第二種電気工事士資格は、電気工事を行うのに必須の国家資格です。電気を使っていない場所を探すほうが困難な世の中なので、第二種電気工事士の有資格者を求める求人はたくさんあります。また、電気が使われる限り将来性も問題ありません。

そして、手軽に求人を探すことのできる転職サイトで「第二種電気工事士」をキーワードにして検索すると、たくさんの求人がヒットします。

ただし、「第二種電気工事士資格を具体的にどのように活かしたいのか」考えなしに転職活動をしても、目移りするばかりで、転職はうまくいきません。どのように働きたいのかを整理する必要があります。

そのためには、第二種電気工事士の有資格者を求める企業が「どのような特徴を持っているのか」「どのような働き方ができるのか」を十分に把握しておく必要があります。

ここでは、「第二種電気工事士の有資格者を求める企業とその特徴」「休日の実際」「平均年収」について、詳しく解説します。

もくじ

電気工事士資格を100%活かすには建設業

第二種電気工事士資格は、低圧の電気工事を施工するのに必要な資格です。低圧の電気工事とは、下図に示すような0〜600V の一般用電気工作物と呼ばれる電気設備を施工する工事で、一般家庭や小規模なオフィスの電気工作物が該当します。

電気工事を素人が行うと、感電や電気火災を惹き起こしやすいことから、電気工事士資格を持った人だけが電気工事を行えると法令で定められています。

つまり、電気工事は電気工事士の有資格者が独占して行えます。第二種電気工事士資格を100%活用して働きたいなら、建設業である電気工事会社に転職すると資格の価値を最大限発揮できます

例えば、下図に示す朋友電気株式会社の求人が電気工事会社の求人の一例です。朋友電気社は、福岡県の電気工事会社です。

朋友電気社の得意としている電気工事は、法人向けの電気設備で主に低圧で動作する電気設備の工事です。第二種電気工事士資格を保有していることが、歓迎条件とされています。

第二種電気工事士資格を最大限活かしたい場合は、この朋友電気社のような求人を探していきます。

エアコン・空調工事にも第二種電気工事士資格が活用できる

電気工事業の中でも、エアコンの取付工事は需要が大きい仕事です。そのため、エアコン取付工事スタッフとして募集していることがよくあります。

例えば、下図の株式会社からっぽの求人がエアコン取付工事スタッフの募集求人です。からっぽ社は、主に岐阜県で事業展開している会社です。

エアコンの取付工事自体は、管工事に分類されます。しかし、取り付けの際に内外配線を敷設することやコンセントを増設することがあり、これは電気工事に分類されます

エアコン取付工事をすれば必ず電気工事があるわけではないものの、結構な頻度で電気工事が発生します。したがって、電気工事士資格を求めることが多いです。

エアコン取付工事の仕事は、一般電気工事と違って決まった種類の仕事を多数こなすスタイルの仕事です。繁忙期には、一日中ひたすらエアコン取り付けを行うことになります。

エアコン・空調取付工事の仕事に応募するときは、このような特徴を踏まえた上で応募すると、ミスマッチを防ぎやすくなります。

建設業以外では仕事内容の一部に第二種電気工事士資格が必要

第二種電気工事士資格を求める企業は、建設業の企業ばかりではありません。実は、製造業などでも第二種電気工事士の有資格者は求められます

ただし、建設業と違って、仕事の大部分が電気工事というわけではありません。仕事の一部に、電気工事に該当する仕事があるため、第二種電気工事士資格が求められます

ここからは、建設業以外の企業について、求人の実例を示しながら解説します。

製造業などの工場のメンテナンス職

製造業やエネルギー供給業では、動力源などとして電気が使われています。例えば、下の写真のようなベルトコンベアーの動力源にモーター(電動機)が使われます。

モーターは、ベルトコンベアーだけでなく撹拌機や液体輸送用のポンプなど様々な場面で使われる動力源です。このモーターを動かすための電気配線を接続・敷設するには電気工事士資格が必要です。

通常、このような電気設備を設置するときは、工場のオーナー企業から受注した電気工事会社が施工します。しかし、電気工事会社は工場に常駐しているわけではありません。そのため、軽微な修繕や緊急時の対応は、工場の運転員やメンテナンス部門の社員が担当するのが一般的です

私は電力プラントに勤めていて、電気設備管理を担当しています。24時間体制で運転にあたっているのは、運転員(オペレーター)と呼ばれる職種の社員です。彼らの中には、第2種電気工事士資格を持った社員がいて、緊急時の電源切り離しなどを行います。

