転職活動をしていると、必ず志望動機を書いたり、述べたりする場面があります。普段から文章を書く習慣がないと、志望動機をまとめることは苦痛でしかありません。私が転職活動をしたときにも、履歴書の志望動機欄を前に、頭を悩ませながら書いた記憶があります。
特に未経験で電気工事士に転職・再就職するときは、志望動機が採用担当者を納得させるものである必要があります。これまでの職歴を捨てて電気工事士になろうとするには、それなりの説得力のある志望動機でないと、転職成功は難しいです。
しかし、志望動機の書き方には、ある程度のセオリーがあります。このセオリーを踏まえて志望動機をまとめることで、説得力のあるものに仕上げることができます。
ここでは、「志望動機の書き方の基本形」「具体的な例文」「志望動機をまとめるときの注意点」について、くわしく説明します。
もくじ
志望動機の書き方の基本形を知る
まず志望動機のまとめ方の基本を押さえておきましょう。志望動機でまとめる内容は、以下の3項目です。
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1は、たくさんある企業の中から「なぜその1社を受けようとしたのか」を書きます。その会社との何らかの接点があれば、その接点をきっかけとして書くと良いです。
応募する求人を選ぶときには、給料や休日数なども見てから選んでいると思います。しかし、同じような給与水準・休日数の会社はほかにもたくさんあるので、応募の決め手にするには理由として弱いです。
その会社と直接の接点がなければ、「あなたの得意分野や長所が活かせそうだ」という観点からまとめると良いです。
2は、あなたのこれまでに経験のない分野に「わざわざ飛び込もうとする理由」を書く必要があります。電気工事士の仕事は、下の写真のように高所に昇って、電気という目に見えないものを扱う危険な仕事です。
また、職人的な雰囲気が残っている業界でもあります。受け入れる側としては、志望してくれるのは嬉しい反面、「中途半端な気持ちで入社して、すぐに辞めてもらっては困る」という気持ちがあります。企業の不安要素をはらう、納得させる理由が望まれます。
3は、電気工事士を志望する理由が、「わざわざ転職してまで実現しなければならないものか」を書きます。「その程度の気持なら、趣味でやればいいだろう」と思われない理由を書かなければなりません。
志望動機は、以上の内容をまとめます。
履歴書だけでなく、面接のために詳細にまとめておく
まとめた志望動機は、履歴書に書くことが多いです。履歴書の志望動機欄は小さく、手書きで記入することも多いため、おおむね200字程度でまとめます。
しかし、面接試験に進むと、口頭で志望動機を訊かれることもあります。すでに履歴書に書いているにも関わらず口頭で質問するということは、さらに深堀りして訊きたいということです。
したがって、履歴書に書いたことを単純に繰り返すのではなく、細部を深堀りしながら回答する必要があります。
ただ、面接試験中に詳細を述べるのは難しいです。「あらかじめ細部までまとめた志望動機を作り、履歴書に書くときに200字程度に絞る」というまとめ方をすることで、面接用の志望動機を矛盾なくまとめることができます。
電気工事士に転職するときの具体的な志望動機の例文
ここからは、具体的に志望動機の例文を示しつつ解説します。
その前に、未経験で電気工事士として転職する際のパターンについて、業種と職種の2軸に分けて整理しておきます。通常、転職・再就職は下の図のように4つのパターンに分類されます。
あなたは未経験で電気工事士になることを目指しているので、同職種からの転職ではありません。したがって、「3の同業種異職種からの転職」「4の異業種異職種からの転職」の2つのパターンのどちらかになります。
3のパターンは、現在建設業で働いていて、設計・積算・CADオペレーター・営業などの職種で働いているパターンです。
4のパターンは、建設業以外の全く別の業種で働いているパターンです。
この2つのパターンで、志望動機の書き方は変わってきます。まずは、あなたがどちらのパターンに当てはまるかを確認してください。
電気工事会社の他職種から電気工事士を目指す場合
最初に解説するのは、建設業のほかの職種から電気工事士を目指す場合の志望動機のまとめ方です。
私は電気工事の設計・積算・施工監督の経験があります。転職活動をしたときに、電気工事会社でこの経験を話すと大変盛り上がります。そして内定をもらったことが何度かあります。
