

これによると、男性技術士の中央値は300~400万円、女性技術士の中央値は200~300万円であることがわかります。

なお、この調査結果には機械部門の技術士だけでなく、全部門の技術士が含まれていること注意する必要があります。

国税庁による民間給与実態調査によると、平成29年の給与所得者(サラリーマン)の平均年収は494万円でした。技術士の多数が、この平均年収以下という実態になっています。

これは、「食えない」とまではいかないものの、一般に「給料が低い」といえます。

これらから、先に紹介した5社の提示年収は、技術士の大多数より高額であることがわかります。これ以上の年収を望むには、さらに少ない求人を探すことになります。

まとめ

以上のように、技術士(機械部門)資格は、名称独占資格であり、資格者でないとできない仕事が存在しません。そのため、企業として技術士を求めることが少なく、求人も少ないです。

また、機械部門の技術士に求められる仕事は、機械に関する計画、設計、評価とこれらに関する指導の業務です。これが求められる職種は建設コンサルタントであることが多く、求人もこの分野をまず探すことになります。

技術士資格が求められる求人を探すときは、転職サイトを使って探すことが原則であると考えてください。また転職サイトには、技術士資格所持者を求める求人を専門に扱うサイトがあり、このようなサイトを最初に探すと良いです。

大手転職サイトでも、技術士資格必須の求人を探すことはできます。しかし、技術士(機械部門)資格必須の案件以外もヒットしやすいことに注意が必要です。

技術士資格必須ではなく、建設コンサルタント業以外で求人を探すならば、大手転職サイトの方が探しやすいです。専門サイトとあわせて利用すると、転職成功の可能性が上がります。

技術士補資格を活用して求人を探す場合も、同様の手順で探すことができます。ただし、技術士資格を活用する場合よりも、さらに求人が少ないことは覚悟しておきましょう。

技術士の年収の相場は、500万円以下です。それ以上の年収が提示してある場合は、高額であると考えてください。

以上のように、転職サイトをうまく利用することによって、技術士(機械部門)の資格を活用した転職成功しやすくなります。


技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。

Follow me!