そのような仕事をする求人例が、下の株式会社アルビオンの求人です。

アルビオン社は、東京に本社のある高級化粧品メーカーです。この求人では、埼玉県の工場で働く人材を求めています。歓迎条件に、第二種電気工事士資格が挙げられているのがわかります。

このような仕事は、電気工事を主体に行う仕事ではありません。電気設備を工事・維持・運用していくにあたって、一部の仕事に電気工事士資格が必要な場面があります。したがって、「自分の腕で、たくさんの電気工事に携わりたい」という人には向きません。

ただ、電気設備管理の仕事には、設計・積算・施工管理の仕事が含まれます。これらの業務に電気工事士資格は必要ありませんが、電気工事士としての経験は存分に活かすことができます

工場への転職は、このような点を理解しておくとよいです。

ビルメンテナンスではビルメン4セットと呼ばれる必須資格

次に説明するのは、ビルメンテナンスと呼ばれる職種です。

ビルメンテナンスは、商業ビル・マンション・大型商業施設などに常駐し、施設の管理を行う仕事です。商業ビルでは、下の写真のような警備室や防災センターと呼ばれる詰所があるのを見たことがあると思います。

このような詰所で待機し、異常時対応を準備するのもビルメンテナンスの仕事の一つです。

ビルメンテナンスが行う施設管理には大きく3部門(設備・警備・清掃)があります。その中で、設備部門の仕事で電気工事士資格が必要になることが多いです。

考え方は工場と同じで、ビルなどの大型施設においても電気は重要な動力源・熱源として位置づけられています。つまり、いたるところに電気設備があります。

この電気設備の簡易修繕や故障時の系統分離が、ビルメンテナンスの設備部門が行う電気工事です。そして、機器自体の新設や更新などの大規模な工事は外部に発注するのも工場と同じです。

このビルメンテナンスの求人は、下に示すイオンディライト株式会社の求人が該当します。イオンディライト社は全国のイオンモール・イオンショッピングセンターの設備管理をしている会社です。

この求人では、第二種電気工事士資格が必須資格になっているのがわかります。

実はビルメンテナンス業界には、下に示す「ビルメン4点セット」と呼ばれる重要資格があります。

ビルメン4点セット

  • 第2種電気工事士資格
  • 2級ボイラー資格
  • 危険物取扱者乙種4類資格
  • 第3種冷凍機械責任者資格

この内、取得難易度が比較的高く、使う頻度が高い資格が第二種電気工事士資格です。ビルメンテナンスの求人では、第二種電気工事士資格を持っていると転職しやすくなります。

フィールドエンジニアでは客先で電気工事を行うことがある

最後に紹介するのは、フィールドエンジニアです。フィールドエンジニアは、「サービスエンジニア」「サポートエンジニア」とも呼ばれ、メーカー企業にある職種です。

メーカーが電気機器を製造するときに、電気工事士資格は必要ありません。しかし、その機器を使用現場に据え付けるときに、電気工事が発生する場合があります。

フィールドエンジニアは、現場に赴いて、機器の設置・修理などを行う職種のため、電気工事をしなければならないことがあります。したがって、電気工事士資格が求人の条件に含まれている場合があります

下の写真は、街中のエスカレーターの保守点検をしているところです。橙色の丸で示したところに作業員がいます。この作業員がエスカレーターメーカーのフィールドエンジニアです。

このように、フィールドエンジニアは機器の設置されている場所に赴いて仕事します。

実際の求人例では、下の文化シヤッター株式会社の求人があります。文化シヤッター社は、業界2位の大手シャッターメーカーです。この求人では、東京本社のほか大阪、愛知など全国の支店で勤務する可能性があります。

そして、応募条件に、あれば活かせる資格として第2種電気工事士資格が明記されています。シャッターの開閉に、動力として電気が用いられているため、取付施工時に電気工事が発生するからです。

このようなフィールドエンジニアで第2種電気工事士資格を求める求人は、電気を使っている機器を作っている企業なら、出てくる可能性は高いです。業務用空調、給排水設備、防災設備、生産機械、業務用機械など幅広い分野が対象になります。

私が勤める電力プラントでも、配電盤の据え付け調整、モーターの修理、水質監視装置の調整など、様々なメーカーのフィールドエンジニアが出入りしています。彼らの仕事を見ていると、ほとんどが調整・試験で、電気工事に該当する仕事は少ないです。