今まで建設業で働いてきたのであれば、電気工事士の働き方を多少なりとも目にしたことがあるはずです。その経験を踏まえてまとめれば、採用担当者に対して訴求力のある志望動機になります。また、建設業ではたらいてきた経験をうまく活用できることをアピールできます。
これらをまとめると、下記のようになります。これは、CADオペレーターとして働いてきた人が、電気工事士を志望する際の志望動機の例文です。
御社を希望したのは、私が将来生活基盤を置きたいと考えている〇〇地区で事業展開している会社だからです。また、設計施工を行っているので、私の経験が力になると思い志望しました。
私は今まで、CADオペレーターとして電気工事図面を描く仕事をしてきました。図面を描いているうちに、実際の設備工事に興味を持ちました。そして、職人に実施工の状況を教えてもらっているうちに、電気工事士として働きたいと思うようになりました。 今の会社では施工をしていないので、今回転職して電気工事士を目指すことにしました。(240字) |
あなたには、実際に電気工事に関係することがあったはずです。それを思い出して志望動機に盛り込むとよいです。
下図は、電気工事でよく使われるCADソフト「Tfas」の説明です。このようなソフトを使っていて、現場に興味を持つのは違和感ありません。むしろ、最初は興味がなくても、扱っているうちに実物に興味を持ってほしい仕事です。
引用:株式会社ダイテック Tfas紹介ページより
したがって、CADの経験をとっかかりにして志望動機をまとめると、説得力のある志望動機になります。同じように、電気工事の事務仕事である設計・積算でもまとめることができます。
営業職の場合は、「客先で実物を見ながら施工を考えているうちに、自分でも施工したくなった」という切り口からまとめることができます。
全くの他業種から電気工事士を目指す場合
次に解説するのは、別の業種から電気工事士を目指す場合の志望動機です。この場合の重要なことは、「どうしても電気工事士として働きたい!」と伝えることです。
私の転職活動の中でも、業種が違ってさらに職種まで違う会社で面談や面接をすると、「なぜうちの会社に来たいのか」ということを根掘り葉掘り聞かれました。採用する側にとっては、わざわざ転職・再就職してまで異業種異職種に挑戦する理由を知りたいのは自然です。
したがって、「ほかにたくさん選択肢がある中の一つである」という印象を与えてはいけません。あくまで「電気工事士になりたい!」ということを伝えなくてはいけません。
例として、小売店舗で販売の仕事をしていて電気工事士に転職する場合を考えてみましょう。下のような小売店舗では、必ず電気を使っています。照明のほか、空調・冷蔵庫など熱源として電気を使うこともあります。
長らく小売店舗に勤めていれば、店舗のリニューアルや簡易修繕などで電気工事に立ち会ったことはないでしょうか。または、電気工事会社の人と話をしたことはないでしょうか。このような経験を思い出して、志望動機をまとめてみましょう。
御社を志望したのは、今後、〇〇地区で腰を落ち着けて働けると考えたからです。
また、今回電気工事士職に応募したのは、簡単にコンピューターに置き換えられない技能を身に着けて将来的に活躍したかったからです。 電気工事士を希望するのは、販売職をしていて店内のリニューアルを計画することがあり、電気工事に触れた経験があるからです。 そのときに、電気工事士の方と話をしていて、お客さんの要望を汲み取りながら形にしていく姿が印象に残っています。その仕事に惹かれたのを思い出して、今回電気工事士を志望しました。(244字) |
このように自分が直接電気工事に触れた経験のほか、身内に電気工事の関係者がいるなどの経験を書くと良いです。その際、単なる憧れではなく、「辛いところも知っていて長く電気工事士を続けること」が感じられる志望動機にまとめてください。
自分の言葉で整理すること
ここまで解説した志望動機には、絶対にやってはいけない注意事項があります。それは、「WEB上の例文をそのまま使うこと」です。
私が示した例文に限らず、WEB上には志望動機の例文がたくさん掲載されています。これらをそのまま使ってはいけません。必ず自分の言葉でまとめてください。
なぜなら採用担当者の立場だと、その人が自分の言葉で話しているかどうかが、すぐわかるからです。
