生産技術職は、製造業を支えるやりがいのある職種の一つです。また、電気を使っていない生産工場は存在しません。動力のほか、制御や監視のために電気は用いられています。

したがって、生産技術職において電気系の仕事は必ずあります。さらに、製造業は業界規模も大きく、見つけやすい仕事ともいえます。

ただし、技能工と違い技術職であり、転職成功するには、あなたの技術力が試されます。手当たり次第に応募するのは、得策ではありません。

今回は、まず生産技術の職域を整理します。職域により、仕事の難易度や求められる資格やスキルが変わってきます。これらを整理したあと、最後に生産技術職の年収について考察します。

もくじ

生産技術職の仕事内容は企業によってまちまち

生産技術職は、製造業における生産ラインを設計・維持・管理して、作られる製品の品質や量が計画通りであることを担保する仕事です。

製造業とは、なにも機械製品を作るだけではありません。下写真は、飲料工場の生産ラインです。

このような飲料品のほか、医薬品、化学製品、食品も製造業者によって生産されます。

そして、製造業の要である生産ラインも、一般製品と同様に製品としての寿命は下図のように進みます。

仕事は、上流である計画・設計フェーズほど大変で、膨大な知識と経験が必要です。下流である、点検・修理フェーズになると、普段はルーチンワークが主で難易度が下がります。しかし、緊急時(設備故障時)に、昼夜関係なく復旧する大変さはあります。

特に上流部分に主として携わる職種が、単に「生産技術職」と呼ばれることが多いです。例えば下図のような求人です。

これは、株式会社神戸製鋼所の求人です。本社は兵庫県神戸市と東京都にあり、生産拠点は関西中心に9拠点あります。この求人は、神奈川県の藤沢工場のものです。

これは、転職サイト「メイテックネクスト」を使って調べた求人です。生産技術(電気・電子)の分類で、開発業務や設備・製造の支援業務を行うと記載されています。

一方、下流の点検・修理フェーズに主に携わる職種は、「設備管理」などと呼ばれることが多いものの、生産技術に分類されます

下は、化学メーカー大手の株式会社ダイセルの求人です。大阪府と東京都に本社をおく2本社体制をとっています。生産拠点は国内6拠点ある中の、広島県大竹市にある工場の求人です。

これも、メイテックネクストを使って調べたものです。分類は生産技術になっていながら、仕事内容は「化学プラントの電気系総設備メンテナンス」とされているのがわかります。

以上のように、生産技術職を探すときは、このような求人探すと良いです。また、転職サイトには「生産技術」の分類があります。下は、ここまで紹介してきた技術系に強い転職サイトのメイテックネクストの分類です。

また、大手総合転職サイトのdodaにも同様の分類があります。下が、生産技術の該当部分です。図は、電気系の求人がありそうな分類にチェックを付けています。

この分類内を集中的に探すことによって、比較的容易に求人を見つけることができます

工務と呼ぶ企業もある

生産技術は、工務と呼ばれることがあります。生産技術部と呼ばれる代わりに、工務部・工務課がある会社もあります。

私が聞いた知人の何人かは、工務というと最上流の計画を担当しなくて、設計と修理のうち大規模なものを専門で行う部隊と教えてくれました。しかしながら、実際の求人票をみると、上記の生産技術と仕事内容は変わりないものもあります。

この求人は、相模フレッシュ株式会社の求人です。神奈川県綾瀬市に生産拠点をおく、日清グループの食品メーカーです。

工務業務として、「製造機器の保守全般」「工場設備全般の保守、メンテナンス」を担当することが謳われています。先程紹介した、株式会社ダイセルの仕事内容と類似していることがわかります。

また、求人にも生産技術担当として工務業務を行うとあります。したがって、「工務=生産技術」と捉えても良いです。

最後にあなたが求める仕事かどうかは、求人票を読み込み、場合によって企業に問い合わせて確認すればミスマッチを防げます。

生産技術職に求められる資格・スキル

では、生産技術職に求められるスキルはどのようなものがあるのでしょうか。これも、携わる設備のフェーズによって分けられます。

計画・設計に必要な資格はないが、経験が求められる

上流の計画・設計フェーズに必要な資格はありません。資格より、実際の経験が重要な世界です。求人票では、経験を重視する表現で記載されています。

下図は、冒頭で紹介した株式会社神戸製鋼所の求人における、応募条件の欄です。

資格名は、挙げられていません。しかし、工場設備に関する経歴(経験)が求められています。

上にも書いたように、計画・設計には莫大な知識と経験が必要です。これらなしに計画・設計しても、使えない設備が出来上がります。

私は電気設備保全経験を新卒で7年経験したあと、電気設備の設計を担当しました。電気保全の現場では設備を熟知し、緊急対応もすぐにできると自信満々で異動したのですが、すぐに鼻っ柱をへし折られました。

設計では、ありとあらゆる場面を想定して設備を作るため、検討事項が保全の比較になりません。また、電気技術も日進月歩で進化しているので、常に学び続ける姿勢が必要です。

また、一般に転職が難しいといわれる年齢層(40代以上)でも、設備に熟知していることがアピールできれば転職しやすいです。むしろ経験値を積んでいるので、若年者が未経験で応募するより、即戦力として期待できます。

このように、今ある技術を知悉(ちしつ)し、新しい技術にも敏感な人は、企画・設計に向いている人といえます。

管理・修理には電験や電気工事士などが役立つ

計画・設計に比べれば、点検・修理のフェーズに求められる経験・知識は少ないです。もちろん、知識経験があるに越したことはありませんが、なくても問題ないのが点検・修理の仕事です。学歴が、高卒以上とされている求人も多いです。