もちろん契約仕様によって、工事担当範囲が変わってきます。担当する電気工事の範囲が広いフィールドエンジニアもいます。

また、フィールドエンジニアの働き方は、工場・生産拠点と客先を往復するスタイルになります。対象機器により日帰りの出張で終わることもありますが、数ヶ月ホテル住まいで据え付け・動作試験を行うこともあります。あなたが望む働き方を整理して、企業を決めると良いです。

認定電気工事従事者を講習で取得する必要あり

実は、ここまで説明してきた求人には注意点があります。第2種電気工事士資格で扱える電気工作物は一般電気工作物ですが、工場、ビルメンテナンス、フィールドエンジニアでは自家用電気工作物を扱うことがあります。

もちろん、自家用電気工作物は第2種電気工事士資格で施工することはできません。したがって、別途資格を取得する必要があります。それは、「認定電気工事従事者」資格です

具体的に、どのような場合で認定電気工事従者資格が必要なのかを解説します。

下の図のように高圧で受電している施設では、施設内全ての電気機器が高圧で動作する機器ではありません。中には低圧に降圧して使用される機器もあります。この低圧部分の工事に、認定電気工事従事者資格が必要です。

わかりやすい例を示すと、下の写真のイオンがわかりやすいです。写真のように6.6kVの高圧で受電していますが、ショッピングセンター内には100Vで使う照明、店舗で使うコンセントなど低圧設備がたくさんあります。

当然ながら第1種電気工事士資格を持っていれば、こうした自家用電気工作物の低圧部分でも問題なく施工できます。しかし、第1種電気工事士資格取得には5年の実務経験が必要です。すぐに取得できるわけではありません。

その点、認定電気工事従事者資格は、第2種電気工事士資格の有資格者なら講習を受けることですぐに取得できます。

工場、ビルメンテナンス、フィールドエンジニアで、勤める施設の規模や扱う機器によっては、認定電気工事従事者資格取得のための講習を受けなければならないことを覚えておきましょう

電気工事士はきついか?休日の実際を知る

実際に就職して働き始めるときに気になることの一つに、「仕事がきついか、楽か」ということがあります。「電気工事士の仕事はきつい」とよく言われますが、本当でしょうか。「仕事のきつさ」の指標である休日数を考えてみます。

実は、建設業で電気工事士として働くなら、年間の休日数が少ないことがあります。例えば、週の休みが日曜日と祝日だけということがよくあります。

これは、建設業が慢性的な人手不足であることや長らく日払いで給料を支払ってきたことが原因です。

人手不足が原因であるということは、理由としてわかりやすいと思います。仕事量に対して、労働力が足りていないので、長く働いて仕事をこなすことが多いです。

日払いで給料を支払われるのが原因というのは、休日返上して多く働くと給料が多くなるからです。わかりやすく手取りが増えるので、土曜日でも仕事をしたがる人が多いというのが建設業界の特徴です。

無料の求人誌で募集していた電気工事の求人が、休日が少ない例としてわかりやすいので下に示します。「電気工事士の仕事で月25日出勤(日・祝が休み)」であることがわかります。

建設業では月給制を採用していても、このような慣例があるため、休日数が少ないことが多いということを知っておきましょう。

ただし、建設業を所管する国土交通省発注の工事から、建設業でも週休2日にしようという動きが出てきています

下に示す文書がその証拠です。国土交通省の地方機関である関東地方整備局が、一部工事に週休2日制を適用するように指導する文書です。

引用 : 国土交通省関東地方整備局技術管理課 資料

私の後輩が、独立行政法人鉄道運輸機構に出向して工事発注業務をしていたので話を聞いてみました。すると、政府主導の「働き方改革」の一環として工事業者に対して週休2日制の指導をしているということでした。

なお、製造業、ビルメンテナンスでは週休2日制を適用しているところが多いです。個別の求人については、都度確認する必要があるものの、各業界の特徴は知っておくと良いでしょう。

また、具体的な仕事内容がきついかどうかは、職場見学などを希望して確認すると良いです。そこで、自分の体力に見合った仕事かどうかを確認してください。

年収・給料は?資格手当はあるか?