私自身、技術職として採用関係の仕事をしたことがあります。そのとき志望者を面接して、話の内容が薄っぺらいので、自分の言葉でないことがすぐにわかりました。
また、その内容について突っ込んだ質問をすると、自分の言葉でまとめていないとすぐに答えられなくなります。このことからも、「志望動機をどこかから借りてきたのだな」ということがわかります。
あなたが採用試験を受けるにあたって志望動機をまとめるのは、少なくて数社分、多くて数十社分だと思います。一方で、採用担当者は、過去分を含めれば相当な数の志望者と志望動機を見てきています。
ズルをしても必ず見破られると考え、志望動機は自分の言葉でまとめてください。
面接で聞かれるほかの内容と矛盾があってはいけない
WEB上からそのまま志望動機を借りてくるのは、もちろんNGです。そして自分の言葉で志望動機をまとめたとしても、面接のほかの受け答えや自己PRと矛盾があってはいけません。
見栄えのする文章に仕上げようと、言葉を選んできれいにまとめるのは良いです。しかし、あなたの本心と矛盾するようなことを書くと、採用試験のどこかでボロが出ます。
志望動機を、必要以上に飾る必要はありません。あなたが考えたこともないようなことを、志望動機に盛り込むのは避けてください。
企業に出す前に第三者に見てもらうこと
一旦自分の言葉でまとめた志望動機は、家族や友人などに目を通してもらうと良いです。自分だけで考えた文章は、文法が間違っていたり、読みにくかったりします。また、他人にあなたの意図が通じるかどうかを確認できます。
さらに念を押すなら、転職エージェントサービスを使って、志望動機の添削を受けると良いです。転職エージェントは、履歴書・職務経歴書の確認・添削のほか、面接対策の想定問答として志望動機の添削もしてくれます。
下の図は、私が転職活動中に、志望動機を添削の上アドバイスをもらったときのものです。「なぜその会社を受けるか」という視点から見て主張が弱かったので、赤字にてアドバイスをもらっています。
転職エージェントは、さまざまな求職者を企業に紹介してきています。その際に、さまざまな求職者の志望動機などの書類を見てきています。つまり、企業に採用されるパターンを知った上でアドバイスをくれます。
家族や友人に、素人の目線で志望動機を確認してもらうことも大切です。しかし、人材採用の現場でたくさんの事例を見てきた転職エージェントは、さらに適切なアドバイスをくれる可能性が高いです。
このように念押しして、他者の力を借りれば、より転職成功しやすくなります。
まとめ
ここまで、未経験で電気工事士に転職する場合の志望動機の書き方について、詳細に解説してきました。
志望動機のまとめ方の基本は、下記のとおりです。
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そして、この3項目を基本にして、「今まで建設業のほかの職種で働いていて電気工事士を志望するのか」「建設業とは違う別の分野から電気工事士を目指して転職するのか」をはっきり意識しながらまとめると良いです。
特に、全く違う別の業種から転職する場合は、「なぜ電気工事士に転職するのか」がはっきりとした志望動機にまとめましょう。
また、志望動機をまとめるときは、必ず自分の言葉で書いてください。誰かが書いた例文をそのままコピーしても、訴求力のある志望動機にはなりません。それどころか、質問を重ねることで一貫性がなくなり、採用担当者に悪い印象を与えます。
これらに注意して志望動機をまとめたら、家族や友人などに読んでもらいましょう。第三者の視点で、あなたのまとめた文章が「読みやすいか」「意味が通るか」などを確認してもらうと良いです。
さらに念を入れるなら、転職エージェントに志望動機などの書類を確認してもらえるサービスを利用すると良いです。彼らは、これまで様々な求職者の志望動機を読んできたので、より良い書き方を知っています。
以上の手続きで志望動機をまとめることで、より転職成功しやすい志望動機をまとめることができます。
技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。
企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。
しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。
以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。