これは、多くの会社が新人を、まず点検・修理に従事させることからもわかります。数日から数週間の研修を終えてしまえば、概ね満足できる程度の精度で仕事ができるからです。

電気主任技術者試験(電験)や電気工事士の有資格者は、この研修で教える電気回路の読み方や、工具の使い方などを、ある程度知っていると判断されます。したがって、取得していると喜ばれます。

下の求人は、医療機器メーカーのテルモ・クリニカルサプライ株式会社の求人です。岐阜県各務原市にある本社工場の求人です。

この求人では、「電気工事士資格」「第三種電気主任技術者試験(電験三種)」が歓迎条件とされています。

また、工場では電力会社から高圧や特別高圧で受電していることがあります。例えば、6,600Vで受電している設備には、下の写真のようなものがあります。

このようなキュービクルを設備し、管理するには、電気主任技術者試験の有資格者を選任して届け出る必要があります。

下は、大手総合化学メーカーの旭化成株式会社の求人です。これは、福岡県筑紫野市の筑紫野工場で、第3種電気主任技術者(電験3種)の資格者を募集している求人です。

この筑紫野工場では、高圧(6,600V)で受電しており、法令に則って第三種電気主任技術者試験の有資格者を選任する義務があります。入社してすぐに選任されることはまれですが、将来的に電気主任技術者として選任する候補として採用されると考えられます。

電気工事士や電験など、該当する資格を取得しているときは、給料や待遇の交渉で有利に運べる可能性が高くなります

将来に向けて情報系技術は必須

そのほかに活かせるスキルとして、制御技術があります。生産において、制御技術は欠かせません。シーケンス制御、プロセス制御など様々ありますが、その制御方式は電子制御になっています。

シーケンス制御では、継電器(リレー)は見られなくなり、下のようなPLC(Programmable Logic Controller)を使い、無接点(半導体)で制御されることがほとんどです。

プロセス制御は、電気的にラインを流れる製品の状態を監視し、その数値を監視制御装置で演算して、弁などを動かします。例として下に、流量制御する系を示します。

図では、羽根車で流量を測るように描いていますが、電気的(電磁波や超音波など)に流量を測るものもあります。

これらの機器が実用化されたことで、よりきめ細やかな制御が可能になり、生産技術の高度化を成し遂げました。現在の我が国の高品質な生産を支えているのは、これらの電子機器だといっても過言ではありません。

この電子化は、2000年以降急速に進みました。かつての機械的なものは、まもなく取り替えられる運命にあります。

したがって、電子機器本体に関する知識技術はもちろん、電子機器を接続するデジタル通信の仕組みについて学ぶことは、これからは必須です。今現在、あなたが情報技術について詳しいなら、大きな強みとして活用できます。

生産技術として働いたときの年収

ここまでで紹介した、生産技術職の年収を確認してみましょう。年収は、求人票に記載されています。

以下は、冒頭で紹介した株式会社神戸製鋼所の提示年収です。

同様に、今回紹介した上記5件の求人の提示年収は、下表のとおりです。これらの年収は、求人票にこのように記載されていたものを転記したものです。

会社名 提示年収(万円) 製造業の種類
(株)神戸製鋼所 ~800
(株)ダイセル 400~600 化学
相模フレッシュ(株) 300~600 食品
テルモ・クリニカルサプライ(株) 400~700 医療機器
旭化成(株) 391~ 化学

この提示年収が妥当かどうかは、どのように判断したら良いでしょうか。これには、政府統計を活用すると良いです。国税庁の民間給与実態統計調査に、業種別給与者数があります。生産技術職は、製造業の統計調査を参考にすると良いです。

以下に、民間給与実態統計調査のデータをグラフ化したものを提示します。

引用:平成29年民間給与実態統計調査(第8表)をグラフ化

この調査によると、中央値は400~500万円です。これと比較して、紹介した求人の提示年収は、神戸製鋼所とテルモ・クリニカルサプライは高めで、そのほかは標準的といえます。

あなたが応募しようとする求人の提示年収は、一度政府統計などと比べてみると良いです。高い場合は、問題ないと思います。

反対に提示年収が明らかに低い場合は、「地域性」「伸びしろがある」など、ほかの要因で低くされている場合があります。転職エージェントを通して、理由を聞いても良いです。

このように、政府統計などの客観的データと照会して求人票を見ることで、入社してから思ったより年収が低いということを防ぐことができます

まとめ

生産技術職と一言でいっても、その中には計画・設計・設置・点検・修理のフェーズがあります。そして、設備管理や工務と呼ばれるものも、生産技術の範疇であることを知っておく必要があります。

生産技術職の求人は、転職サイトでは「生産技術」と分類があります。したがって、この分類に絞って求人を探すことで、比較的容易に求人を見つけることができます

計画・設計を主に担当する職種では、必須資格として求められる資格はありません。経験や知識が大変重要ですので、これまで同じような職域で経験があるなら、即戦力として転職成功しやすくなります。

一方、点検・修理を主に担当する職種では、電気主任技術者試験や電気工事士の有資格者だと歓迎されることがあります。求人票に資格名の記載がある場合は、有資格者であることを積極的にアピールすると良いです。

また、設備の電子化に伴い、情報技術はこれから必須の知識です。今、あなたが先んじて情報技術に長けているなら、大きな強みとして活用できます。

生産技術職の年収は、400~600万円がボリュームゾーンです。これは国税庁の民間給与実態統計調査(製造業)と比べてみても、標準的なものです。ただし、あなたが応募しようとする求人は、個別に比較する必要があります。

これにより、大きく提示年収が低い場合に、踏みとどまることができ、転職の失敗を防ぐことができます。


技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

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しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。

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