最後に、第2種電気工事士資格を持って就職したとき、どれくらいの給料・年収を期待できるのかについて解説します。

冒頭に紹介した朋友電気社は、下図のように月給として20〜50万円を提示しています。

ボーナスが年間3.5ヶ月分の支給実績から、諸手当なしで年収を計算すると「月給×(12+3.5)ヶ月」で310〜775万円となります。

同様に、ここで紹介した4社について提示年収を調べると、下表のようになります。

会社名 提示年収[万円] 業種
朋友電気(株) 310〜775
※提示月給から計算
建設業(設備工事)
(株)からっぽ 600~700 建設業(設備工事)
(株)アルビオン 300〜400 製造業(化粧品)
イオンディライト(株) 300〜400 その他事業サービス業
(ビルメンテナンス)
文化シヤッター(株) 352〜640
※提示月給から計算
製造業

(金属製品)

ここで紹介した求人でいうと、提示年収の下限は300万円程度ですが、上限は業種により様々です。実は、年収はあなたが働く企業の業種に大きく左右されます。

この業種別平均年収は、厚生労働省が賃金構造基本統計調査により公表しています。下のグラフが賃金構造基本統計調査のうち、電気工事士資格が活かせる業種の平均年収をグラフ化したものです。グラフ中、青色が製造業、緑色が非製造業を示しています。

引用 : 令和元年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)をグラフ化

冒頭に紹介した建設業は、グラフでは「設備工事(電気工事)」と示してあります。工場で働く求人は、グラフ中の「技術サービス」「その他事業サービス」以外の業種から出ます。ビルメンテナンスは、「その他事業サービス」に含まれます。

フィールドエンジニアリングの求人は、製造業のうち「はん用機械器具」「電気機械器具」「生産用機械器具」「業務用機械器具」の各業種から出やすいです。

ここで示した業種は、どれも電気工事士資格が活かせる業種です。しかし、最も年収の高い業種と最も年収の低い業種で、その差が倍以上違います。つまり、転職する業種を誤ると思うように年収が上がらないことに繋がります。

年収について失敗したくない場合は、政府統計のような信頼できるデータを参考にしましょう。そして、平均年収の高い業種を集中的に狙うと良いです。

資格手当は数千円で企業による

一方、給料に上乗せして支払われる資格手当は、第二種電気工事士資格の場合、数千円であることが多いです。冒頭で紹介した朋友電気社だと、第二種電気工事士だと月3,000円の手当が支払われます。なお、図では「2級電気工事士~」とありますが、「第2種電気工事士~」の誤植です。

ちなみに私が勤めたことのある鉄道会社と電力プラントでは、月々の手当も受験費用の補助もありません。

このような状況なのは、第二種電気工事士試験は年間で5〜6万人が合格する試験で、人材が逼迫している状況ではないからです。したがって、企業としてはインセンティブを与えるメリットがないため、資格手当なども低く抑えられています。

そして、手当はボーナスや残業の割増賃金の基準給与からは除外されるのが普通です。つまり、資格手当は年間で数万円の増にしかなりません。

資格手当の有無よりも、業種選択や年収交渉に重点を置いたほうが、大幅な年収アップを実現しやすくなります

まとめ

第二種電気工事士資格を活かして転職する方法として、資格を100%活かしたいなら建設業へ転職するのがセオリーです。電気工事を中心に行いたいのでなければ、工場のメンテナンス職、ビルメンテナンス職、フィールドエンジニアなどが追加の選択肢になります

電気工事の経験があれば、電気工事の施工業務が少なくても、施工管理・設計・積算などで工事経験を活かすことができます。

また、工場や施設の規模によっては、「認定電気工事従事者」資格を取得する必要があります。これは、第二種電気工事士資格を取得していれば、講習を受ければ取得できる資格です。

入社してから、講習を受けて認定電気工事従事者資格を取得しなければならない場合があることを知っておきましょう。

これらの業種の中で、建設業は休みが少ない企業が多いです。ただし、政府主導の働き方改革の影響で、休みが多くなりつつあります。そのほかの製造業、ビルメンテナンスなどでは週休二日制が多いです。

企業から提示される年収は業種により大きく違います。特に、工場で働こうとする場合は選択肢が多く、選択できる企業の平均年収差が大きいです。事前に政府統計などの信頼できるデータを調べておくことが、後悔をなくすことにつながります。

最後に、年収における資格手当の寄与は小さいことを知っておきましょう。年収アップを望むなら、資格手当の有無よりも、業種選択・年収交渉に力を割くほうが実現しやすくなります。

以上を踏まえて転職活動を行うことで、第二種電気工事士資格を活かし、より満足できる転職を叶えることができます。


技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。

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